李洪

李洪（り こう）

李洪（生没年不詳）は、五胡十六国時代の前燕に仕えた人物。漢民族であり、渤海郡蓨県を本貫とする渤海李氏の出身だが、自身は平陽郡で生まれた。西晋の東夷校尉であった李臻は祖父にあたり、弟に李普がいる。

生涯

310年12月、李洪は流民を率いて潁川郡定陵県に移住。その勢力は急速に拡大し、数千人を擁するに至った。その後、舞陽に拠点を移し、そこに砦を築いた。

311年から314年頃、幽州で勢力を誇っていた王浚が独断で官位を授与するようになると、李洪は雍州刺史に任命された。

その後、李洪は遼東・遼西地方を支配していた鮮卑慕容部の大人、慕容皝に帰順した。

337年9月、慕容皝が文武百官を編成した際、李洪は大理に任じられ、後に右司馬に昇進した。

338年5月、後趙の天王石虎が数十万の大軍を派遣して前燕に侵攻を開始。これに対し、前燕の郡県の多くが後趙に寝返り、その数は36城に及んだ。

後趙軍が前燕の本拠地である棘城に迫ると、李洪の弟である李普は、棘城の陥落は避けられないと考え、李洪に城を脱出して難を避けるよう進言した。しかし、李洪は「天道は測り難く、人事もまた予測できない。任を委ねられている身として軽率な行動を取れば、必ず後悔するだろう」と反対した。それでも李普は幾度も説得を試みたが、李洪は「お前は好きにするがよい。私は慕容氏から多大な恩を受けている身であり、ここを去ることは義に反する。ここで死ぬのみだ」と言い、涙を流して李普と別れた。李普はその後、後趙に降伏し、後趙軍が前燕から撤退する際に従って南下したが、その後の争乱に巻き込まれて命を落としたという。この一件により、李洪は忠義に篤い人物として名を馳せることになった。

後に典書令に任じられた。

341年7月、再び右司馬に任じられ、やがて内史に昇進した。

350年3月、燕王慕容儁が魯口を守る鄧恒を攻撃した際、清梁まで進軍したところで、鄧恒配下の将軍鹿勃早が数千の兵を率いて夜襲を仕掛けた。慕容儁はこれに動揺し、陣営から避難したが、李洪は慕容儁を護衛し、安全な場所へと避難させた。折衝将軍の慕輿根が精鋭数百人を率いて鹿勃早を迎え撃つと、李洪もまた騎兵隊を率いて加勢し、鹿勃早を打ち破った。李洪らは40里以上にわたって追撃を行い、鹿勃早は辛うじて逃走し、数千の兵を失った。

360年1月、慕容暐が即位すると、龍驤将軍に任じられた。

364年2月、太傅の慕容評と共に河南へ侵攻した。

同年4月、許昌・汝南へ侵攻し、東晋軍を幾度も破った。懸瓠を守る潁川郡太守の李福を討ち取り、汝南郡太守の朱斌を寿春へ敗走させ、陳郡太守の朱輔を彭城へ退却させた。東晋の大司馬桓温は、西中郎将の袁真を派遣して李洪を防がせ、自らもまた水軍を率いて合肥まで進出した。李洪は許昌・汝南・陳郡を攻略し、1万戸余りの住民を幽州・冀州に移住させた。

光禄大夫に任じられた。

367年12月、司空に任じられた。

370年12月、前燕が滅亡すると、李洪は慕容暐らと共に長安に移送された。到着後、前秦の天王苻堅より駙馬都尉に任じられ、春季・秋季には朝見することを許された。

その後、亡くなった。

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