李譔

李 譔（り せん）

李 譔（り せん、生没年不詳）は、中国三国時代の蜀漢に仕えた学者・政治家。字は欽仲（きんちゅう）。益州梓潼郡涪県（えきしゅうしとうぐんふけん）の出身。

生涯

父の李仁（りじん）は、かつて尹黙（いんもく）と共に荊州（けいしゅう）へ留学し、司馬徽（しばき）や宋忠（そうちゅう）に師事した。李譔は父から学問を受け継ぎ、さらに尹黙にも師事して、字義の解釈に留まらない学問の道理を深く学んだ。その学問は幅広く、五経・諸子百家の書に加え、算術・占術・医学、さらには弩（いしゆみ）やばね仕掛けといった実学にも及んだ。

蜀漢に仕官後は、州の書佐（しょさ）や尚書令史（しょうしょれいし）を歴任した。

延熙（えんき）元年（238年）、劉禅（りゅうぜん）の長男である劉璿（りゅうせん）が皇太子に立てられると、李譔は太子庶子（たいししょし）に任じられ、その後、太子僕（たいしぼく）へと昇進した。太子劉璿に近侍し、寵愛を受けたが、軽薄な性格でふざけることを好んだため、世間からは重んじられることは少なかった。

『易』、『尚書』、『毛詩』、『三礼』、『左氏伝』、『太玄指帰』といった古典に関する著述を多く残した。その内容は、賈逵（かき）や馬融（ばゆう）の説に準拠するもので、鄭玄（じょうげん）の説とは異なっていた。遠く離れた魏の王粛（おうしゅく）の著述を目にする機会はなかったものの、その考え方や結論の多くは一致していたという。

景耀（けいよう）年間（258年 - 263年）に没した。

陳寿（ちんじゅ）は、李譔について「許慈（きょじ）・孟光（もうこう）・来敏（らいびん）と並んで、徳行での評判は芳しくなかったが、博学多才な一代の学者であった」と評している。

人物評

李譔は、学問に対する探求心が非常に強く、古典から実学まで幅広い分野に通じていた。しかし、その軽薄な性格が災いし、世間からは真面目な学者として評価されなかった。太子の側近として寵愛を受けたものの、政治的な手腕を発揮する機会は少なく、学者としての業績が主な評価対象となっている。

参考文献

* 『正史 三国志 5 蜀書』（陳寿 著、裴松之 注、井波律子 訳）ちくま学芸文庫 ISBN 4-480-08045-7

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