台湾鉄路管理局EMU800型電車

台湾鉄路管理局EMU800型電車とは

台湾鉄路管理局（台鉄）が保有するEMU800型電車は、交流電化区間で使用される通勤形電車です。六家線や沙崙線の開業、花東線の電化、西部幹線における都市近郊輸送の需要増加に対応するため、大量に導入されました。2007年に導入されたEMU700型電車の好評を受け、その追加増備として計画され、台鉄としてはEMU500型電車以来の大量導入となりました。

2015年6月には、円安により導入予算に剰余金が生じたため、増備が決定しました。これによりEMU800型の導入数は、EMU500型と同数となる予定です。

歴史

EMU800型電車の導入は、2007年5月に提出された316両の電車購入計画に遡ります。この計画は、以下の要素を考慮したものでした。

台鉄都市圏の捷運化と新駅建設に伴う通勤電車増備 (176両)
台北駅発着列車の高性能化 (112両)
内湾・六家線電化・延伸に伴う増備 (12両)
沙崙線開業に伴う増備 (16両)

当初、東部幹線向けの通勤型・長距離型旅客列車計画では通勤型気動車54両の購入も予定されていましたが、入札が6度も不調に終わりました。その後、通勤型電車の予算と合わせ、370両に増やす入札案が2009年に公示されましたが、通貨安や価格交渉が難航し、最終的には296両に減らされました。

2011年1月、台湾車輛が総額154億3,900万台湾ドルで落札しました。台湾車輛の出資者でもある日本車輌製造が、量産先行車2編成16両を受託製造することになりました。8編成64両が区間快車として、残り29編成232両が区間車として運行されています。

設計

EMU800型は、EMU700型と同様に4両編成を2組連結した8両固定編成ですが、ユニット構成はTEMU1000型（太魯閣号）に準じています。外観は、従来の台鉄の電車とは大きく異なり、先頭車両はTEMU1000型のような流線形を採用しています。これは通勤型電車としては初の試みです。また、乗務員用扉が追加されています。

営業最高速度は130km/h、設計最高速度は140km/hとなっています。

内装は、当初計画では1編成あたり最大1,469名の乗客を輸送できるよう、座席配置はEMU700型に準じたセミクロスシートが採用されました。座席のクッションには、座り心地を高めるための工夫が施されています。座席は台湾の佳豊機械設計工業が製造しています。

7次車となるEMU881以降は、先頭車を除く6両がオールロングシートに変更され、塗装も黄色と青の配置が逆になりました。1、3、6、8号車にはトイレが、1、8号車にはバリアフリー対応施設（折りたたみ式おむつ交換台を備えた身障者用トイレと車椅子止め）や、最大8台の自転車置き場が設置されています。また、車内ドア上には、EMU600型でも採用されている液晶モニタによる列車情報案内装置が設置されています。

編成

凡例

VVVF：主制御器（VVVFインバータ装置）
Rc：コンバータ装置
Mtr：主変圧器
VCB：真空遮断器
SIV：静止形インバータ
CP：空気圧縮機
乗：列車長及び乗務員室
WC：便所
♿：バリアフリー施設（座席及び便所）
🚲：自転車搭載設備


編成一覧

（編成図は省略）

配備計画

EMU800型は、43編成86組344両（EMU801+802～EMU885+886）の通勤型電車として配備されました。EMU700型と同様に、まず日本車輌製造がプロトタイプとして量産先行車2編成16両（EMU801+802、EMU803+804）を製造しました。その後、台湾車輛が日本車輌製造と提携し、残りの41編成328両（EMU805+806～EMU885+886）の現地組み立てを担当しました。

しかし、量産先行車が台鉄との仕様協定と異なることが発覚し、落成が延期されました。これにより、当初2013年春節シーズン前の営業運転開始予定が未定となり、台湾国内で組み立てる残りの編成の落成も遅れる見込みとなりました。この協定違反問題は2013年6月に解決し、量産先行車は同年7月に落成し、2014年1月2日から営業運転を開始しました。

量産車7編成56両は2013年8月に落成し、2014年の旧正月シーズンに営業運転を開始しました。残りの編成は2015年内に順次落成し、2016年上半期に全編成が営業運転に投入されました。

