伊州区

伊州区（いしゅうく）

伊州区は、中華人民共和国新疆ウイグル自治区クムル市に位置する市轄区です。ウイグル語ではアラトゥルクと呼ばれます。2016年1月までは県級市のハミ市（哈密市）でしたが、市轄区に移行しました。クムル市とも呼ばれ、天山南路と天山北路の合流点に位置する交通の要衝です。また、ハミウリの産地として有名で、区内にはクムル市政府が置かれています。

語源

クムルの語源には諸説あります。

古ウイグル語で「大きな門」
「遠くを眺め渡せる土の盛り上がり」
モンゴル語でクムル北西にある「哈木爾達山」
テュルク語で「砂」

現地名のKumalがウイグル語のQumul、モンゴル語のHamil、Khamilに転訛したとされています。ハミ（哈密）という名称は、モンゴル語のハミル（Hamil、Khamil）を漢訳した「哈密力」を略したもので、中国で使われるようになったのは明の永楽帝の時代からです。それ以前は、クムルは伊吾、伊吾盧と呼ばれていました。市轄区の区名である「伊州」もこの古い呼称に由来します。

行政区画

伊州区は、5つの街道、7つの鎮、10の郷、2つの民族郷を管轄しています。

街道弁事処: 東河街道、西河街道、城北街道、麗園街道、石油新城街道
鎮: ヤマンス鎮（雅満蘇鎮）、イェッテクドゥク鎮（七角井鎮）、星星峡鎮、アスタナ鎮（二堡鎮）、パルワントゥル鎮（陶家宮鎮）、カラデョウェ鎮（五堡鎮）、三道嶺鎮
郷: タシウェリク郷（沁城郷）、コシクドゥク郷（双井子郷）、ブルントグラク郷（大泉湾郷）、シェヘル・イチ郷（回城郷）、ラヘトバグ郷（花園郷）、ボガズ郷（南湖郷）、ゲルビイ郷（西山郷）、テングリタグ郷（天山郷）、アクタシ郷（白石頭郷）、コイルク郷（柳樹溝郷）
民族郷: ウラタイ・カザフ族郷（烏拉台哈薩克族郷）、デベルディリク・カザフ族郷（徳外里都如克哈薩克族郷）

2021年2月4日、伊州区の一部地域が分離し、自治区直轄県級行政区の新星市となりました。

歴史

先史時代から伊吾郡の設置まで

クムル地域には古くから人が居住しており、旧石器時代や新石器時代の遺跡が発見されています。青銅器時代後期の墓からは、モンゴロイドとコーカソイドの両方の人骨やミイラが出土しています。

この地は古くから東西交易の重要な拠点であり、各地から人々が集まりました。遊牧民の影響下にあったため、他のオアシス都市のような王国は形成されませんでしたが、匈奴、柔然、鉄勒、突厥といった遊牧民族にとっても重要な交易拠点でした。

紀元前2世紀初め、匈奴の支配下に入り、前漢では「五船」と呼ばれていたと考えられています。後漢は73年に匈奴からこの地を獲得しましたが、後に奪回されました。3世紀に入ると鮮卑の支配下となり、その後は柔然が支配者となります。423年には西涼の兄弟が亡命し、柔然は彼らを伊吾王に任命しました。442年には、唐契が北魏と通じたために殺害されますが、後に北魏が伊吾を平定しました。

610年には隋によって伊吾郡が設置されましたが、数年で放棄されました。630年には突厥に従属していた伊吾の植民団が唐に帰順し、西伊州が設置され、後に伊州に改称されました。玄奘もインドへの往路でこの地を通過しています。しかし、安史の乱後、唐の西域経営は行き詰まり、760年代に伊州は吐蕃の支配下に入ります。

ハミ郡王家の成立まで

9世紀には東天山がウイグルの勢力下に入り、クムルは僕固氏の長に征服され、天山ウイグル王国の一部となりました。元朝には、哈密は阿力麻里行中書省に属し、火州のウイグル駙馬家に属していました。その後、チャガタイの子孫の支配下に入ります。

明朝成立後もチュベイ家によるハミの統治が続きましたが、1390年頃には北元の粛王ウナシュリが侵攻し、明との間で争いが起きました。明は懐柔策を取り、1404年にはウナシュリの弟を忠順王に封じ、哈密衛を設置しました。ハミはその後も北元やオイラトの干渉を受け、1473年には明とモグーリスタンとの間で領有をめぐる抗争が起こりました。

1513年には忠順王がモグーリスタンに拉致され、モグーリスタンの支配下に入りました。ハミの仏教徒は明の支配下に移住し、クムル以西の地域から仏教徒が姿を消しました。1529年には明はハミ王家の再興を断念し、モグーリスタンの通貢を認めました。

1678年にはジュンガル部の支配下に入りますが、1697年にはクムルの支配者ウバイドゥッラーが清に帰順し、対ジュンガルの前線基地としてジャサクが授与されました。1759年に哈密庁が設けられ、1884年には新疆省に昇格、中華民国時代には県に改められました。ウバイドゥッラーの子孫はクムルで王家として存続しました。

近現代

1930年にハミ郡王家が廃止されると、クムルのムスリムは反乱を起こし、ホージャ・ニヤーズを指導者としました。この反乱は東トルキスタン各地に飛び火し、1933年には東トルキスタン・イスラーム共和国が建国されました。

中華人民共和国成立後、1961年にクムルは県級市に移行しますが、翌年に県に戻り、1977年に再び県級市に昇格しました。2016年1月には市轄区の伊州区となりました。

人口統計

クムル市には漢族が約68%、少数民族が約32%居住しています。少数民族にはウイグル族、回族、カザフ族などが含まれます。

気候

クムルは乾燥した大陸性気候です。

産業

クムルは豊富な鉱物資源を有し、石炭、石油、天然ガス、鉄、銅、金、岩塩などが産出されます。これらの資源を活用するための工業基盤も整備されており、2,000以上の工業製品が生産されています。特に石炭、元明粉、綿紡績、石材、黄腐酸、革製品が高く評価されています。また、ハミウリをはじめとする農産物も豊富です。

観光

クムルには多くの観光スポットがあります。

魔鬼城: 風の音で魔物の声のように聞こえる奇岩地帯です。
白石頭の草原: 広大な草原が広がります。
鳴沙山: 砂が鳴る現象が起こる砂丘です。
回王墳（ハミ王陵）: 清代のハミ郡王とその一族の墓です。
ケイス墓（蓋斯墓）: イスラム教の宣教者の廟です。
五堡古墓群: 青銅器時代の遺跡で、「金髪娘」のミイラが発見されています。
天山廟: 関帝を祀る廟です。
沁城岩画: 古代の岩絵が残る場所です。

その他にも、廟爾溝、西路軍進疆紀念園、烈士陵園などがあります。

交通

蘭州市とウルムチ市を結ぶ蘭新線の主要駅であるハミ駅があり、312国道が東西に横断しています。市内にはバスターミナルがあり、ウルムチやトルファン、敦煌などへのバスが運行しています。また、ハミ空港からはウルムチへの国内線が運航しています。

姉妹都市・提携都市

* 入善町（日本・富山県）：1997年6月5日に友好交流都市提携を結びました。これは、両市町の特産品であるスイカとハミウリが縁となっています。

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