大隅石井氏

大隅石井氏：三浦氏の流れを汲む武家の興亡

大隅石井氏（おおすみ/さつま いしいし）は、桓武平氏の流れを汲む三浦氏の一族であり、相模国から大隅国へと移り住み、鎌倉時代末期から室町[[時代]]末期にかけて活躍した武家です。特に島津氏の重臣として知られています。

歴史

成立

石井氏の祖は、相模国の豪族で源頼朝を助け、鎌倉幕府創設に貢献した三浦義明の子孫です。宝治元年（1247年）の宝治合戦で三浦一族は滅亡の憂き目を見ますが、三浦員村の次男である盛明は難を逃れました。その子である義継が相模国三浦郡石井庄（現在の神奈川県横須賀市平作町）に居城し、石井を名乗ったとされています。大隅国では、大隅郡垂水の中俣・海潟を領地とし、その地で勢力を拡大しました。1292年、大隅守護職が北条氏に移った際、石井氏は北条氏の御内人となり、垂水地頭として赴任してきたと考えられています。

鎌倉時代末期、1330年頃に義継の子である石井重義が大隅に下向し、垂水城を再興して居城としました。これにより、大隅石井氏が本格的に歴史の表舞台に登場することになります。

南北朝時代・室町[[時代]]

南北朝時代には北朝に属し、1349年には南朝方の肝付兼重の攻撃を受けました。この時、石井中務丞重信は、島津氏5代当主の貞久に救援を求め、島津氏の援軍によって危機を脱しました。この戦いで、重信の弟である次郎が戦死しています。

1355年、肥後種顕・種久兄弟が畠山直顕を擁して反乱を起こしましたが、石井氏は島津氏6代当主氏久に味方し、これを鎮圧しました。1377年には、九州探題今川了俊の五男満範が南九州の国人をまとめ、都之城に攻め寄せましたが、石井氏は島津氏の武将として出陣し、激戦を繰り広げました。

石井氏は最盛期には、石井中務少輔義忠入道旅世が島津氏の家老を4代に渡って務めました。義忠は、島津氏9代当主忠国から12代当主忠治まで、家老として重きをなしました。また、石井氏は仏教にも深く帰依しており、五代当主である元義は、福昌寺の造営に際して寄進を行っています。垂水市中俣にある岩屋観音堂は、石井氏七代までの菩提寺とされ、多くの石塔が残されています。

滅亡

1526年、石井氏は島津勝久の攻撃を受け、垂水城を陥落させられ、本拠地を失います。これは、当時石井氏が島津実久方（薩州家）に属していたことが原因とされています。その後、石井氏は海潟へ移住しますが、1550年代に、9代当主の石見守義辰が殺害され、大隅石井氏は滅亡しました。

その後の動向

石井氏の滅亡後、一部の子孫は大隅に残り、一部は島津氏に仕え、鹿児島や日向国佐土原に移住しました。佐土原藩に移住した一族からは、後に陸軍中将となる石井隼太を輩出しています。

平姓石井氏略系図

桓武天皇 – 葛原親王 – 高見王 – 高望王（平姓） – 良文 – 忠通 – 為通（三浦氏祖） – 為継 – 義継 – 義明 – 義澄 – 義村 – 朝村 – 員村 – 盛明 – 義継（石井太郎） – 1.重義（大隅下向） – 2.重信 – 3.久義 – 4.孝義 – 5.元義 – 6.重義 – 7.義春 – 8.義定 – 9.義辰 – 10.義高 – 11.義泰（鹿児島移住） – 12.義知 – 13.義家 – 14.義教 – 15.元明 …… 才援 – 元亭（医師） – 元信（教育家）

佐土原流

義次（佐土原島津家初代以久に随従して佐土原に移住） - 義辰 - 義真 - 義知 - 義見 ･･････ 義次 - 平三 - 隼太

七郎兵衛流

石井七郎兵衛（石井石見守の支族で兵道家） - 源六左衛門 - 八郎四郎 - 十右衛門 - 助八 - 十助 - 助八

系図考察

石井氏は、辺田七人衆の一人として、約200年間、垂水城主としてその名を轟かせました。しかし、詳細な系図は必ずしも明らかになっていません。特に、三浦石井氏系図には、三代久義から五代元義までが直系のみしか記載されておらず、庶流については、波須和氏や井上氏など、ごく一部しか確認できていません。

佐土原石井家に伝来した「平姓石井氏系図」によると、石井氏嫡男家は五代元義で途絶え、六代重義は、二代重信の弟次郎（波須和氏）の曾孫とされています。また、文献等に登場する義仍などの嫡流と思われる名前が、系図に登場しないことから、公表されている石井氏系図は二男家のものと考えられるようになっています。

さらに、石井氏の家系を遡ると、三浦氏の祖である為通の父、忠通が登場します。忠通は平良文の末子とされていますが、生没年から見て、実の親子関係は薄いと考えられています。忠通は源頼光の四天王の一人とされ、その一人の碓氷貞光が忠通の父親であるという説もあります。碓氷貞光は橘氏の出身であるため、石井氏のルーツは橘氏にある可能性も指摘されています。実際に、橘紋を定紋として使用している石井家も存在しています。

幕紋

丸に二引・丸に三階菱・丸に釘貫

その他の大隅石井氏

大隅には、垂水の石井氏以外にも、禰寝氏の重臣として、また、姶良郷の郷士として、石井氏が存在していました。これらの石井氏は、垂水の石井氏とは、早い段階で分かれたものと考えられています。

薩摩半島の石井氏

鹿児島市内には、医師として活躍した石井三兄弟（元亭、玄貞、伊佐敷蕾）がいました。

南さつま市には、田布施や坊泊の郷士として石井氏がいました。田布施には、郷絵図の製作を指揮した石井次郎太、坊泊には、西南戦争に出陣した石井源助や石井松次郎がいました。

日置市吉利には、禰寝氏の移封に従い大隅から移住した石井氏がいました。

日向の石井氏

宮崎市（旧・佐土原町）には、佐土原藩士として石井氏がいました。義高の末弟である義次は、佐土原藩に移住し、その子孫は、佐土原藩士として活躍しました。佐土原石井家からは、陸軍中将となった石井隼太を輩出しています。

結論

大隅石井氏は、そのルーツを三浦氏に持ち、大隅の地で勢力を拡大しましたが、内部抗争や外部からの圧力により滅亡しました。しかし、その子孫は各地に散らばり、それぞれの地で活躍し、歴史に名を残しています。その足跡は、今もなお、様々な史料や伝承の中に息づいています。

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