常陸小栗氏

常陸小栗氏：坂東平氏の流れを汲む一族の興亡

常陸小栗氏（ひたちおぐりし）は、坂東平氏（桓武平氏）繁盛流に属する氏族であり、常陸平氏大掾氏の庶家として知られています。その歴史は、平将門の乱後の平貞盛に端を発し、常陸国における勢力拡大とともに、様々な戦乱の中でその名を刻んできました。

常陸小栗氏の起源と発展

天慶の乱後、平将門のいとことされる平貞盛は、甥の維幹を養子とし、常陸国を与えられました。維幹は常陸大掾に任じられ、その子孫は大掾職を世襲し、大掾氏を名乗るようになります。この大掾氏から、吉田氏、豊田氏、行方氏、鹿島氏、真壁氏、東条氏、下妻氏、そして小栗氏といった八つの支族が分かれました。小栗氏は、維幹の孫にあたる大掾重義（重幹（繁幹）の子）が常陸国に拠点を構え、創始したとされています。

源平合戦と小栗氏

1183年の志田義広の挙兵（野木宮合戦）では、小栗氏は大掾氏に従い義広方に加担しました。『寛政重修諸家譜』には、重能（重義）が平治合戦で討死し、その子・重成が源平合戦の壇ノ浦の戦いで討死したと記されています。しかし、『吾妻鏡』には1193年に小栗重成が重病であるとの記述があり、重成が壇ノ浦の戦いで戦死したかは定かではありません。

鎌倉公方との対立

重成の曾孫である重信は南方を号し、その曾孫・重政を祖とする河澄氏、厚科氏、大関氏、金尾屋氏などが子孫を称しました。重政の孫である基重は、足利基氏の偏諱を受け鎌倉公方に仕えましたが、その子・満重は1411年に鎌倉公方・足利持氏に反旗を翻し、小山満泰の討伐軍を撃退します。その後、上杉禅秀の乱（1416年）でも上杉禅秀方につき持氏に反抗しますが敗北し降伏。所領の大半を没収されたことで再び反乱を起こしますが、1423年には持氏自らが鎮圧に成功し、満重は自害しました（小栗満重の乱）。この一連の反抗は、小栗氏の本貫地である小栗御厨が室町幕府の御料所である中郡荘の隣地であったことから、室町幕府中央の意向を受けた動きであったとする解釈もあります。

その後の小栗氏

満重の遺児・助重は、1440年の結城合戦で武功を挙げ旧領を回復しますが、享徳の乱を通じて小栗氏は劣勢に立たされ、1455年には足利成氏の攻撃を受け、ついに本拠地である小栗御厨を失ってしまいます。没落した助重は出家し、宗湛入道と号して足利将軍家に仕え、絵の名手として知られました。

三河国の小栗氏

一族の重弘は常陸から三河に下向したとされ、その四世孫・重昌は三河国平田合戦で討死しています。三河における小栗氏の初見は、松平清康が横死した森山崩れ直後に発給された岡崎奉行人の小栗信臣です。永禄年間には、小栗大六・小栗吉忠ら小栗党が筒針城を築き、家康に属して三河一向一揆と戦いました。重昌の孫・正重は徳川家康に仕え、その子孫は旗本として続きました。

越前松平氏に仕えた小栗氏

三河小栗氏の庶子家として、小栗助重の四世孫・五郎左衛門が徳川家康に仕え、その子・大六重国は結城秀康の傅役となり、秀康に付属しました。その子・備後守重勝は、当初徳川秀忠に仕えていましたが、父の死後、秀康に出仕しました。

『結城秀康給帳』や『源忠直公御家中給帳』によると、小栗備後守を筆頭に、小栗一族は越前松平家の家臣団の中核を担っていました。重勝・正重父子は松平忠直改易後、福井藩を致仕し、忠直の子・松平光長の高田立藩に際し高田藩に出仕。重勝は高田城代を務めました。1万7千石を知行した正重が寛文高田地震で圧死した後、その子・美作正矩が藩の執政を務めましたが、越後騒動で子・大六長治（掃部）とともに切腹し、大六系小栗氏は断絶しました。

このように、小栗氏は常陸国を起源とし、鎌倉時代から江戸時代にかけて、各地でその名を刻んだ一族でした。

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