広州国民政府 (1931年-1936年)

広州国民政府（1931年）とは

広州国民政府（こうしゅうこくみんせいふ）は、1931年に陳済棠（ちんせきとう）によって中華民国広東省に樹立された地方政権です。第五次広東政府とも呼ばれます。首都は広州市に置かれました。

成立の背景

1925年7月、汪兆銘（おうちょうめい）を主席とする広州国民政府が成立すると、広東派軍人の陳済棠は頭角を現し、蔣介石（しょうかいせき）の下で軍歴を重ねました。1929年、上司の李済深（りせいしん）が蔣介石との対立で軟禁されると、陳済棠は蔣介石に接近し、広東の軍権を掌握します。1930年の中原大戦では、李宗仁（りそうじん）らの広西軍を背後から牽制し、蔣介石の勝利に貢献しました。しかし、蔣介石は陳済棠を警戒し、軍備縮小を要求したため、陳済棠は反発を強めました。

1931年、中国国民党の重鎮である胡漢民（こかんみん）が蔣介石と対立して軟禁されると、陳済棠は反蔣介石派と協力し、独自の政府を樹立するに至りました。

広州国民政府の樹立と瓦解

1931年5月、反蔣介石派は広州に集結し、蔣介石政権（南京国民政府）に対抗する広州国民政府を樹立しました。この政府には、胡漢民をはじめ、汪兆銘、孫科（そんか）、許崇智（きょすうち）、唐紹儀（とうしょうぎ）らが参加しました。また、新広西派の李宗仁らも反蔣介石の動きを強めました。

広州国民政府の成立後、南京と広州の両政府は互いに非難中傷を繰り返しましたが、満洲事変の勃発により、事態は急展開を迎えます。蔣介石は陳済棠政権に対し融和姿勢を取り、反蔣介石派の政治家たちも広東国民政府から離れていきました。蔣介石は汪兆銘らと統一交渉を進め、自身が下野することを条件に統一政府を組織することで合意しました。しかし、上海事変の勃発により、孫科内閣は短命に終わりました。

広東に残った陳済棠は、蔣介石の意向に従い、広州国民政府を西南政務委員会として再編し、中国共産党討伐に協力しました。1933年の福建事変でも、蔣介石を支持し、福建人民政府を討伐しました。

陳済棠による広東統治

陳済棠は、広東統治において産業振興やインフラ整備に力を入れ、広東に安定と発展をもたらしたと評価されています。しかしその一方で、占星術や風水を信じ、人事や財務に影響を及ぼすこともありました。

1936年5月、陳済棠は李宗仁らと連合し、蔣介石に対し挙兵しましたが（両広事変）、蔣介石側の切り崩し工作により、同年7月に香港へ逃亡し、西南政務委員会は瓦解しました。

まとめ

広州国民政府は、蔣介石に対抗するために樹立された地方政権でしたが、満洲事変後の情勢変化や蔣介石側の政治工作により、短期間で瓦解しました。しかし、陳済棠による広東統治は、広東の近代化に一定の貢献を果たしたと評価されています。

参考文献

小島晋治、丸山松幸『中国近現代史』岩波書店〈岩波新書〉、1986年4月。ISBN 4-00-420336-8。
保阪正康『蔣介石』文藝春秋〈文春新書〉、1999年4月。ISBN 4-16-660040-0。

もう一度検索