姉小路公文

姉小路公文（あねがこうじ きんふみ/きみふみ）

姉小路公文は、正徳3年（1713年）に生まれ、安永6年（1777年）に没した江戸時代中期の公卿です。姉小路実武の子として生まれ、石山基名や開明門院（姉小路定子）を兄弟に持ちます。また、姉小路実茂と公聴という二人の息子がいました。

生涯

公文は、享保2年（1717年）に叙爵を受け、公卿としての道を歩み始めます。享保10年（1725年）には元服し、従五位上侍従に任ぜられました。その後、右権少将、右中将と昇進を重ね、元文5年（1740年）には蔵人頭に任じられます。元文6年（1741年）には正四位上参議に任ぜられ、朝廷内での地位を確立しました。

公文の運命を大きく変えたのは、妹である定子（大典侍）が桜町天皇の皇子を生んだことでした。この皇子（後の桃園天皇）の誕生により、公文は桜町天皇の近習に加えられ、朝廷内での影響力を増していきます。寛保2年（1742年）には従三位に叙されました。

桜町天皇は朝廷改革を推し進める中で、定子が生んだ皇子の「実母」を正配である二条舎子（青綺門院）とすることで、摂家との関係強化と外戚の弊害抑制を図りました。その見返りとして、実際の生母である定子の実家、つまり公文を要職に起用したのです。延享4年（1747年）に皇子が桃園天皇として即位すると、公文は議奏に任じられ、正三位に叙されました。その後も寛延元年（1748年）に権中納言、宝暦元年（1751年）には権大納言へと昇進し、宝暦2年（1752年）には従二位に叙せられました。

しかし、宝暦事件の頃には、公文の権勢に対する批判も起こりました。桃園天皇の側近であった烏丸光胤らは、公文が無学でありながら天皇の信頼を笠に着て権力を振るい、摂家の大臣すら公文の機嫌を取っていると非難しました。一方で、烏丸光胤らも、自分たちの主張を広めるために公文を取り込もうとしていた側面もありました。

宝暦9年（1759年）には、桃園天皇の命により、公文の姉小路家が、かつて没落した姉小路公宣系の姉小路家の祭祀を引き継ぐことになりました。これは、桜町天皇の朝廷改革の一環である官制改革における旧家と新家の区別を曖昧にするものであり、公文の姉小路家を厚遇するための強引な理屈付けであったとも言えます。

宝暦10年（1760年）から安永3年（1773年）まで、公文は武家伝奏を務めました。その後、積気と健忘症を理由に武家伝奏を辞任し、公の場から退きますが、安永5年（1775年）には従一位に叙せられています。

系譜

父：姉小路実武
母：不詳
妻：不詳
男子：姉小路実茂
* 男子：姉小路公聴

姉小路公文は、桜町天皇と桃園天皇の時代において、朝廷内で大きな影響力を持った公卿でした。彼の権勢は批判も浴びましたが、朝廷の政治に深く関与し、その生涯は江戸時代中期の朝廷政治を考える上で重要な事例となっています。

もう一度検索