野間岳

野間岳（のまだけ）

概要

野間岳は、薩摩半島の南西部、野間半島にそびえる火山岩で形成された山です。遠くから見ると、その急峻な円錐形の姿は印象的で、開聞岳、金峰山と並んで「薩摩半島の三名山」あるいは「薩南の三岳」の一つとして知られています。地元では「タケ」「ノマンダケ」「ノマンタケドン」など、様々な愛称で呼ばれています。

山容

野間岳は、南側の山腹に雌岳を従え、標高500メートル以上は岩肌が露出する急な崖となっています。山の八合目には野間神社が鎮座し、山頂には一等三角点が設置されています。また、東側の海岸沿いには、野間岳と似た円錐形の小山があり、「小岳」と呼ばれています。

南側の山麓、黒瀬から野間神社を経由する登山道が整備されており、約2時間で山頂に到達できます。毎年2月20日には、野間神社の例祭に合わせて登山する風習があり、「タケメイ（岳参り）」「ハツカマツイ（二十日祭り）」「ノマンタケマツイ（野間岳祭り）」として親しまれています。

野間岳は、新第三紀に形成された古い火山であり、山体は四万十層群の上に堆積した安[[山岩]]と凝灰角礫岩から構成されています。海岸付近にはサツマノギクやホソバワダン、山腹にはアコウやタブノキなどの亜熱帯植物、中腹にはタブノキやスダジイ、山頂付近にはイスノキやウラジロガシなど、多様な植生が見られます。また、ヤマモモ、シャリンバイ、クチナシ、アラゲサクラツツジ（ノマツツジ）など、美しい花々も楽しむことができます。

歴史

野間神社の社記によると、野間岳は瓊々杵尊が最初に上陸した地とされ、山腹には神代の都「笠狭宮」（宮ノ山遺跡）があったと伝えられています。古くから山岳信仰の対象となっており、海上から目立つ山容から航海者からの信仰も厚かったとされます。

『日本書紀』には、瓊々杵尊が上陸したとされる「竹島」が記述されており、この竹島が野間岳であるという説があります。江戸時代以前には、中国の船が長崎港へ向かう際の目印として利用され、野間岳が見えると酒を捧げて祝ったと言われています。中国の船乗りたちは、娘媽（媽祖）信仰にちなんで、野間岳を「娘媽山」あるいは「天妃山」と呼んでいました。

野間岳は、古くは「笠砂嶽」と呼ばれていましたが、娘媽（ろうま、ぬま）神を祀るようになってから、野間岳と呼ばれるようになったという説があります。一方で、それ以前から野間岳と呼ばれていたという見方もあります。

伝説

薩摩半島南部に対峙する金峰山と野間岳の間には、次のような伝説が伝えられています。金峰山が野間岳に矢を射て、野間岳の耳に当たったため、野間岳は片耳になった。怒った野間岳は耳を取って金峰山に投げつけたため、金峰山の一方の肩が低くなったというものです。また、野間岳の神様が金峰の神様に石を投げ、仕返しに金峰の神様がススキを投げたところ、野間岳の神様の目に当たって片目が小さくなったとも伝えられています。

娘媽信仰に関連する伝説では、中国福建省莆田の娘が神のお告げにより海に身を投げ、その遺骸が野間に流れ着き、漁民たちが野間岳山頂に葬り、野間権現社を建てたという物語があります。

参考文献

笠沙町郷土誌編さん委員会編　『笠沙町郷土誌　下巻』　笠沙町、1993年

関連項目

野間神社 (南さつま市)

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