伴中庸

伴中庸（ともの なかつね）

伴中庸は、平安時代初期から前期にかけての貴族で、大納言・伴善男の子として生まれました。

経歴

斉衡4年（857年）に従五位下に叙爵し、翌天安2年（858年）には侍従、次いで右衛門佐に任じられるなど、順調に昇進を重ねました。貞観2年（860年）には従五位上に進んでいます。

貞観6年（864年）には、父・善男が、大伴氏としては旅人以来130年ぶりに大納言に任ぜられましたが、その2年後の貞観8年（866年）に、応天門の変が勃発します。応天門が火災で焼失した当初、左大臣・源信が放火犯とされましたが、後に備中権史生・大宅鷹取により、善男と中庸の父子が犯人であるとの報告がなされました。この背景には、中庸が生江恒山と占部田主に命じて、大宅鷹取を殴傷させ、その娘を殺害させたことへの恨みがあったとされています。

当初、大宅鷹取は誣告の容疑で検非違使に拘禁されていましたが、8月29日には中庸が鷹取父娘殺傷の疑いで左衛門府に拘禁されることとなりました。生江恒山と伴清縄が拷問を受けた結果、中庸が放火の実行犯であることが判明し、中庸は9月22日に隠岐国への流罪となりました。この際、中庸の子息である元孫と叔孫も配所に従うことになりましたが、9月25日には幼いことを理由に途中で召還されています。なお、応天門の変については、鈴木琢郎氏が、中庸が元孫・叔孫の成人前に父を大臣に昇進させ、その蔭位を得ようとしたことが単独で事件を起こした原因であるという説を提唱しています。

貞観18年（876年）には、配所にいた元孫と叔孫が平安京に召還され、代わりに平安京にいた子息の禅師麻呂が中庸の配所に送られました。また、10月25日には鷹取父娘襲撃についても有罪と判断されましたが、中庸は既に流罪となっていたため、追加の処分は見送られました。

元慶4年（880年）には、隠岐国司が恩赦が適用されると誤解し、中庸を放免しますが、翌元慶5年（881年）に中庸が本貫へ戻るために因幡国に至ったところ、因幡介・是主王が恩赦の適用に疑義がある旨を朝廷に報告。結局、中庸と元孫・禅師麻呂は石見国に遷されました。その後の消息は不明です。

官歴

以下は『六国史』による伴中庸の官歴です。

時期不詳：正六位上
斉衡4年（857年） 正月7日：従五位下
天安2年（858年） 3月8日：侍従。9月14日：右衛門佐。
貞観2年（860年） 11月16日：従五位上
貞観8年（866年） 9月22日：流罪（隠岐国）
元慶4年（880年） 12月4日：放免
元慶5年（881年） 7月13日：遷配（石見国）

系譜

父：伴善男
母：不詳
生母不詳の子女
長男：伴元孫（859-?）
次男：伴叔孫（862-?）
三男：伴禅師麻呂（865-?）
男子：伴仲兼 - 子孫は肝付氏
男子：伴春雄

参考文献

武田祐吉、佐藤謙三訳『読み下し 日本三代実録 上巻』戎光祥出版、2009年
* 宝賀寿男『古代氏族系譜集成』古代氏族研究会、1986年

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