岡山県道・広島県道3号井原福山港線

岡山県道・広島県道3号井原福山港線は、岡山県井原市を起点とし、広島県福山市の福山港に至る主要地方道です。両県に跨る全長約19.2kmのこの路線は、地域間の連携や産業活動を支える重要な役割を担っています。

特徴的な経路

この県道の最大の特徴は、起点の井原市から終点の福山港までを直線的に結ばず、岡山県笠岡市の茂平地区で大きく進行方向を変える「逆L字」型の経路をとっている点です。このため、路線全体としては、井原市と笠岡市を結ぶ区間と、笠岡市から福山市を結ぶ区間という、性格の異なる二つの部分から構成されていると言えます。特に笠岡市用之江地区には、主要国道である国道2号への連絡を目的とした支線（用之江支線）が設けられています。

笠岡市の茂平地区から終点方面にかけての区間は、将来的な地域高規格道路である「倉敷福山道路」（福山道路区間）と並行しています。このため、国道2号笠岡バイパスの一部と連携し、現状では暫定的なバイパス道路としての機能も果たしています。

路線データ

本線は、岡山県井原市高屋町三丁目（高屋町交差点、国道313号交点）を起点とし、広島県福山市引野町（沖浦橋交差点、広島県道244号福山港線起点）を終点としています。路線延長は、岡山県内区間が14.8km、広島県内区間が4.409km（いずれも2015年4月1日現在）で、総延長は約19.2kmです。用之江支線は、岡山県笠岡市用之江の本線交点を起点とし、同地の用之江交差点（国道2号交点）に至ります。

整備状況

この地域がかつて国の備後工業整備特別地域に指定されていたこともあり、路線の大半は2002年までに改良工事が完了しています。

井原市高屋町三丁目の起点付近は住宅街を通過するため、一部に幅の狭い1.5車線区間が存在します。しかし、この区間は将来的に都市計画道路（出部大江線）の整備が計画されており、それに合わせて現道の改良は行われず、あえて1.5車線にとどめられています。一方、井原市大江町より南側は概ね2車線が確保されており、一部の峠道などを除けば歩道も整備されています。

笠岡市用之江地区以南の区間（用之江支線を含む）から茂平地区までは、交通量が多く、4車線に拡幅されています。しかし、茂平地区で西進する区間は福山市大門町五丁目の大門町5丁目交差点までは2車線となります。この交差点より終点側は再び4車線となり、福山港へ向かいます。

終点の福山港における広島県道244号福山港線との接続点では、福山市街方面から244号線を走行してきた場合にのみ、この県道3号線の標識が分かりやすい位置に設置されていますが、井原・笠岡方面からの下り方向では標識が見落とされやすい状況にあるようです。

歴史

井原福山港線の前身は、岡山県道高屋篠坂線、広島県道・岡山県道福山港用之江線（全線）、そして広島県道・岡山県道平野笠岡線（一部）でした。これらの路線を経て、1971年 6月26日に建設省（当時）告示により主要地方道として指定されました。翌1972年 3月21日には、岡山県および広島県の告示により県道路線として正式に認定され、現在の県道番号「3」が付与されました。その後、1993年 5月11日には改めて主要地方道に再指定されています。比較的新しい動きとしては、2017年4月14日に笠岡市篠坂地区で岡山県道377号山口押撫線との接続が実現しています。

地理的特徴

この県道は、岡山県と広島県の県境を合計3回通過するという珍しい地理的特徴を持っています。具体的には、笠岡市篠坂から福山市坪生町へ入り、再び笠岡市篠坂へ戻り、最後に笠岡市茂平から福山市大門町へ入るルートです。以前は最後の1回のみ県境を越えていましたが、1994年の道路改良により福山市坪生町を経由するルートに変更されたことから、現在の3回通過となりました。通過する自治体の順序は、井原市 → 笠岡市 → 福山市 → 笠岡市 → 福山市となります。笠岡市篠坂地区では、山陽自動車道と立体交差しますが、直接の接続はありません。この付近には山陽自動車道篠坂パーキングエリアがあり、スマートインターチェンジの設置が検討されています。また、路線は井原鉄道井原線、山陽新幹線、山陽本線といった複数の鉄道路線とも交差しています。

沿線情報

沿線には、子守唄の里高屋駅、笠岡湾干拓地、笠岡ふれあい空港、新笠岡港といった施設や、JFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部、JFE福山製鉄所、アサムラサキ本社などの事業所が立地しており、地域の産業活動との関連が深いことがうかがえます。特に笠岡市から福山市にかけての4車線区間は、JFE関連の施設が多いことから「鋼管道路」という通称で広く呼ばれています。
名所・旧跡としては、経ヶ丸山やその周辺のグリーンパーク、旧山陽道と旧石州街道が交わる高屋宿の町並みや『中国地方の子守唄』発祥地、華鴒大塚美術館、嫁いらず観音院などがあり、歴史や文化に触れることもできます。
この路線は、かつて石見国や石見銀山に通じていた旧石州街道（笠岡道、笠岡往来）と並行する区間を持ち、特に井原市高屋町から笠岡市有田にかけては、旧街道の面影を残す地域も存在します。旧石州街道には高屋宿を経由するルートと経由しないルートがありましたが、笠岡市有田で再び合流し、石見国を目指していました。

井原福山港線は、その特異な経路と県境を複数回越える地理的な特徴に加え、地域の産業、歴史、文化に深く関わる、興味深い県道と言えるでしょう。

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