安井知哲

安井知哲（やすい ちてつ）

安井知哲（1644年 - 1700年）は、江戸時代の著名な囲碁棋士であり、家元である安井家の三世としてその名を歴史に刻みました。初代安井算哲の三男として生まれ、二世安井算哲（渋川春海）は彼の兄にあたります。特に、本因坊道策との間に築かれたライバル関係は、当時の囲碁界において特筆されるものでした。

生涯

安井知哲は山城国（現在の京都府）で生を受け、幼少の頃は小三郎と呼ばれていました。明暦3年（1657年）には、兄である二世安井算哲と共に鹿苑寺に招かれ、その才能を披露しました。万治4年（1661年）には、仙洞御所にて後水尾法皇の前で対局を披露するという栄誉に浴しています（「隔蓂記」に記録）。この頃に知哲と改名し、寛文4年（1663年）には江戸に召し出されました。

寛文7年（1667年）には、道策と共に御城碁に初めて出仕し、以降、数々の対局を重ねます。延宝3年（1675年）に二世算知が本因坊算悦との争碁を打ち止め、碁所を返上。元禄10年（1697年）に隠居したことで、知哲が安井家の家督を継承しました。延宝6年（1678年）に本因坊道策が碁所の地位に就いた際、知哲は上手（七段）並の手合とされました。元禄13年（1700年）に病没し、京都の寂光寺に葬られ、法名は理心院知哲居士。

元禄5年（1692年）には、安井仙角を跡目としていましたが、後に安井家四世となっています。また、長女は渋川春海の子である昔尹に嫁ぎましたが、昔尹が夭逝したため、正徳5年（1715年）に次男の右門に渋川家の天文方を継がせ、敬尹と名乗らせました。

対局譜

道策とは、御城碁初出仕時の対局を含め、生涯で48局もの棋譜が残されており、道策の対戦相手としては最も多い記録です。当初は1歳年下の道策が定先でしたが、6番手直り5度の30局で知哲が二子となり、二子番26局で知哲が1番勝ち越した結果、最終的には先二の手合となりました。寛文10年（1670年）の知哲先番中押勝の碁は、知哲の傑作譜として知られています。

その他にも、本因坊道悦、井上道砂因碩、井上道節因碩、星合八碩、本因坊策元、本因坊道知、林玄悦門入といった名だたる棋士との棋譜が遺されています。御城碁においては、道策に対して先番で1勝1敗、道的に対して互戦で2敗などの記録が残っています。

漫画「ヒカルの碁」において、佐為と菅原顕忠が対局した際の棋譜は、寛文9年10月14日に行われた知哲（先番）と道策の対局が使用されています。

御城碁成績

寛文7年（1667年） 先番5目負 本因坊道策
寛文9年（1669年） 白番4目負 林門入
寛文10年（1670年） 白番2目負 林門入
延宝4年（1676年） 白番2目勝 井上道砂因碩
延宝5年（1677年） 先番5目負 本因坊道策
天和元年（1681年） 先番19目負 本因坊道策
貞享4年（1687年） 白番13目負 本因坊道的
元禄元年（1688年） 白番12目負 本因坊道的
元禄2年（1689年） 先番17目負 本因坊道的
元禄3年（1690年） 白番6目負 井上道節因碩
元禄4年（1691年） 白番中押負 井上道節因碩
元禄5年（1692年） 白番13目負 本因坊策元
元禄6年（1693年） 先番1目勝 井上道節因碩
元禄7年（1694年） 白番5目負 井上道節因碩
元禄8年（1695年） 先番9目勝 井上道砂因碩
元禄9年（1696年） 向三子6目負 林玄悦門入
元禄10年（1697年） 先番中押負 井上道節因碩
元禄11年（1698年） 白番8目負 本因坊策元
元禄12年（1699年） 白番中押負 井上道節因碩

参考文献

安藤如意 原著、渡辺英夫 改補『坐隠談叢 : 囲碁全史』新樹社、1955年。
酒井猛『玄妙道策（囲碁古典名局選集）』日本棋院〈囲碁古典名局選集〉、1991年12月。ISBN 4818203491。

外部リンク

木石庵「安井知哲」
* 奇譜子「安井知哲」（棋譜集）

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