日野春駅

日野春駅：歴史と自然が織りなす山梨の駅

山梨県北杜市長坂町富岡に位置するJR東日本中央本線の駅、日野春駅。標高615m、駅番号はCO49です。この駅名は、開業当時の村名である山梨県北巨摩郡日野春村に由来しています。1904年（明治37年）12月21日、中央本線韮崎駅から富士見駅間が開通した際に開業しました。当時、韮崎駅と富士見駅の間には日野春駅と小淵沢駅のわずか2駅しか存在せず、七里岩の急勾配の中間地点に位置する重要な駅でした。

蒸気機関車時代の重要な役割：給水駅

開業当初から、日野春駅は蒸気機関車の給水拠点として重要な役割を担っていました。七里岩の急勾配を上り下りする機関車にとって、水の補給は不可欠だったからです。開業当初は手押しポンプで揚水していましたが、その後、縦型プランジャーポンプや電動渦巻ポンプを導入し、給水効率の向上を図りました。機関車のサイズが大きくなるにつれて給水柱の位置も変更され、本務機と補機への同時給水も可能になりました。給水業務は、多くの職員が日勤・徹夜・非番の3交代制で対応するほど重要なものでした。しかし、1964年（昭和39年）8月23日の甲府駅から上諏訪駅間の電化により、給水駅としての役割は終焉を迎えました。

駅舎と構造：歴史を刻む建物

日野春駅は、島式ホーム1面2線と単式ホーム1面1線の、合計2面3線の地上駅です。ホームは嵩上げされていません。駅舎は旧国鉄標準駅舎1号型で、長坂寄りに増築されたものの、原型をほぼ保っています。駅舎の入口右側の柱には「1904」の文字が刻まれた財産管理標があり、開業当時の面影を残しています。中央東線に現存する駅舎の中でも最古級といわれています。2つのホームと駅舎は跨線橋で結ばれています。駅構内には、かつての給水塔などの遺構も残されており、歴史を感じさせる空間となっています。駅舎は木造一階建てで、待合所と駅事務室があり、簡易Suica改札機と自動券売機が設置されています。

オオムラサキと自然豊かな環境

日野春駅周辺は、自然豊かな環境が広がっています。駅を出てすぐの場所には小さな公園があり、釜無川を眺めることができます。この地域は、日本の国蝶であるオオムラサキの生息地としても知られており、6月から7月にかけてオオムラサキの飛ぶ様子を見ることができます。駅からは、オオムラサキ自然公園やオオムラサキ自然観察歩道（遊歩百選）へもアクセス可能です。また、駅周辺には北杜市オオムラサキセンターや大陽日酸㈱山梨事業所などがあります。

信玄公旗掛松事件：歴史に残る訴訟

日野春駅の開業前、駅周辺には「信玄公旗掛松」と呼ばれる老松がありました。中央本線の建設にあたり、この松を避けるよう地元地主が鉄道院に要請しましたが、聞き入れられず、線路は松のそばを通ることに。機関車の煤煙で弱っていった松は、1914年（大正3年）12月に枯れてしまいました。地主は鉄道院を提訴し、最終的に1919年（大正8年）3月、大審院が地主の訴えを一部認めるという画期的な判決が下されました。駅前の石碑はこの事件を記念して建立されたものです。

アクセスと周辺情報

日野春駅は、北杜市民バスの路線が発着しています。駅周辺には、日野春郵便局、北杜警察署日野春駐在所、山梨県立北杜高等学校などがあります。また、七里岩ライン（山梨県道17号茅野北杜韮崎線）も利用可能です。駅からは、日本三大桜の一つである実相寺の神代桜や甲斐駒ヶ岳の登山口にもアクセスできます。

利用状況

2023年度の1日平均乗車人員は449人です。

隣の駅

• - 穴山駅
• - 長坂駅

日野春駅は、歴史と自然が融合した魅力的な駅です。静かな山里の雰囲気と、歴史的建造物、豊かな自然、そしてアクセスしやすい立地が調和した、訪れる価値のある場所と言えるでしょう。

もう一度検索