天風

天風エンジン（あまかぜ）について

天風（あまかぜ）は、日本の東京瓦斯電気工業（現在の日立航空機）が開発した航空機用の空冷星型エンジンです。このエンジンは、第二次世界大戦の前に製造され、主に陸軍および海軍の練習機に搭載されることで重要な役割を果たしました。

天風エンジンは公式に「あまかぜ」と呼ばれ、陸軍向けにはハ13という名称が付与されました。特にハ13甲2型はトヨタ自動車工業が手掛けたもので、部隊の訓練や飛行機の操作技術向上に寄与しました。戦争末期には陸海軍が統合してハ23という名称が用いられるようになりました。

簡易型天風一五型の開発

1943年、天風の生産能力を拡大し実用機に向けたエンジンの簡易型、天風一五型の製造が計画されました。このモデルは、部品数量を最大限に減少させるため、従来の鍛造品を使用するのではなく、鋳造品や鉄板打ち抜き材など、より安価で簡易な方法を採用しました。部品の中にはアルミニウム合金で作られた軸受やブッシュ、ソフトスチール製のネジも含まれており、戦略資源の節約が図られました。

ただし、部品の供給がスムーズには行かず、試作機が初めての耐久試験をクリアした後、九三式中間練習機による飛行実験でも成果が見られましたが、大規模な生産を行う状況には至りませんでした。その結果、日立での大規模な生産は断念され、小規模な製造が正田飛行機製作所で続けられました。

現存する天風エンジン

天風エンジンは戦後、多くの機体が残る中で一式双発高等練習機の一部が現存しています。2012年には十和田湖から引き揚げられた機体に搭載されていたハ13甲の2基のエンジンが発見されました。このうちの1基が日野自動車のエンジン実験部門および生産技術部門によってレストアされ、2013年から青森県航空協会によって日野オートプラザで展示されました。現在では青森県立三沢航空科学館にて機体と共に見ることができます。

レストア中には泥に埋もれていた部分に腐食が見られたものの、水中に露出していた部分は比較的良好な状態でした。また、分解した際には内部にオイルが残っていたことが確認されています。レストアに関与した技術者は、このエンジンの高い技術を称えつつも、部品の生産性については改善の余地があると感じたと述べています。

参考機体と性能

天風エンジンは、様々な訓練機や航空機に搭載されています。具体的には、九〇式機上作業練習機や九一式中間練習機、九三式中間練習機、九六式小型水上機などに使用されるほか、ハ13シリーズでは九五式一型練習機やキ105、九八式直接協同偵察機、九九式高等練習機など、多岐にわたりました。

天風エンジンは、日本の航空技術の一端を担い、その技術的特性や歴史は今でも多くの航空ファンや研究者にとって興味深いテーマです。

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