菅原是善

菅原是善（すがわら の これよし）は、平安時代初期から前期にかけて活躍した貴族であり、文人としても名を馳せました。従三位・菅原清公の四男として生まれ、その生涯を通じて朝廷に仕え、文化の発展に貢献しました。

生涯

幼い頃からその才能を発揮し、11歳で嵯峨天皇の前で書を読み、詩を詠んだと伝えられています。承和2年（835年）には文章得業生となり、その学識の高さを示しました。承和6年（839年）には対策に及第し、異例の三階級昇進を遂げ、正六位上となります。その後、大学允/助、大内記を経て、承和11年（844年）には従五位下に叙爵し、貴族としての地位を確立します。

承和12年（845年）には文章博士に任ぜられ、学問の分野でその才能を発揮します。同時に、越後介や讃岐権介といった地方官も兼任し、皇太子・道康親王（後の文徳天皇）の東宮学士にも任じられました。嘉祥3年（850年）には道康親王の即位に伴い、二階級昇進して正五位下となり、引き続き文章博士を務める傍ら、大学頭、左京大夫、加賀権守、美作権守、伊勢守、備前権守などの要職を歴任しました。また、斉衡2年（855年）には従四位下に叙せられています。

清和朝に入ると、文章博士と播磨権守を兼任し、貞観2年（860年）には従四位上に昇進します。その後、弾正大弼、刑部卿、近江権守、伊予権守を経て、貞観12年（870年）には式部大輔に任じられました。貞観14年（872年）には参議に任じられ、公卿の仲間入りを果たし、勘解由長官や刑部卿などの要職を兼任しました。貞観15年（873年）には正四位下、元慶3年（879年）には従三位に昇進し、その官歴は頂点を迎えます。元慶4年（880年）に69歳でこの世を去るまで、参議従三位行刑部卿として朝廷に貢献しました。

文化人としての活動

文徳天皇と清和天皇の侍読を務め、『文選』や『漢書』を進講するなど、その学識の高さを示しました。また、内記として数々の詔勅や願文を起草し、その文章力も高く評価されています。都良香らと共に『日本文徳天皇実録』の編纂に携わり、『貞観格式』の編纂にも参画するなど、歴史編纂事業にも貢献しました。さらに、『東宮切韻』『銀牓輪律』『集韻律詩』『会昌分類集』といった著作を残し、文人としての才能を開花させました。家集として『菅相公集』も残っています。

人物像

当代随一の文人として、詩家の宗匠である小野篁や、在朝の通儒である春澄善縄、大江音人らと親交があったとされています。多くの弟子を抱え、上卿良吏や儒者詞人といった多くの人材を育成しました。俗世間の事柄にはあまり興味を示さず、風月を愛でて詩を吟じることを好んだとされています。仏道を深く信仰し、人々を慈しみ、孝行を重んじ、殺生を嫌ったと伝えられています。臨終の際には、初冬の梅の季節に自身の法要を営むことのみを語り、他には何も語らなかったというエピソードは、その清廉な人柄を表しています。

官歴

菅原是善は、以下の官歴を歩みました。

承和2年（835年）文章得業生
承和6年（839年）正六位上
承和7年（840年）大学大允、大学助、大内記
承和11年（844年）従五位下
承和12年（845年）文章博士
承和13年（846年）兼越後介
承和14年（847年）兼東宮学士、大内記如故
嘉祥2年（849年）兼讃岐権介
嘉祥3年（850年）正五位下、兼加賀権守
仁寿3年（853年）大学頭
斉衡2年（855年）従四位下
斉衡3年（856年）左京大夫
天安元年（857年）兼美作権守
天安2年（858年）兼伊勢守、備前権守、播磨権守
貞観2年（860年）従四位上
貞観5年（863年）弾正大弼
貞観6年（864年）近江権守、刑部卿
貞観12年（870年）伊予権守、式部大輔
貞観14年（872年）参議
貞観15年（873年）正四位下
元慶3年（879年）従三位
元慶4年（880年）薨去（参議従三位行刑部卿）

系譜

父：菅原清公
母：不詳
妻：伴氏（伴真成の娘）
男子：菅原道善、菅原道仲、菅原道真
女子：菅原類子（光孝天皇妃？、源順子の母？）

旧跡

京都市南区吉祥院高畑町の香泉寺境内には、是善の墓と伝えられる場所があります。また、本堂には是善の坐像が安置されています。

また、是善を主祭神として祀る神社も存在します。

北菅大臣神社（京都市下京区）
* 菅原院天満宮神社（京都市上京区）

菅原是善は、その卓越した才能と高潔な人柄で、平安時代初期の文化と社会に大きな足跡を残しました。

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