李鍾賛 (1916年生)

李鍾賛（イ・ジョンチャン）

李鍾賛（イ・ジョンチャン、이종찬、1916年3月10日 - 1983年2月10日）は、大韓民国の軍人、政治家です。慶州李氏の家系に生まれ、本籍はソウルにあります。彼は、その生涯を通じて軍の政治的中立を強く主張し、「真の軍人」として高く評価されています。

生涯

日本軍時代

1916年、李鍾賛は京城府（現在のソウル）で生まれました。しかし、韓国民族文化大百科事典によると、出生地は慶尚南道昌原郡であり、京城で育ったとされています。彼は朝鮮貴族の家柄でしたが、爵位を辞退し、話題となりました。京城師範学校付属初等学校、京城中学校を経て、1933年に陸軍士官学校（49期）に入学しました。同期には蔡秉徳がいました。李は工兵科を選び、蔡は重砲兵科に進みました。これは、当時の陸軍士官学校出身者の多くが歩兵科であったため、将来的に韓国軍で技術兵科の人材が不足すると考えたためでした。

1937年、陸軍士官学校を卒業後、見習士官として第3師団工兵隊に配属され、その後、陸軍工兵少尉に任官しました。支那事変（日中戦争）が勃発すると、上海戦線に派遣されました。その後、工兵中尉、大尉と昇進し、1942年には金鵄勲章を受章しました。船舶工兵に転科し、南方戦線を転戦。独立工兵第15連隊に所属し、東部ニューギニアのポートモレスビー作戦などに参加しました。戦況の悪化によりニューギニア西部へ撤退し、終戦まで南太平洋各地を転々としました。

1946年、終戦後、朝鮮出身者で構成された部隊のリーダーとなり、アメリカ軍の引き揚げ船で帰国しました。

韓国軍時代

帰国後はしばらく隠居生活を送っていましたが、1948年に李始榮副大統領の勧めで韓国陸軍に入隊しました。大佐に任官し、国防部第1局長、政訓局長、兵器行政本部長などを歴任しました。1950年、朝鮮戦争開戦時には首都警備司令官を務めましたが、部隊の移動や配属により指揮下の部隊が不足する状況に直面しました。

ソウル陥落後、混成首都師団長として漢江線の防御にあたりましたが、北朝鮮軍の渡河により戦線が崩壊。その後、第9師団の新編に取り組み、第3師団長として兄山江での戦闘を指揮しました。この際、陸軍本部から准将への昇進を打診されましたが、李はこれを辞退。国軍の現状を憂い、進級よりも国民への謝罪が先だと主張しました。最終的には、丁一権参謀総長の説得により准将に昇進しました。

その後、国防部兵器行政本部長、陸軍綜合学校校長を経て、1951年に陸軍参謀総長に就任。国民防衛軍事件などの混乱収拾に尽力しました。1952年、李承晩大統領が憲法改正を強行しようとした際、戒厳令の宣布には応じたものの、軍の政治介入を拒否し、大統領の怒りを買いました。

参謀総長辞任後、アメリカ陸軍指揮幕僚大学に留学し、帰国後、陸軍大学総長を務めました。1960年には国防部長官に就任し、軍を掌握して民政移譲に尽力しました。

その後

1961年、朴正煕による5・16軍事クーデターには協力を拒否し、その後、駐イタリア大使を務めました。1976年には国会議員に当選しましたが、国会にはほとんど出席せず、辞表を提出し続けました。

1983年、心臓発作で死去。陸軍葬で葬儀が行われました。

人物像

李鍾賛は、自身の原則を貫く軍人であり、謹直で不正を嫌う人物でした。趣味はゴルフと登山で、敬虔な仏教徒でもありました。日本の陸軍士官学校に在籍した多くの朝鮮人将校が日本名に改名する中、李は最後まで本名を守り通しました。南方戦線では、部下に対して公平で、苦難を分かち合う高潔な上官であったと伝えられています。また、自身の信念を曲げない強固な意志を持ち、軍の政治的介入を強く拒否しました。

金錫源は李鍾賛を「豊富な実戦経験と卓越した指揮能力を持つ人格者」と評し、釜山政治波動における李の行動に感銘を受けたと述べています。一方、米軍事顧問からは、政治的背景を持ち、米軍に協力的でないと評価された側面もありました。

親日反民族行為

2008年、民族問題研究所と親日人名辞典編纂委員会が発表した親日人名辞典収録対象者軍部門に記載されました。2009年には親日反民族行為真相糾明委員会によって、日本軍将校として侵略戦争に協力したこと、勲章を受章したことが親日反民族行為に該当すると決定されました。

勲章

乙支武功勲章
保国勲章統一章
レジオン・オブ・メリット (1951年)
勲六等瑞宝章 (1941年)
* 功五級金鵄勲章 (1942年)

李鍾賛の生涯は、激動の時代における軍人のあり方を問い続け、その行動は多くの議論を呼んでいます。

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