全編成の配備完了後、西部幹線では区間車が大幅に増発され、莒光号の運行区間は縮小、南迴線、花東線向けや観光列車、団体列車として使用されることとなりました。また、他の電化区間では区間快車として運用され、性能面で見劣りするEMU400型電車や、老朽化したDR2700型を置き換えました。さらに、SP/SPK系列の莒光号/復興号車両も順次置き換える予定です。

近況

2012年6月末、台鉄が日本車輌製造の量産先行車製造現場を監察した結果、ブレーキ系統のパッドが協約で指定されたドイツメーカー製ではなく、日本メーカー製が使用されていることが発覚しました。このため台鉄は、日本車輌製造に対し、仕様変更をしない場合、車両の品質認証ができない可能性があると警告しました。これにより、量産先行車の落成が遅れることになりました。

2012年7月下旬には、先頭車が青く塗装され、白い連結器カバーが取り付けられた車両の画像がインターネット上で公開され、「阿福（スネ夫）号」に似ていると話題になりました。その後、外観が明らかになり、先頭部の塗り分けが微笑んだ口の形に見えることから、「微笑号」の愛称が付けられました。

2012年9月4日には、台湾車輛の協約違反による巨額の違約金支払いのため、倒産の危機に瀕しているという報道がありました。台湾車輛側は、企業運営が正常であると声明を発表し、経済部も事態の解決に向けて協調すると表明しました。

同年9月5日には、2011年初頭の設計コンセプト初回審査で、ブレーキパッドの調達優先順位が樹脂合成（レジンモールド材）であると記載されていたにも関わらず、焼結材（紛体冶金）のブレーキパッドに変更されたことが判明しました。これは台鉄との合意を得ていない変更であり、協約違反の争議に発展しました。

2012年9月14日には、納入期限を過ぎたため、台鉄は台湾車輛に1日当たり70万台湾ドルの違約金を請求することになりました。2012年10月25日には、台鉄と台湾車輛が公共事業委員会の監督の下で調停に参加しました。

2013年7月30日には、台鉄がEMU800型の外観と内装を公表し、量産先行車2編成が翌月下旬に台湾に上陸すると発表しました。2013年8月27日には、量産先行車を積載した輸送船が基隆港に入港し、七堵駅まで輸送されました。

2017年夏には、JR四国と台湾鉄路管理局の間で締結された鉄道友好協定1周年を記念して、EMU800型とJR四国8000系電車の塗装を交換したラッピング車両が双方で運行されました。

2014年6月以降の納入・運用開始状況は以下の通りです。

2014年6月9日：EMU841+842が納車
2014年6月17日：EMU843+844が納車
2014年7月11日：EMU845+846が納車
2014年7月23日：EMU841+842の運用開始
2014年7月30日：EMU843+844の運用開始
2014年8月25日：EMU847+848が納車
2014年9月16日：EMU849+850が納車
2014年10月2日：EMU847+848の運用開始
2014年10月17日：EMU849+850の運用開始
2014年11月13日：EMU855+856が納車
2014年11月28日：EMU857+858が納車
2014年12月2日：EMU853+854の運用開始
2014年12月15日：EMU859+860が納車
2014年12月31日：EMU857+858の運用開始
2015年1月10日：EMU861+862が納車
2015年1月23日：EMU859+860の運用開始
2015年2月25日：EMU863+864が納車
2015年3月17日：EMU865+866が納車
2015年4月2日：EMU863+864の運用開始
2015年4月7日：EMU867+868が納車
2015年4月24日：EMU869+870が納車
2015年4月26日：EMU865+866の運用開始
2015年5月12日：EMU871+872が納車
2015年5月29日：EMU873+874が納車（全車両の納入完了）
2015年6月28日：EMU873+874の試運転完了、同日運用開始
2016年8月19日：EMU881+882納車

配属の機務段

新竹機務段
嘉義機務段

脚注

(注釈、出典は省略)

関連項目

区間車
通勤電車 (台湾)

外部リンク

台湾鉄路管理局
台湾車輛公司

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