台湾電力5号形蒸気機関車
台湾電力5号形蒸気機関車は、日本統治時代の台湾において台湾電力が使用していたタンク式蒸気機関車です。台湾電力では形式を付与していなかったため、便宜的にこの名称で呼ばれています。
概要
1922年（大正11年）に、ドイツのオーレンシュタイン・ウント・コッペル（O&K）社で2両（製造番号10341, 10342）が製造されました。車軸配置は0-6-0(C)、軌間は1,067mmの飽和式2気筒単式のサイド・ウェルタンク機関車です。台湾電力が日月潭での水力発電所建設のために敷設した専用鉄道で使用するために購入され、主に外車埕駅と門牌潭発電所間で運用されました。番号は5, 6が付与され、全長7,420mm、運転整備重量23tの小型機関車でしたが、出力は160HPと、外地を含む日本に来着したコッペル機の中では比較的大型でした。
1927年（昭和2年）5月1日付けで同線は台湾総督府に買収され、台湾総督府鉄道の集集線となりました。その際、本形式は45形（45, 46）に改番され、1937年（昭和12年）の称号規程改正ではC33形（番号不変）となっています。
台湾電力時代から本形式は二水機関庫に配置され、集集線で使用されていましたが、1928年（昭和3年）には1両が彰化庫に配置されました。1931年（昭和6年）には嘉義庫、高雄庫に配置換えとなり、翌1932年（昭和7年）には非営業用となり、温水洗缶装置を装備してボイラーの洗缶用として使用されました。その後、1938年（昭和13年）に2両とも廃車となりました。
廃車後、1両（番号不明）が明治製糖の南靖工場に譲渡され、太平洋戦争後は台湾糖業公司新営總廠の12となりました。1966年には同所で使用されているのが確認されていますが、空気ブレーキを取り付け、側水槽が拡大されています。足回りはオリジナルでは軸距900mm+900mmの1,800mmで、主動輪は第3動輪でしたが、この時点では第1動輪の位置はそのままに総軸距約2,400mmに拡大され、主動輪も第2動輪となっています。側水槽の拡大は、1930年頃に行われたと推測されています。
主要諸元
「全國機關車要覧」（1929年刊）による諸元は以下の通りです。ただし、この機関車は本来メートル法で設計されているため、近藤一郎はオリジナルの動輪径は他の同形車と同じ830mmが正しいとしています。
全長: 7,418mm
全高: 3,410mm
軌間: 1,067mm
車軸配置: 0-6-0(C)
動輪直径: 813mm（830mmの可能性あり）
弁装置: ワルシャート式
シリンダー（直径×行程）: 330mm×400mm
ボイラー圧力: 13.0kg/cm²（12.37kg/cm²の可能性あり）
火格子面積: 0.87m²
伝熱面積: 60.11m²
煙管蒸発伝熱面積: 56.13m²
火室蒸発伝熱面積: 3.98m²
小煙管（直径×長さ×数）: 45mm×3,124mm×130本
機関車運転整備重量: 23.00t
機関車空車重量: 18.00t
機関車動輪上重量（運転整備時）: 23.00t
水タンク容量: 2.53m³
燃料積載量: 0.96t
ブレーキ装置: 蒸気ブレーキ、手用ブレーキ
シリンダ引張力（0.85P）: 6,010kg（動輪直径830mm、ボイラー圧力12.37kg/cm²では5,520kg）
同形機
1922年製の富士製紙に納入された1両（製造番号10322）と、1923年製の王子製紙に納入された1両（製造番号10417）が台湾電力5号形と同形の機関車として挙げられます。前者は160HP形で同社の江別工場で2として使用され、1933年に王子製紙に合併、戦後の財閥解体により北日本製紙の2となり、1963年（昭和38年）まで在籍しました。この機関車は、原形では台湾電力5,6とは連結器を除き全く同形だったとみられます。後者は、金田茂裕が交通博物館所蔵の資料から発見した180HP形で、メーカーの納入先リストでは「Nunobiki, Japan」とあり、布引電気鉄道が発注者とされていますが、詳細は不明です。
参考文献
小熊米雄「舊台灣總督府鉄道の機關車(２)、(終)」鉄道ピクトリアルNos.73,75、1957年、鉄道図書刊行会
金田茂裕「O&Kの機関車」1987年 エリエイ出版部 プレス・アイゼンバーン
寺島京一「台湾鉄道の蒸気機関車について」レイルNo.23、1988年 ISBN 4-87112-173-9
近藤一郎「台湾の蒸気機関車についての覚書(1)」鉄道史料No.137、2013年7月、鉄道史資料保存会
