山路彰常

山路 彰常について

山路 彰常（やまじ あきつね、生年不詳 - 明治14年（1881年）9月24日）は、幕末期に活躍した天文学者であり、江戸幕府最後の天文方の一員でした。彼は天文方の重責を担い、さまざまな業務に関与し、顕著な業績を残しました。彼は通称として金之丞と呼ばれ、父親の山路諧孝の嫡男として生まれました。また、彼の子供である彰善や、孫の歴史家・山路愛山も注目される存在です。

来歴

彰常は天保5年（1834年）にわずかに見習いとして天文方に加わり、ここで父および渋川景佑と共に天保暦の改暦作業に携わりました。改暦後も、彼は新法暦書の暦理撰述に関与し、その功績により、弘化3年（1846年）には異例の親子2代での天文方任命が行われました。その後も彼は、天文方としての活動を続けました。

天保9年（1838年）には、渋川敬直と共に江戸に滞在していたオランダ商館長のヨハネス・エルデウィン・ニーマンと接触し、ここでモリソン号事件の真相を江戸幕府の老中・水野忠邦に報告しました。安政3年（1856年）以降、彼は蕃書調所の業務に従事し、蛮書和解御用としても活動しました。

また、マシュー・ペリーが幕府に贈呈した電信機に関する調査や、父と共に命じられた航海暦の編纂では、彼が主導の立場を取りました。万延元年（1860年）は、柴田収蔵と共に『万国全図』の編纂も行いました。文久元年（1861年）には父の薨去を受けて家督を継承し、明治2年（1869年）に天文方が廃止されるまでその職に留まっていましたが、天文方の地位の低下と共に彼の活動も徐々に制約されていきました。

戊辰戦争においては、嫡男の彰善が彰義隊に参加し行方不明になり、後に捕らえられる事態となります。これを受けて、彰常は明治2年（1869年）春に嫡孫の彌吉を伴って静岡へと移住しました。その後、しばらくして彌吉に家督を譲り、隠居生活を送ることとなります。

明治5年（1872年）、彰常は彰善が戊辰戦争で捕らえられ津山藩に預けられていることを知り、赦免を得て彼を連れ戻します。

山路愛山は、回想録『命耶罪耶』の中で、子供の頃に彰常から「商人の道」を学ぶように言われた際、自身の武士としての誇りから、商人たちを卑しむ発言をしたことを記しています。しかし、その後彼は祖父の言葉の真意を理解し、彼の業績を鑑みて、家に先祖の肖像画を掲げて次世代にその教えを伝えました。

参考文献

• - 中山茂編『天文学人名辞典』（恒星社厚生閣、1983年）
• - 広瀬秀雄「山路彰常」（日蘭学会編『洋学史事典』（雄松堂出版、1984年））
• - 坂本多加雄『山路愛山』（吉川弘文館 人物叢書、1988年）

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