小野岑守

小野岑守（おの の みねもり）は、平安時代初期に活躍した公卿であり、文人としても知られています。征夷副将軍であった小野永見の三男として生まれ、その才能と功績から官位は従四位上・参議にまで昇進しました。また、歌人として有名な小野小町の曾祖父にあたります。

桓武天皇の治世末期には、権少外記や少外記といった官職を務めました。その後、平城天皇が即位し、賀美能親王が春宮となると、岑守は春宮少進に転じました。大同4年（809年）には、賀美能親王が嵯峨天皇として即位したことに伴い、岑守は従七位上から一挙に七階級も昇進し、従五位下に叙爵。右少弁に任ぜられました。

大同5年（810年）に発生した薬子の変では、岑守は固関のために御長広岳と共に近江国へ派遣され、近江介も兼任しました。その後、内蔵頭や左馬頭を歴任し、弘仁4年（813年）には従五位上に叙せられます。弘仁6年（815年）には陸奥守に任ぜられ、吉弥候部等波醜ら俘囚を帰順させるなど、その治績は高く評価され、弘仁8年（817年）には嵯峨天皇から賞賛の詔勅を受けました。また、陸奥守在任中には出羽国府を建設しています。

その後、岑守は治部大輔や皇后宮大夫などの京官を歴任しながら、弘仁10年（819年）に正五位下、弘仁12年（821年）には従四位下へと順調に昇進。弘仁13年（822年）には参議兼大宰大弐に任ぜられ、公卿の仲間入りを果たしました。

大宰大弐として大宰府に赴任中、弘仁14年（823年）には公営田の導入を建議し、翌天長元年（824年）には多禰国を大隅国に編入しました。また、飢饉や疫病で路傍に倒れる人々を救済するため、療養施設として続命院を建設するなど、民政にも尽力しました。天長3年（826年）には従四位上に叙せられています。

天長5年（828年）には勘解由長官兼刑部卿として京官に復帰しましたが、天長7年（830年）4月19日に53歳で亡くなりました。最終官位は参議従四位上でした。一説には、出雲国造が神宝を献上する日に、長く朝堂に立ったことが原因で病を発して死去したとも伝えられています。

岑守は漢詩にも優れており、大同5年（810年）に嵯峨天皇が即位した際には侍読を務めました。弘仁5年（814年）に成立した勅撰漢詩集である『凌雲集』の編纂にも携わり、同集には嵯峨天皇に次いで賀陽豊年と並び、2番目に多い13首が採録されています。また、『文華秀麗集』や『経国集』にも作品が収められており、唐風に「野 岑守」と表記されることもありました。同時代に生きた空海とは、漢詩を通じた交流があったとされています。さらに、『日本後紀』や『内裏式』の編纂にも関与しました。

官歴
延暦22年（803年）4月：権少外記。5月：兼春宮少進（春宮・安殿親王）
延暦25年（806年）3月：少外記。5月：春宮少進（春宮・賀美能親王）
大同2年（807年）1月20日：畿内観察使判官
大同4年（809年）4月13日：従五位下、右少弁。4月14日：兼春宮亮。11月：兼式部少輔
大同5年（810年）9月10日：兼近江介。9月16日：内蔵頭
弘仁3年（812年）1月12日：兼美濃守
弘仁4年（813年）1月7日：従五位上
弘仁5年（814年）1月23日：兼左馬頭
弘仁6年（815年）1月10日：陸奥守
弘仁10年（819年）1月7日：正五位下
弘仁11年（820年）1月11日：兼阿波守。1月27日：兼治部大輔
弘仁12年（821年）1月7日：従四位下。1月10日：兼皇后宮大夫（皇后・橘嘉智子）。2月2日：兼近江守
弘仁13年（822年）3月20日：参議兼大宰大弐
天長3年（826年）1月7日：従四位上
天長5年（828年）2月9日：兼勘解由長官。閏3月9日：兼刑部卿、長官如元
天長7年（830年）4月19日：卒去（参議従四位上）

系譜
父：小野永見
母：不詳
生母不明の子女
男子：小野篁（802-853）
女子：藤原敏行室

参考文献
『日本史広辞典』山川出版社、1997年
森田悌『日本後紀 （中）』講談社〈講談社学術文庫〉、2006年
森田悌『日本後紀 （下）』講談社〈講談社学術文庫〉、2007年
『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
宝賀寿男『古代氏族系譜集成』古代氏族研究会、1986年

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