東京仏学校

東京仏学校とは

東京仏学校は、1886年（明治19年）にフランス学（仏蘭西学）と法律学を専門とする高等教育機関として設立されました。この学校は、現在の法政大学の前身の一つであり、その設立と運営には、仏学会（La Société de Langue Française）が深く関わっていました。

本稿では、東京仏学校の設立から、その後の和仏法律学校への合併、そして仏学会が日仏協会へと発展する過程について詳しく解説します。

仏学会の創立

1886年（明治19年）4月、「一ノ完全ナル仏学校ヲ東京ニ設立」する目的で、仏学会の創立が計画されました。この計画を主導したのは、以下の7名です。

辻新次（初代文部次官）
古市公威（帝国大学工科大学初代学長）
長田銈太郎（内務省参事官、明治天皇の通訳）
山崎直胤（内務省初代県治局長）
平山成信（大蔵大臣秘書官、後に枢密顧問官）
寺内正毅（陸軍大臣秘書官、陸軍中将、後に第18代内閣総理大臣）
* 栗塚省吾（司法大臣秘書官、後に大審院部長判事）

同年5月、創立会員の集会が東京九段下の玉川堂で開催され、辻新次が会長に選出されました。9月には、仏学会の創立総会が開催され、仏学会の会則と東京仏学校の校則の草案が議決されました。10月には東京府知事宛に私立学校設立願が提出され、同月23日に認可を得ました。

東京仏学校の設立に際し、神田区小川町にあった東京法学校の建物を借りることになりました。この建物は、レンガ造りの平屋で、東京法学校の向かい側に位置していました。

1889年（明治22年）7月には、伏見宮貞愛親王が名誉総裁に推戴され、1892年（明治25年）12月には、閑院宮載仁親王が総裁に推戴されました。この際、会長であった辻新次は理事員長に選嘱されました。

東京仏学校の開校

東京仏学校は、1886年（明治19年）11月16日に神田区小川町一番地（現在の東京都千代田区神田小川町2丁目）に開校しました。

開校当初は正式な校長を置かず、校長心得として古市公威が就任しました。設置された学科は、普通科（2年課程）、補修科（2年課程）、専門学校予備科の3学科でした。

授業内容は、フランス語の読法、訳読、書き取り、会話、文法、習字、作文による和文仏訳、仏文和訳など多岐にわたり、地理、歴史、漢文、数学、物理、化学などの副科も設けられました。

1887年（明治20年）4月、司法省からの要請を受け、法律科（3年制）が設置されました。法律科では、ボアソナードやアッペールらが教鞭を執りました。1888年（明治21年）には、特別認可学校として文部大臣より認可され、法律科の卒業生は文官高等試験や判事検事登用試験の受験資格を得ることが可能となりました。

1888年（明治21年）9月には、補修科を廃止し、普通科と法律科の2科体制となりました。法律科には、司法省法律顧問のアッペールや帝国大学法科大学教授の富井政章、さらに司法省法学校の卒業生らが講師として迎えられました。

東京法学校との合併から和仏法律学校へ

1888年（明治21年）12月、東京仏学校は東京法学校との合併を議決し、1889年（明治22年）5月に両校合併が最終的に決定しました。新設学校の名称は「和仏法律学校」とされ、仏語科、仏語法律科、邦語法律科の3学科が設置されました。同年9月9日、文部大臣によって合併と和仏法律学校への改称が認可されました。

1890年（明治23年）6月、和仏法律学校の新校舎が麹町区富士見六丁目に完成し、同年7月には仏学会も同校舎に移転しました。この際、東京仏学校の卒業証書授与式も同時に行われました。

仏学会から日仏協会へ

1908年（明治41年）9月、仏学会は活動目的を学術から社交や経済に拡張し、「日仏協会」と改称することが決定されました。日仏協会の初代総裁には、仏学会総裁であった閑院宮載仁親王が選ばれました。1909年（明治42年）4月、仏学会は正式に日仏協会としてスタートし、仏学会の財産も同協会に引き継がれました。

関係者

仏学会の歴代会長・総裁・名誉総裁には、辻新次、閑院宮載仁親王、伏見宮貞愛親王、小松宮依仁親王などが名を連ねています。また、名誉会員には、伏見宮邦芳王、徳川昭武、徳川篤敬、蜂須賀茂韶、鍋島直大、太田資美、田中不二麿、村上英俊、山田顕義、大木喬任、ボアソナード、アッペールらがいました。

創立会員には、青木周蔵、赤松則良、安達峰一郎、池田正介、井上操、梅謙次郎、大島誠治、大鳥圭介、大山綱介、沖野忠雄、桂太郎、川上操六、河津祐之、岸本辰雄、児玉源太郎、薩埵正邦、佐野延勝、杉村虎一などが名を連ねています。

東京仏学校の校長は、校長心得として古市公威、校長として大島誠治が務めました。商議員には、蜂須賀茂韶、大鳥圭介、箕作麟祥、名村泰蔵、河津祐之らがいました。

法律科の主な教員には、アッペール、富井政章、大島誠治、亀山貞義、岩野新平、木下哲三郎、木下広次などがいます。また、普通科の主な教員も存在しましたが、詳細な情報は不明です。

校地の変遷と継承

東京仏学校の校舎は、開校当初は神田区小川町にありましたが、学生の増加により一時的に神田区柳原河岸に移転しました。その後、東京法学校との合併に伴い、麹町区富士見町に新校舎が建設され、移転しました。

この東京仏学校の歴史は、法政大学のルーツを理解する上で非常に重要な要素となっています。

もう一度検索