急性腹症

急性腹症：緊急手術が必要となる可能性のある腹部疾患

急性腹症とは、激しい腹痛を主訴とする疾患の総称であり、緊急手術が必要となる可能性があるため、迅速な診断と治療が求められる緊急度の高い状態です。腹痛の原因となる疾患は多岐にわたり、外科、産婦人科、泌尿器科など、複数の診療科が関与することがあります。

急性腹症の症状と診断

急性腹症の最も顕著な症状は、突然発症する激しい腹痛です。この腹痛には、内臓痛、体性痛、関連痛の3種類があります。

内臓痛: 臓器の炎症や感染などによって引き起こされ、鈍い痛みで、広範囲に広がるのが特徴です。悪心、嘔吐、冷汗を伴うこともあります。
体性痛: 腹膜や腸間膜などの炎症によって起こり、鋭く、特定の部位に集中した痛みです。
関連痛: 痛みの発生部位と感じる部位が異なる痛みで、臓器の炎症などが原因で発生します。

診断においては、問診と身体診察が非常に重要です。問診では、腹痛の発生時期、部位、持続時間、性質、伴う症状などを詳細に聞き取ります。既往歴や現在の病歴、女性の月経状況なども重要な情報となります。身体診察では、視診、聴診、打診、触診に加え、必要に応じて直腸診や内診を行います。

視診: 腹部の膨隆、皮膚の色調などを観察します。
聴診: 腸の蠕動音（腸雑音）を聴取します。腸閉塞では腸雑音が減弱または消失することがあります。
打診: 腹部にガスがたまっているか、腹水がたまっているかを調べます。
触診: 腹部の圧痛、筋性防御、反跳痛などを調べます。腹膜炎では筋性防御や反跳痛がみられます。
直腸診: 直腸内の病変や圧痛を調べます。
内診: 女性の場合、婦人科系の疾患を調べるために内診を行います。

これらの診察に加え、血液検査、尿検査、便検査、レントゲン検査などの画像検査（CT、超音波検査など）を行います。必要に応じて内視鏡検査なども行われます。

急性腹症の原因となる疾患

急性腹症の原因となる疾患は多岐にわたります。緊急手術が必要となるものから、保存的治療で経過観察できるものまで様々です。以下に代表的な疾患を挙げます。

緊急手術が必要となる可能性が高い疾患:

汎発性腹膜炎
消化管穿孔
虫垂炎
胆嚢穿孔
大動脈解離・大動脈瘤破裂
複雑性イレウス
子宮外妊娠
卵巣茎捻転
腸重積
ヘルニア嵌頓
壊死性腸炎
上腸間膜動脈血栓症

保存的治療で経過観察、手術が必要となる可能性のある疾患:

被覆性消化管穿孔
中等度炎症（虫垂炎、胆嚢炎、膵炎など）
単純性イレウス
胆石症

原則的に保存的治療を行う疾患:

急性心筋梗塞
尿路結石
腎盂腎炎
急性胃腸炎
出血性大腸炎
薬剤性腸炎
偽膜性大腸炎
消化管潰瘍（穿孔を伴わないもの）
虚血性大腸炎（壊死型でないもの）
* 帯状疱疹

急性腹症の治療

急性腹症の治療は、原因疾患によって異なります。緊急手術が必要な場合は、速やかに手術が行われます。手術を要しない場合は、原因疾患に合わせた保存的治療が行われます。初期治療としては、静脈路の確保、輸液、酸素投与などが行われます。

まとめ

急性腹症は、命に関わる可能性のある緊急性の高い状態です。激しい腹痛を訴える患者には、迅速な診断と適切な治療が不可欠です。 本稿では、急性腹症の概要と診断、治療について解説しました。より詳細な情報が必要な場合は、専門の医療機関に相談することをお勧めします。

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