冠岳 (鹿児島県いちき串木野市)

冠岳（かんむりだけ）

鹿児島県いちき串木野市と薩摩川内市の境界に位置する冠岳は、東西に伸びる稜線に沿って西岳（標高516メートル）、中岳（標高496メートル）、東岳（標高486メートル）の三つの峰が連なる山です。それぞれの山頂からは、東シナ海、霧島山、桜島、開聞岳など、雄大な景色を一望することができます。

歴史と伝説

冠岳は古くから霊山として崇められてきました。山名の由来には、西岳が風折烏帽子に似ているという説、山容が冠に似ているという説、そして秦の使者である徐福がこの地に冠を納めたという伝説があります。中世には、頂峯院を中心に多くの寺社が建立され、南九州における学問の中心地の一つとして栄えました。

頂峯院の興亡

『頂峯院来由記』によると、6世紀後半には用明天皇の命により、蘇我馬子が三つの峰それぞれに社を建て、東岳には勅願寺として興隆寺が建立されたとされています。平安時代中期には、阿子丸仙人が頂峯院を開山し、中世には17の末寺を抱えるほどに発展しました。島津氏の信仰も厚く、桂庵玄樹も訪れた記録が残っています。しかし、明治時代の廃仏毀釈によって、頂峯院は廃止されてしまいました。

伝説

冠岳には、金峰山と喧嘩をしたという伝説も残っています。金峰山が投げた材木が当たって冠岳の肩が低くなり、逆に冠岳がススキの穂で金峰山の目を射たため、金峰山が片目になったという逸話です。同様の伝説は、金峰山と野間岳の間にも存在します。

各峰の特徴

東岳周辺

冠岳神社：かつて東岳神社、東岳熊野権現社、東宮とも呼ばれていました。東側には稲荷大明神社があります。祭神は櫛御気男命で、これが串木野の語源になったという説もあります。
仙人岩：阿子丸仙人が修行したとされる岩山です。北西部は絶壁で、頂上付近には小石池（別名：硯の水）と呼ばれる池があります。この水で書を習うと上達すると言われています。また、岩の西面には不動窟という洞窟があり、不動明王像が安置されています。周辺にはキクシノブ、ナギ、ヤッコソウなどの貴重な植物群落があり、県の天然記念物に指定されています。
頂峯院跡：かつて頂峯院があった場所で、現在は礎石のみが残っています。
護摩岩：1300年に島津忠宗が元寇に対する異国調伏祈願として護摩を焚いた場所です。1965年には、四国の岩屋寺から不動明王像が招かれ、岩の上に安置されました。

中岳周辺

中岳神社：中岳熊野権現、中宮とも呼ばれていました。本地薬師如来が安置されています。祭神は事解男命です。
大岩戸神社：断崖に開いた間口14-15メートルの岩窟にあります。近くには、蘇我馬子が種を蒔いたとされる蘇我煙草と呼ばれる自生のタバコがあるため、煙草神社とも呼ばれています。
材木岳：岩が積み重なった形が材木を積み上げたように見えることから名付けられました。かつて積んでいた材木が一夜にして岩に変わったとされ、夜叉材木とも呼ばれています。材木岳権現が祀られており、頂上からは桜島や開聞岳を望むことができます。

西岳周辺

西岳神社：西岳山頂の平地にあり、西岳熊野権現社、西宮とも呼ばれていました。1678年の火災で焼失しましたが、1683年に再建され、1687年には千手観音と不動明王像が安置されました。祭神は速玉男命です。
冠嶽山鎭國寺頂峯院：1983年に再興された新しい頂峯院です。冠嶽八十八ヶ所歩き遍路の起点となっています。
天狗岩：巨岩が積み重なった形状をしており、天狗の仕業とされています。
阿弥陀堂：冠嶽山鎭國寺頂峯院の近くにあります。

山麓

徐福展望公園：高さ6メートルの徐福像があります。
* 冠嶽園：徐福伝説にちなんで1992年に開設された中国庭園です。

geological feature

冠岳は中新世から鮮新世にかけて活動した古い火山の跡であり、主として安[[山岩]]から形成されています。


冠岳は、その豊かな自然と歴史的背景から、多くの人々に愛される山です。登山やハイキングだけでなく、歴史探訪も楽しめる魅力的な場所と言えるでしょう。

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