束 (単位)

束（そく/つか/たば）とは

「束」という単位は、日本語において複数の意味を持つ言葉です。大きく分けて、容積、計数、長さの単位として使われてきました。この記事では、それぞれの意味と歴史的背景について詳しく解説します。

容積の単位としての「束（そく/つか）」

穎稲の単位

古代日本において、「束（そく/つか）」は主に穎稲（えいとう：稲の穂）の収穫量を測るための容積単位として用いられました。具体的には、1束は10把（わ）とされ、この1束は「成斤1束」として、1代（刈り）から収穫される稲の量を示していました。1代は5歩に相当し、成斤1束は穀米（籾米）1斗、または舂米5升に換算されました。

しかし、実際には、初期の「束」は両手の親指と中指で掴む量を1把（束の1/10）とする、大まかな目分量でした。唐の度量衡が導入された640年以降、土地面積と収穫量の関係がより正確に計測されるようになり、不安定だった1代（刈）は町段歩制に組み込まれ、「束」も固定化されていきました。この際、目分量に近い数量が基準として採用されたと考えられています。

律令制下の「束」

律令制下では、1段が250歩から360歩に改められましたが、1代＝5歩から1束という原則は変わりませんでした。そのため、結果的に1束あたりの穎稲の量は減少しました。この360歩の下での「束」は「不成斤の1束」とも呼ばれました。

田令では、1段あたり2束2把（町単位では22束）の租を徴収する規定がありましたが、これは「不成斤の1束」に基づいていました。しかし、706年には「成斤1束5把」に改められました。実際の地方行政では、徴税には穀米納付が多かったため、斗升単位で計量されることが一般的でしたが、穎稲の形で保存されていた稲を貸し出す出挙の場合には、束把単位での計量が行われました。

律令制衰退後の「束」

律令制の衰退後、「束」、「把」、「代」、「刈」は再び目分量に基づく慣習に戻り、「束」は「1束の稲が採れる土地」という意味で、面積単位としても用いられるようになりました。

計数単位としての「束（そく/たば）」

「束（そく/たば）」は、同一の物をまとめた場合の計数単位としても使われます。現代では、束を構成する個数や重量、容量は必ずしも一定ではありませんが、古くから使われていた「束」には、数量が定められているものが多くあります。例えば、和紙は10帖（200枚）を1束と呼び、釣りでは魚100匹を1束と称しました。

長さの単位としての「束（そく/つか）」

「束（そく/つか）」は、矢などの長さを表す単位としても使われました。指1本分の幅を1伏（ふせ）と呼び、4伏を1束としました。これは、親指を除いた指4本分が一握りに相当することに基づいています。そのため、古事記や日本書紀には「拳」「握」「掬」などの表記が用いられている例があります。平均的な矢の長さは尺貫法でおよそ3尺（12束＝48伏）とされ、1束は2寸5分に相当しました。日置流の目録では、1束＝2寸5分は、十束剣が2尺5寸という神代の基準に由来するとされています。

まとめ

「束」という言葉は、古代から様々なものを量るために使われてきた多義的な単位です。その用法は時代とともに変化し、現代でもその名残を見ることができます。容積、計数、長さといった異なる意味を持つ「束」を理解することで、古代の文化や生活様式をより深く知ることができるでしょう。

もう一度検索