南淵年名

南淵年名（みなぶちのとしな）

南淵年名は、平安時代初期から前期にかけて活躍した公卿です。南淵朝臣を姓とし、父は因幡権守の南淵永河とされています。

経歴

天長9年（832年）に文章生となり、翌年には少内記に任官。仁明朝では丹波権大掾、式部少丞、蔵人を経て、承和8年（841年）に従五位下・筑前守に叙任されました。

文徳朝に入ると、嘉祥3年（850年）に式部少輔として京官に復帰し、仁寿3年（853年）には従五位上に昇進。斉衡3年（856年）には蔵人頭と春宮権亮を兼任し、天皇の側近として仕えるとともに、皇太子・惟仁親王にも近侍しました。天安元年（857年）には正五位下・式部大輔、天安2年（858年）には従四位下へと順調に昇進。同年11月には、惟仁親王の即位（清和天皇）に伴い正四位下に叙せられ、右大弁・左大弁と要職を歴任しました。

貞観4年（862年）には、時の政治に関して議論し諸政策の効果を検討するよう命じられた際、南淵年名は、進士出身で内外の諸官を歴任し政務や法律に精通していること、そして既に弁官の要職にあることから、意見を述べるべき人物の一人として推薦されました。

貞観6年（864年）には参議に任ぜられ公卿の列に加わりました。貞観8年（866年）に発生した応天門の変では、参議・藤原良縄と共に伴善男の尋問を担当。その後、民部卿、春宮大夫などを歴任し、貞観14年（872年）には従三位・中納言、貞観18年（876年）には大納言、貞観19年（877年）には正三位に昇りました。その学識の高さから清和天皇の信任が厚く、『貞観格』『貞観交替式』『日本文徳天皇実録』の編纂にも携わりました。

没年となる貞観19年（877年）には、小野山荘に大江音人、藤原冬緒、菅原是善ら知識人を招き、日本初の尚歯会を開催したことでも知られています。同年4月8日に70歳で亡くなりました。最終官位は大納言正三位でした。

人物

聡明で物事に明るく、度量があったとされ、政務に対しては清廉に取り組んだと伝えられています。

官歴

天長9年（832年）：文章生
天長10年（833年）1月11日：少内記
承和2年（835年）1月11日：丹波権大掾
承和5年（838年）1月13日：式部少丞
承和7年（839年）1月：蔵人
承和8年（841年）1月13日：従五位下、筑前守
嘉祥3年（850年）1月15日：尾張守。11月29日：式部少輔
嘉祥4年（851年）4月1日：次侍従
仁寿3年（853年）1月7日：従五位上
斉衡3年（856年）6月：蔵人頭。10月21日：春宮権亮
天安元年（857年）5月8日：正五位下、式部大輔。9月10日：兼春宮亮
天安2年（858年）1月7日：従四位下。3月24日：右京大夫、式部大輔兼春宮亮。5月21日：兼春宮権亮。9月14日：兼信濃守、右京大夫式部大輔。11月7日：正四位下
天安3年（859年）2月13日：兼勘解由長官
貞観3年（861年）1月13日：右大弁
貞観5年（863年）2月10日：左大弁
貞観6年（864年）1月16日：参議
貞観9年（867年）1月12日：民部卿、兼伊予守
貞観10年（868年）1月16日：兼右衛門督
貞観11年（869年）2月1日：兼春宮大夫
貞観12年（870年）1月25日：兼近江守
貞観14年（872年）8月25日：従三位、中納言
貞観18年（876年）12月26日：大納言
貞観19年（877年）1月3日：正三位。4月8日：薨去

系譜

父：南淵永河（一説に南淵弘貞）
母：不詳
妻：不詳
男子：南淵良臣

脚注

注記のないものは『六国史』による。

参考文献

武田祐吉、佐藤謙三訳『読み下し 日本三代実録 上巻』戎光祥出版、2009年
『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年

もう一度検索