小里光親

小里光親（おり みつちか）：激動の時代を駆け抜けた武将

小里光親は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将であり、土岐氏の流れを汲む小里氏の一族です。美濃国（現在の岐阜県）の小里城と小里陣屋を拠点としました。彼の生涯は、戦国時代の終焉から江戸幕府の成立という激動の時代と深く結びついています。

生涯

天正12年（1584年）、父の小里光直が長久手の戦いで戦死したため、その遺功により、祖父の小里光明は徳川家康から相模国に300石を与えられました。このことから、光親の一族が早くから徳川家康の家臣として活躍していたことがわかります。

慶長5年（1600年）、関ヶ原の戦いの前哨戦となる東濃の戦いにおいて、光親は祖父の光明、妻木頼忠、遠山利景、遠山友政らと共に徳川家康率いる東軍に属し、重要な役割を担いました。家康から「故郷に急ぎ戻り、旧恩ある者たちを招集し、岩村へ向かい田丸勢を押し退けるように」との命を受け、遠山利景・方景父子と共に江戸屋敷で準備を整え、鉄砲と弾薬を受け取りました。そして、東海道を経由して岡崎から足助へと進軍しました。

旧領主たちの帰還の知らせを聞いた旧臣や領民たちが続々と集まり、小里勢は200人、明知遠山勢は500人もの大軍となりました。8月末には、妻木頼忠の活躍により高山口の戦い、妻木城の攻防戦、土岐口畷の戦いが行われました。9月2日には、妻木家頼が土岐高山城を攻撃、これに応じて土岐高山城の田丸勢は神篦城の軍勢と合流し、東軍の東濃諸氏と西軍（田丸勢）との間で激しい戦いが繰り広げられました。

9月2日、光親は遠山利景・方景父子らと共に、田丸勢の山川佐之助・原土佐守が守る明知城を攻撃し奪還。9月3日には、祖父の光明と共に小里城を奪い返しました。

小里家譜には、9月3日に「夜に急ぎ攻め入って小里の旧城に入った。遠山利景もまた4日5日岩村を攻めた。皆、功があった。玄却（和田玄却、後の小里助右衛門）と光親はまた出陣し、あちこちに放火し、一日市場に陣を構えた。その場所には、田丸の妹婿である福岡長左衛門と、信州人の嵐讃岐の両名が神野の城に籠っていると聞いたので、玄却と光親はすぐに攻めた。城中の防御は固く、味方の損害も大きかった。その後、遠山と小里の両将は岩村と神野の両城を抑え、公命が下るのを待っていた」と記されています。

岩村城は西軍の田丸主水、神篦城は田丸直昌の娘婿である福岡長左衛門と嵐彦兵衛が守っていましたが、9月5日、光親と妻木家頼は神篦城を、遠山友政と遠山利景は岩村城を攻撃。小里勢は中島（市原）に、妻木勢は寺河戸にそれぞれ陣を敷きました。

9月5日から6日にかけて、十三河原にて清水・一日市場の戦いが行われ、小里氏の家老である和田太郎左衛門を含む多くの者が戦死しました。瑞浪市土岐町清水の土岐小学校の裏には、この戦いで命を落とした小里勢の戦死者を弔う五輪塔が残っています。

9月10日、徳川家康が尾張の清洲城に到着すると、光親と遠山利景は家康のもとへ駆けつけ、戦況を報告しました。東濃諸氏が岩村城と神篦城を包囲していた9月15日、関ヶ原の戦いは東軍の勝利で終わりました。遅れて到着した徳川秀忠率いる軍勢は、9月18日に瑞浪市内の中山道を通って西へ向かいました。9月25日には、神篦城に籠城していた田丸勢が降伏開城し、光親が留守居役として入城しました。

関ヶ原での東軍の勝利後も、岩村城に籠城を続けていた田丸主水は、神篦城の田丸勢が降伏したことを知ると戦意を喪失。東濃諸氏は遠山友政を大将として、苗木遠山勢500余人、小里勢300余人、明知遠山勢300余人で岩村城を包囲し、10月10日に田丸主水を降伏させ、岩村城を開城させました。

これらの功績により、光親は同年、土岐郡の一部と恵那郡の大川村、水上村の旧領3619石を再び与えられ、旗本となりました。そして、小里城の近くに小里陣屋を築きました。

慶長6年（1601年）、光親は父の光直と祖父の光明の菩提を弔うため、当林和尚を招き興徳寺を創建しました。

元和元年（1615年）1月8日、大坂の陣に従軍し討ち死にし、興徳寺に葬られました。元和9年（1623年）4月29日、光親の子である光重は嗣子がないまま死去したため、旗本小里氏は断絶し、領地は幕府に没収されました。

まとめ

小里光親は、激動の時代を駆け抜けた武将であり、関ヶ原の戦いにおける東濃の戦いでの活躍は特筆すべきものです。旧領を回復し、旗本として新たなスタートを切ったものの、大坂の陣で戦死するという悲劇的な結末を迎えました。しかし、彼の戦いぶりや功績は、後世に語り継がれています。

参考資料

太田亮「国立国会図書館デジタルコレクション 小里　ヲリ」『姓氏家系大辞典』 第1巻
『美濃古戦記史考 : 六古記原文とその注釈』
『濃州小里記略解』
『瑞浪市史　歴史編』
『尊卑分脈』
『小里家譜』
『寛永諸家系図伝』
『寛政重修諸家譜』
* 『土岐津町誌』

もう一度検索