士燮 (交阯太守)

士燮（シー・ニエップ）

士燮（シー・ニエップ、Sĩ Nhiếp）は、後漢末期から三国時代の呉にかけて、交州を支配した豪族です。彼は日南太守の士賜の子として生まれ、その勢力は華南地域から紅河デルタ一帯にまで及びました。士燮は中央政府から半ば独立した政権を築き、独自の政策を展開しました。

生涯

若き日に洛陽へ遊学し、劉陶に師事して『春秋左氏伝』を学びました。孝廉に挙げられ尚書郎となりますが、政争に巻き込まれ免官。その後、茂才に推挙され、父の死後に南郡巫県の県令に任じられました。

光和7年（184年）頃、交州刺史の賈琮の推挙により交阯太守に任じられます。数年後、苛政により恨みを買っていた交州刺史の朱符が殺害されると、混乱を収拾するため、弟たちを合浦、九真、南海の太守に任命するよう朝廷に上奏し、認められました。これにより、士氏の勢力は交趾、合浦、九真、南海へと拡大しました。

建安5年（200年）、荊州の劉表が交州への進出を図り、頼恭を交州刺史、呉巨を蒼梧太守に任命します。曹操は士燮に綏南中郎将の地位を与え、交州七郡の監督を命じました。士燮は曹操との関係を維持し、貢納を続けました。

建安15年（210年）、孫権が歩騭を交州に派遣すると、士燮は孫権に降伏。長男の士廞を人質として送り、自身も衛将軍に昇進、龍編侯に封じられました。また、劉備配下の雍闓を孫権勢力に引き込む仲介役も果たしました。

黄武5年（226年）、90歳で没。彼の墓は蒼梧県とバクニン省に建てられ、トゥアンタインの士王祠では祭祀が行われています。

政策と評価

士燮は隴江南岸の𨏩𨻻に首府を置き、城内に水路を引きました。中央から派遣された従来の支配者とは異なり、土着化した士氏の支配は、現地の民衆からの支持を得ました。南海交易で利益を得て、交州の特産品を朝廷や孫権に貢納しました。官庁に出入りする際には楽器が鳴らされ香が焚かれ、胡人（インド人）商人も行列に加わっていました。

士燮の寛容な統治は民衆に受け入れられ、戦乱を避けて多くの人々が交阯に移住しました。袁忠、鄧義、袁徽、桓邵、程秉、薛綜、許靖、劉巴らの名士も含まれていました。彼は学者・知識人を保護し、教育に力を注ぎました。そのため、ベトナムにおける中国文化の影響力拡大に貢献した人物と見なされています。

袁徽は荀彧への手紙で、士燮の学識と統治手腕を高く評価し、竇融に勝るとも劣らない人物と称賛しました。陳寿は士燮を趙佗以上の人物と評価しています。葛洪の『神仙伝』には、士燮が仙人の董奉から与えられた丸薬によって蘇生する逸話が収録されています。

後世のベトナムの人々からは「士王」と呼ばれ敬愛され、陳朝の時代には追封されました。『大越史記全書』では、士燮はベトナムの正統な王と見なされていましたが、呉時仕によって「士王紀」は削除されました。しかし、20世紀まで教科書に士燮像が記載されていたため、「士王」のイメージは民衆の間に残り続けました。

一族

士氏は元々、魯国汶陽県に本籍を置いていました。新代の混乱を避けて交州に移住し、土着の豪族として力を蓄えました。士燮の父である士賜は、交州出身者として初めて日南太守に任じられました。

士燮には、士廞、士祗、士徽、士幹、士頌らの子がいました。彼の死後、士徽を中心に孫権の直接支配に反発しましたが、呂岱によって処刑され、士氏による交州支配は崩壊しました。

配下

（配下に関する詳細な情報が提供されていれば、ここに記述します。）

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