企画院事件

企画院事件の概要

企画院事件（きかくいんじけん）は、1939年から1941年の間に、多数の企画院職員や調査官が左翼活動の疑いで逮捕・起訴された重大な事件です。この事件は、1939年以降の『判任官グループ』事件と、1940年以降の『高等官グループ』事件が結びついたものであり、日本の政治史における重要な転換点を示しています。

経緯

事件の発端は、1938年10月に発生した京浜工業地帯の労働者による研究会に対する一斉検挙でした。この際、企画院に籍を置いていた芝寛が逮捕され、このことが警察により「官庁人民戦線」の活動として認識されることとなります。これを契機に、企画院内で実施されていた小規模な勉強会が注目され、1939年11月以降、岡倉古志郎や玉城肇ら4名が検挙される事態へと発展しました。この事件は「判任官グループ」事件と呼ばれています。

その後、1940年10月に発表された企画院の「経済新体制確立要綱」が政界や財界から赤化思想だと非難されると、1941年にかけて元企画院の調査官たちが次々と治安維持法違反の疑いで逮捕されました。具体的には、稲葉秀三、正木千冬、佐多忠隆など中心メンバーが摘発され、最終的に検挙人数は17名に達しました。この事件は「高等官グループ」事件として記録されています。

芝寛のケースでは、京浜グループおよび企画院内研究会に両方絡んでいたことから実刑判決を受けましたが、それ以外の多くの被告は執行猶予付きの有罪判決にとどまりました。高等官グループに属するメンバーは、およそ3年間の拘禁を経て保釈され、その後、1945年9月には佐多を除く全員が無罪となりました。

また満鉄調査部の研修生である川崎巳三郎も事件に巻き込まれ、影響は同調査部にも及びました。

背景と意義

企画院事件の背景には、1940年第2次近衛内閣において提出された「経済新体制確立要綱」に対する強い反発が存在しました。特に、商工大臣の小林一三ら財界人からは、この案が赤化思想の産物だと非難されました。この圧力によって原案は内容が大きく変更され、さらに平沼内務大臣の方針で多くの企画院職員が逮捕されることになったのです。

多くの被検挙者は、過去に左翼運動に参加した経験を持つ「思想的前歴者」であり、近衛文麿のブレイン集団とされる昭和研究会のメンバーとも関連が深かったのが特徴です。彼らの提案は陸軍省軍務局からも評価されていたため、反対派はこれを「国体に反する計画」として激しく排斥しようとしました。

関連項目

• - 革新官僚
• - 人民戦線事件
• - ゾルゲ事件
• - 横浜事件
• - 大阪商大事件
• - 平沼騏一郎
• - 満鉄調査部
• - 満鉄調査部事件

参考文献

• - 奥平康弘　『治安維持法小史』　岩波書店〈岩波現代文庫〉、2006年。

事件の詳細とその後の影響を学ぶことは、日本の戦前の社会情勢を理解する上で重要です。企画院事件は、政治的抑圧と思想の自由が衝突した事例を示すものであり、その教訓は現代にも生かされるべきです。

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