* 車輛工學會「全國機關車要覧」1929年8月、溝口書店
概要
1922年（大正11年）に、ドイツのオーレンシュタイン・ウント・コッペル（O&K）社で2両（製造番号10341, 10342）が製造されました。車軸配置は0-6-0(C)、軌間は1,067mmの飽和式2気筒単式のサイド・ウェルタンク機関車です。台湾電力が日月潭での水力発電所建設のために敷設した専用鉄道で使用するために購入され、主に外車埕駅と門牌潭発電所間で運用されました。番号は5, 6が付与され、全長7,420mm、運転整備重量23tの小型機関車でしたが、出力は160HPと、外地を含む日本に来着したコッペル機の中では比較的大型でした。
1927年（昭和2年）5月1日付けで同線は台湾総督府に買収され、台湾総督府鉄道の集集線となりました。その際、本形式は45形（45, 46）に改番され、1937年（昭和12年）の称号規程改正ではC33形（番号不変）となっています。
台湾電力時代から本形式は二水機関庫に配置され、集集線で使用されていましたが、1928年（昭和3年）には1両が彰化庫に配置されました。1931年（昭和6年）には嘉義庫、高雄庫に配置換えとなり、翌1932年（昭和7年）には非営業用となり、温水洗缶装置を装備してボイラーの洗缶用として使用されました。その後、1938年（昭和13年）に2両とも廃車となりました。
廃車後、1両（番号不明）が明治製糖の南靖工場に譲渡され、太平洋戦争後は台湾糖業公司新営總廠の12となりました。1966年には同所で使用されているのが確認されていますが、空気ブレーキを取り付け、側水槽が拡大されています。足回りはオリジナルでは軸距900mm+900mmの1,800mmで、主動輪は第3動輪でしたが、この時点では第1動輪の位置はそのままに総軸距約2,400mmに拡大され、主動輪も第2動輪となっています。側水槽の拡大は、1930年頃に行われたと推測されています。
主要諸元
「全國機關車要覧」（1929年刊）による諸元は以下の通りです。ただし、この機関車は本来メートル法で設計されているため、近藤一郎はオリジナルの動輪径は他の同形車と同じ830mmが正しいとしています。
全長: 7,418mm
全高: 3,410mm
軌間: 1,067mm
車軸配置: 0-6-0(C)
動輪直径: 813mm（830mmの可能性あり）
弁装置: ワルシャート式
シリンダー（直径×行程）: 330mm×400mm
ボイラー圧力: 13.0kg/cm²（12.37kg/cm²の可能性あり）
火格子面積: 0.87m²
伝熱面積: 60.11m²
煙管蒸発伝熱面積: 56.13m²
火室蒸発伝熱面積: 3.98m²
小煙管（直径×長さ×数）: 45mm×3,124mm×130本
機関車運転整備重量: 23.00t
機関車空車重量: 18.00t
機関車動輪上重量（運転整備時）: 23.00t
水タンク容量: 2.53m³
燃料積載量: 0.96t
ブレーキ装置: 蒸気ブレーキ、手用ブレーキ
シリンダ引張力（0.85P）: 6,010kg（動輪直径830mm、ボイラー圧力12.37kg/cm²では5,520kg）
同形機
1922年製の富士製紙に納入された1両（製造番号10322）と、1923年製の王子製紙に納入された1両（製造番号10417）が台湾電力5号形と同形の機関車として挙げられます。前者は160HP形で同社の江別工場で2として使用され、1933年に王子製紙に合併、戦後の財閥解体により北日本製紙の2となり、1963年（昭和38年）まで在籍しました。この機関車は、原形では台湾電力5,6とは連結器を除き全く同形だったとみられます。後者は、金田茂裕が交通博物館所蔵の資料から発見した180HP形で、メーカーの納入先リストでは「Nunobiki, Japan」とあり、布引電気鉄道が発注者とされていますが、詳細は不明です。
参考文献
小熊米雄「舊台灣總督府鉄道の機關車(２)、(終)」鉄道ピクトリアルNos.73,75、1957年、鉄道図書刊行会
金田茂裕「O&Kの機関車」1987年 エリエイ出版部 プレス・アイゼンバーン
寺島京一「台湾鉄道の蒸気機関車について」レイルNo.23、1988年 ISBN 4-87112-173-9
近藤一郎「台湾の蒸気機関車についての覚書(1)」鉄道史料No.137、2013年7月、鉄道史資料保存会
* 車輛工學會「全國機關車要覧」1929年8月、溝口書店
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