信州高遠美術館

信州高遠美術館は、長野県伊那市高遠町にある美術館です。1992年に高遠町立の美術館として開館し、2006年の合併により現在は伊那市が運営しています。高遠城址公園の南側に位置し、春にはコヒガンザクラが咲き誇る美しい場所にあります。

特色

展示

館内には2つの展示室があります。第一展示室は、原田政雄氏が収集した「原田コレクション」が中心で、木内克、福沢一郎、平櫛田中、土方久功、熊谷守一など、近代を代表する芸術家の作品を鑑賞できます。第二展示室は、高遠にゆかりのある作家の作品を展示しており、中村不折、池上秀畝、江崎孝坪らの作品を通じて、地域の文化に触れることができます。常設展のほか、年3〜4回程度、企画展や特別展も開催され、中でも平山郁夫氏の特別展は毎年恒例となっています。

また、ミュージアムショップでは、展覧会図録やポストカード、キーホルダーなどのオリジナルグッズを販売しています。

施設

美術館の敷地は、かつて法幢院郭があった場所に建設されました。周囲の自然環境に配慮し、地盤を掘り下げて建てられています。建物は鉄筋2階建てで、延床面積は約1,300平方メートル。設計は、長野市立博物館や松本市美術館も手がけた宮本忠長建築設計事務所によるものです。その美しいデザインは高く評価され、第8回甍賞銀賞（1998年）と第6回公共建築賞優秀賞（1998年）を受賞しています。総事業費は6億5000万円です。

美術館入口近くの壁面と歩道部分には、陶芸家・會田雄亮氏が制作した陶板が敷き詰められており、訪れる人を温かく迎え入れます。屋外庭園には芝生が広がり、屋外コンサートも開催可能です。壁面は打ち放しコンクリート、屋根は北側半分が瓦屋根、南側半分が銅板葺きで、建物全体が地形に沿って弧を描くデザインとなっています。特に、曲線を描く瓦屋根は全国瓦屋根コンクールで銀賞を受賞しています。

ロビーは広い吹き抜けになっており、床から天井までがガラス張りで、開放感にあふれています。ロビーからは高遠湖や三峰川に架かる白山橋が一望でき、美しい景色を眺めながらゆったりとした時間を過ごせます。ロビーはコンサートも開催できるように設計されており、これは初代東京音楽学校校長の伊沢修二氏の遺志を受け継いだものだとされています。

館内には、展示室のほか、喫茶コーナー、2つの収蔵庫、学芸資料室、研修室があります。2階の研修室には大型ハイビジョンが設置されており、ビデオで美術品を鑑賞できます。学芸資料室では、美術史家である谷信一氏の研究資料を閲覧することができます。

歴史

明治時代には、高遠出身の伊沢修二氏が美術館の建設を提唱しましたが、当時は実現しませんでした。その後、上伊那郡高遠町出身の画家・原田政雄氏が、生涯にわたり美術品を収集。生前から美術館の開館を夢見ていましたが、その夢は叶いませんでした。

原田氏の没後、1988年に遺族から高遠町に原田コレクションが寄贈され、これを機に美術館の建設が具体化しました。原田コレクションを基にして、1992年10月1日に信州高遠美術館が開館しました。伊沢修二氏が東京音楽学校（現・東京芸術大学）校長を務めた縁から、東京芸術大学学長の平山郁夫氏が名誉館長に就任しました。

開館時には、池上秀畝氏が昭和天皇御成婚の際に描いた屏風の下絵が展示されました。1993年には、2階研修室のハイビジョン設備を用いて、サイトウ・キネン・フェスティバル松本でのコンサート映像を上映。同年には開館1周年を記念して、平山郁夫氏の特別展「人類文明の発祥の地メソポタミアを行く」を開催しました。また、1997年には池上秀畝氏の長男から写生帳、下絵、素描など28点が寄贈され、常設展示に組み入れられました。

2000年には、平山郁夫氏が制作した「大仏開眼供養記図」の複製陶板画が設置されました。平山郁夫氏は高遠町の名誉町民であり、その作品展は何度も開催されていましたが、美術館が所蔵する作品は陶板画が設置されるまで1点のみでした。

その後も、開館10周年記念の平山郁夫展や、池上秀畝生誕140年・没後70年記念展など、さまざまな企画展が開催されてきました。また、美術館のホールで結婚式が行われるなど、地域に根差した美術館として親しまれています。

2006年には、高遠町、旧伊那市、長谷村が合併し、新伊那市が発足。美術館の運営は伊那市に引き継がれました。

収蔵作品

高遠町出身の日本画家・池上秀畝氏の作品や資料、東京出身で高遠町で青少年期を過ごした中村不折氏の作品、同じく高遠町出身の日本画家・江崎孝坪氏の作品などを所蔵しています。また、高遠町に愛着を持っていた中村琢二氏や、平山郁夫氏など、ゆかりのある作家の作品も収蔵しています。

主な作品

熊谷守一「はだか」（洋画）
福沢一郎「堕天使」（洋画）
前田青邨「紅白梅」（日本画）
平櫛田中「尋牛」（彫刻）
土方久功「犬猫」（彫刻）

原田コレクション

原田コレクションは668点に及び、特に木内克氏の作品が最も多く、288点を所蔵しています。その他にも、福沢一郎、深澤史朗、ゲルト・クナッパー、土方久功、張替正次、熊谷守一など、著名な作家の作品が含まれています。また、原田氏が交流のあった平櫛田中氏、熊谷守一氏、斎藤清氏、中川一政氏などからの手紙も保管されています。

周辺

美術館の周辺には、高遠城址公園、高遠城、高遠湖などがあり、観光スポットとしても人気があります。

外部リンク

信州高遠美術館公式ウェブサイト
信州高遠美術館 - artscape
信州高遠美術館 - インターネットミュージアム

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