南淵永河

南淵永河（みなぶちのながかわ）は、平安時代初期に活躍した貴族です。坂田奈弖麻呂を父に持ち、初めは坂田宿祢、後に南淵朝臣を名乗りました。彼は、嵯峨天皇が皇太子であった頃から、朝野鹿取、小野岑守、菅原清人らと共に侍読として仕え、その学識の高さを示しました。

806年には少外記に任じられ、官僚としてのキャリアをスタートさせます。嵯峨天皇の即位後には民部少丞、さらに従五位下・但馬介と順調に昇進。その後も民部少輔、治部少輔、備後守といった要職を歴任しました。819年には従五位上・権左少弁に抜擢され、820年には右近衛少将、右中弁と武官としても頭角を現します。821年には正五位下・左中弁となり、蔵人頭を兼ねるなど、嵯峨朝の後半においては文武両道にわたって重要な役割を担いました。しかし、822年には蔵人頭を解任されています。

淳和天皇の即位に伴い、823年には従四位下・内蔵頭に叙任されると共に冷然院別当も兼務しますが、間もなく越前守として地方官に転じます。同年12月には、兄の弘貞とともに坂田朝臣から南淵朝臣へと改姓しました。その後、越中守としても地方行政に携わるなど、淳和朝では地方官としての活躍が目立ちました。833年には従四位上に昇進しました。

仁明天皇の時代に入ると、837年に備前守、次いで大宰大弐に任じられ、地方行政に尽力しました。特に、その仁愛をもって民に接したことから、人々に深く慕われたと伝えられています。また、この時期には第19次遣唐使への対応にもあたり、国際的な視野も持ち合わせていたことが伺えます。843年には任期を終えて帰京し、刑部卿に任じられますが、自ら希望して播磨守に転任し地方官を務めます。845年には正四位下・近江守に叙任されました。

70歳を超えてからは辞官を願い出て、文徳天皇の時代には、仁寿元年に老臣として下野守、のちに因幡守・因幡権守を歴任しました。857年10月12日、81歳でその生涯を閉じ、最終的な官位は正四位下行因幡権守でした。

南淵永河は、『経国集』に漢詩作品が収録されるなど、文才にも優れていました。彼の生涯は、平安初期の貴族として、文武両道に秀で、地方行政にも手腕を発揮した多才な人物であったことを示しています。

官歴

806年：少外記
809年：民部少丞
813年：従五位下、但馬介
817年：民部少輔
818年：治部少輔、兼備後守
819年：従五位上、権左少弁
820年：右近衛少将、右中弁
821年：左中弁、蔵人頭、正五位下、治部大輔
822年：蔵人頭解任
823年：従四位下、内蔵頭、冷然院別当、越前守、南淵朝臣に改姓
827年以前：越中守
833年：従四位上
837年：備前守、大宰大弐
843年：刑部卿
時期不明：播磨守
845年：正四位下、近江守
851年：下野守
853年：因幡守
857年：因幡権守、卒去

系譜

父：坂田奈弖麻呂
母：槻本老の娘
妻：不詳
男子：南淵年名（808-877）

脚注

『六国史』に官歴の記述あり

参考文献

森田悌『日本後紀 （下）』講談社〈講談社学術文庫〉、2007年
森田悌『続日本後紀』（上下巻）、講談社〈講談社学術文庫〉、2010年

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