長坂町

長坂町について

長坂町は、かつて山梨県北[[巨摩郡]]に存在した町です。八ヶ岳南麓に位置し、豊かな自然と歴史に彩られた地域でした。2004年11月1日に周辺の7町村と合併し、現在は北杜市の一部となっています。

地理

長坂町は、山梨県の北西部に位置していました。八ヶ岳の南麓に広がる地域で、町域は南北に長く、標高は北部が高く南部が低いという特徴がありました。北部地域は長野県との県境に接していました。

八ヶ岳山麓には、女取湧水や三分一湧水といった湧水地が多数存在し、これらの湧水から流れ出す鳩川や大深沢川などの河川が町域を南へと流れていました。これらの河川は、さらに支流と合流して釜無川となり、甲府盆地へと注ぎ込んでいます。

町域の南部は、河川の侵食によって形成された平坦な氾濫原が広がり、集落が集中していました。また、中央本線や国道、中央自動車道といった主要な交通機関がこの地域を通過していました。一方、東部は鳩川によって形成された大八田田圃が広がり、穀倉地帯となっていました。北部には八ヶ岳山系の山々が連なっており、権現岳や三ッ頭などがそびえています。

歴史

先史・古代

長坂町を含む八ヶ岳南麓地域は、旧石器時代から縄文時代にかけての遺跡が数多く分布する地域です。町域内でも200ヶ所以上の遺跡が確認されています。特に、縄文時代中期の酒呑場遺跡は大規模な集落遺跡として知られ、縄文後期には配石遺構が見られる長坂上条遺跡が有名です。平安時代になると、八ヶ岳南麓では牧経営に関連した計画的な集落が形成され、柳坪遺跡などの大規模集落が町域内に現れました。

古代には、『和名類聚抄』に記された巨摩郡逸見郷に比定されると考えられています。奈良時代の集落遺跡は少ないものの、平安時代の遺跡が数多く分布していることから、この時期に開発が大きく進んだ地域だと考えられています。

中世

中世には逸見荘の一部に比定され、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけては、上大八田、下大八田、夏焼の一部が甲斐守護・二階堂氏の領地に含まれていたと考えられています。室町時代には、大八田一帯が大八幡荘に属していたとされています。

戦国時代になると、甲斐守護である武田氏と甲斐国内の有力国衆や信濃国衆との間で争いが激化しました。『高白斎記』によると、1540年には小荒間において武田氏と信濃の村上義清との合戦が起こっています。武田晴信（後の信玄）による信濃侵攻が本格化すると、町域は甲信国境に近いことから信濃信仰の拠点となり、大井ノ森には陣所が置かれたといわれています。

長坂郷には長坂氏の屋敷跡が存在し、『甲斐国志』によれば、武田家臣である長坂光堅の屋敷であったとされています。また、大八田には深草館や大和田氏館跡が所在しています。

近世

近世には巨摩郡逸見筋に属しました。初期には全村が旗本領であり、屋代越中、三枝土佐守、真田隠岐などが領主でした。その後、諸村落が成立し、1704年には全村が甲府藩領となり、1724年には甲斐一国が幕府直轄領となったため、甲府代官の支配を受けることになりました。幕末には、一橋家や清水家などの御三卿領も存在しました。

当時の生業は稲作と畑作が中心でしたが、町域には高低差があるため、北部ほど畑作への依存度が高く、南部ほど水田が広がっていました。新田開発が進むにつれて、湧水地からの用水路が整備され、それに伴い水論も発生しました。また、甲州街道沿いでは駄賃稼ぎも行われていました。1836年に甲斐一国規模で発生した天保騒動では、一揆勢が甲信国境に向けて進撃し、町域も被害を受けました。

近現代

1874年、大小切税法廃止後の反対一揆（大小切騒動）の後に赴任した県知事藤村紫朗は、税負担軽減のために殖産興業政策を展開しました。その一環として、旧士族などの移住者を募り、原野であった日野原を開拓しました。この開拓は県権参事の富岡敬明が指揮しました。

明治時代には、養蚕指導者を招いて桑栽培や養蚕技術を普及させるために日野原養蚕飼育場が設置されましたが、成功には至りませんでした。その後、ブドウや茶の栽培も試みられましたが、普及しませんでした。開拓団の入植はその後も行われましたが、離農する者が多く、近年では八ヶ岳山麓の自然資源を活かした観光産業に移行しています。

1923年8月には、堀内柳南らによって夏季大学が開催され、芥川龍之介などの著名人が大八田の清光寺に招かれて講義を行いました。

合併とその後

1955年1月20日、北[[巨摩郡]]秋田村、清春村、日野春村が合併して長坂町が発足しました。同年3月30日には小泉村を編入し、7月1日には大字片颪が鳳来村、菅原村、駒城村の一部と合併して白州町となりました。そして、2004年11月1日に須玉町、白州町、高根町、大泉村、武川村、明野村と合併し、北杜市となり、長坂町は廃止されました。

教育

長坂町には、組合立甲陵高等学校、山梨県立北杜高等学校、組合立甲陵中学校、長坂町立長坂中学校、長坂町立秋田小学校、長坂町立小泉小学校、長坂町立長坂小学校、長坂町立日野春小学校がありました。

交通

鉄道

中央本線：日野春駅、長坂駅
小海線：甲斐小泉駅

道路

高速道路：中央自動車道（長坂インターチェンジ、八ヶ岳パーキングエリア）
都道府県道：山梨県道17号茅野小淵沢韮崎線、山梨県道32号長坂高根線、山梨県道608号長坂小淵沢線、山梨県道609号小荒間長坂停車場線

娯楽

かつて町内には、長坂映画劇場（1951年～1960年代）と峡映館（～1960年代）という映画館がありました。

名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事

穂見諏訪十五所神社
三分一湧水、女取湧水（名水百選）
オオムラサキセンター
みどり湖
清春芸術村
清春 旅と空想の美術館
アフリカンアートミュージアム
平山郁夫シルクロード美術館
八ヶ岳リードオルガン美術館
八ヶ岳泰雲書道美術館
日野原アルプ美術館

出身有名人

小沢幸民：秋田村出身の明治期の自由民権運動家
堀内柳南：教育者・俳人
吉良知彦：ロックユニット・ZABADAKメンバー（4歳まで居住）

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