徳川慶光

徳川慶光：激動の時代を生きた最後の将軍の孫

徳川慶光（とくがわ よしみつ）は、1913年2月6日に生まれ、1993年2月6日に没した、日本の官僚、政治家、陸軍軍人であり、華族の公爵でした。江戸幕府第15代将軍・徳川慶喜の孫として、激動の昭和の時代を生きました。

生い立ちと青年期

慶光は、公爵徳川慶久と有栖川宮威仁親王の第二王女・實枝子の長男として、東京府東京市小石川区（現在の東京都文京区小日向）で誕生しました。幼少の頃、祖父・慶喜に抱かれた際に、おもらしをしてしまったというエピソードが残っています。10歳で父を亡くし、公爵を襲爵。伯父の池田仲博が後見人となりました。学習院から東京帝国大学文学部支那哲学科に進み、中国哲学を専攻。卒業後は宮内省図書寮に勤務しました。

軍隊生活と貴族院議員

1940年、慶光は二等兵として召集されましたが、肺炎のため入院し、すぐに除隊。1943年には貴族院公爵議員に就任し、火曜会に所属しました。しかし、1944年に再び召集され、中国大陸を転戦。赤痢やマラリア、栄養失調に苦しみ、生死の境を彷徨う経験もしました。終戦は北京で迎え、上等兵として復員しました。

戦後の転落と晩年

戦後、華族制度の廃止により爵位と貴族院議員の議席を失い、財産税のために自邸を物納。静岡県に移り住み、東海大学の附属高校で漢文の講師を務めました。その後は様々な事業に挑戦しましたが失敗し、職を転々としました。晩年は、料理や野菜作りなどの趣味に没頭する一方で、愛人との不倫同棲が報じられるなど、波乱万丈な人生を送りました。

人物像とエピソード

慶光は、若い頃から中華文化に傾倒し、初任給の全額を書籍代に費やすほどでした。また、陸軍病院入院中に高松宮宣仁親王との関係が判明した途端、病院内が慌ただしくなったというエピソードも残っています。料理を趣味とするようになったのは、友人がフランス料理の本を出版したことがきっかけでした。

家族

妻は松平保男の四女・和子。二人の間には、長女の安喜子、次女の眞佐子、長男の慶朝がいます。次女の眞佐子は衆議院議員の平沼赳夫に嫁ぎました。長男の徳川慶朝は写真家として活動しています。

徳川慶光は、公爵という恵まれた身分に生まれながらも、戦争や社会の変化に翻弄され、様々な苦難を経験しました。しかし、晩年は趣味に没頭し、穏やかな生活を送ったと言われています。彼の生涯は、日本の近代史における華族の変遷を象徴していると言えるでしょう。

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