書簡 (新約聖書)

書簡

書簡とは、キリスト教の新約聖書に含まれる使徒（イエス・キリストの弟子）が作成した手紙形式の文書を指します。この書簡は、信者に対する教えや励まし、指導を目的としており、全体で21通が存在します。その中で、使徒パウロが著したとされる14通は「パウロ書簡」として特に注目されており、残りの7通は「公同書簡」として分類されます。パウロ書簡には、「テモテへの手紙」（一・二）と「テトスへの手紙」も含まれ、これらは「牧会書簡」として扱われています。

古代の書簡の伝統

古代エジプト、ギリシャ、ローマにおいて、書簡は他者に考えや教義を伝えるための方法として広く用いられていました。新約聖書における書簡も、この古典的な慣習を引き継いでいます。書簡は主に、導入部と本文から構成され、導入部では簡単な挨拶と宛て名が示されます。また、著者が自らの状況や相手について触れることもあります。本文には、著者の主張や提言が展開されており、信仰の実践に対する具体的な指針を示しています。

新約聖書における書簡の掲載順

新約聖書の書簡は、特定の順序で配置されています。以下にその順序を示します（新共同訳聖書の名称を使用）：
1. ローマの信徒への手紙
2. コリントの信徒への手紙一
3. コリントの信徒への手紙二
4. ガラテヤの信徒への手紙
5. エフェソの信徒への手紙
6. フィリピの信徒への手紙
7. コロサイの信徒への手紙
8. テサロニケの信徒への手紙一
9. テサロニケの信徒への手紙二
10. テモテへの手紙一
11. テモテへの手紙二
12. テトスへの手紙
13. フィレモンへの手紙
14. ヘブライ人への手紙
15. ヤコブの手紙
16. ペトロの手紙一
17. ペトロの手紙二
18. ヨハネの手紙一
19. ヨハネの手紙二
20. ヨハネの手紙三
21. ユダの手紙

外典書簡と教父の書簡

新約聖書の正典に含まれない外典書簡も存在し、『コリントの信徒への手紙三』や『ラオディキアの信徒への手紙』などがその例です。また、新約聖書と直接的な関連はないものの、使徒教父によって書かれた手紙も伝えられています。特に、聖イグナティオスの『トラレスの信徒への手紙』が有名です。

中世の書簡の重要性

中世ヨーロッパでは、手紙の作成が盛んに行われました。神学者たちの書簡は特に評価され、現在まで伝わっています。これらの手紙は、当時の教義や信仰の理解を深める上で重要な資料となっています。

礼拝における書簡の使用

新約聖書の書簡は、キリスト教の礼拝の中で重要な役割を果たします。西方教会、例えばカトリック教会やプロテスタントでは、ミサや聖餐式で書簡が朗読されることが一般的です。通常、旧約聖書の後に朗読され、信者へのメッセージが強調されます。一方で、東方教会では福音書が優先され、書簡の朗読は行われないこともあります。

このように、書簡はキリスト教における教えや信仰の形成に深く関与しており、歴史を通じてその重要性は増しています。

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