大宮伊治

大宮伊治（おおみや これはる）

大宮伊治は、明応5年（1496年）に生まれ、天文20年（1551年）に没した戦国時代の官人です。左大史・大宮時元の子であり、大宮官務家最後の当主として知られています。

生涯

明応9年（1500年）に従五位下に叙爵し、後に定泰から伊治へと改名しました。永正9年（1512年）には従五位上、永正13年（1516年）には正五位下へと昇叙されています。永正17年（1520年）に父である大宮時元が亡くなると、室町時代後期から続いていた大宮家と壬生家の対立が深刻化しました。

壬生家との対立

大宮家と壬生家は、官務（左大史上首）と小槻氏氏長者の地位を巡り、長年にわたり対立していました。時元の死後、壬生于恒が官務に任ぜられると、伊治は細川高国に口利きを依頼し、足利義晴の将軍宣下を巡る問題も絡んで、両家の対立はさらに激化しました。しかし、後柏原天皇から于恒の官務留任を望む女房奉書が下されたことで、伊治は敗北し、大永2年（1522年）に算博士に転じました。

官務への返り咲きと和解

大永6年（1526年）に後柏原天皇が崩御すると、伊治は後奈良天皇に働きかけ、同年7月に官務に任じられました。これに対し于恒は強く反発しましたが、細川高国が失脚すると、壬生家の巻き返しが始まりました。三条西実隆らの仲裁により、官務を3年交代制とすることなどを柱とした和解案が作成され、両家は合意しました。しかし、この和解により、伊治は経済的に困窮するようになりました。

地方への下向と文化活動

経済的な困窮から、伊治は越前や美濃へと下向しました。その間、妻の実家である清原家所蔵の写本をもとに『御成敗式目』の版本を刊行しました。これは、仏典以外の国書・法律書出版の嚆矢とされています。また、伊治は物書会や蹴鞠などの寄合に頻繁に参加し、公家衆や武家、山伏、商工業者など、様々な階層の人々と交流しました。

周防国での活動と最期

天文元年（1531年）に大内義隆のもとへ下向すると、伊治は頻繁に周防国山口へ下向するようになります。周防においては、有職故実の教授にあたり、大内義隆が行った四書五経の輪読の際には、清原業賢とともに義隆の質問に答えました。また、伊治の娘・おさいが義隆の側室となり、義尊を儲けました。しかし、天文20年（1551年）に陶隆房の軍に襲撃され、湯田畷で討ち死にしました。享年56歳。

死後

大宮家は長興の時代から宮廷文書を失い、伊治の死によって官務の職務を遂行することが不可能となりました。伊治の息子・国雄は幼くして亡くなり、猶子の惟右も消息不明となったため、元亀3年（1572年）に正親町天皇は壬生家に大宮家継承を命じました。これにより、大宮官務家は絶家し、以後壬生家が官務を世襲することとなりました。

人物

伊治は、文化人としても知られており、著作に『伊治記』『伊治宿禰等符案』があります。また、様々な階層の人々と交流し、町衆との連帯感を共有しながら暮らしていたとされています。

官歴

明応9年（1500年）12月29日：従五位下
時期不詳：定泰から伊治に改名
永正9年（1512年）12月13日：従五位上
永正13年（1516年）2月9日：正五位下
永正18年（1521年）3月28日：左大史、4月2日：正五位上
大永2年（1522年）日付不詳：算博士
大永6年（1526年）正月25日：従四位下、7月8日：官務
享禄3年（1530年）7月17日：従四位上
天文3年（1534年）5月22日：正四位下
天文7年（1538年）正月5日：正四位上
天文13年（1544年）3月19日：尾張権守
天文20年（1551年）8月28日：卒去

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