東条琴台

東条琴台（とうじょう きんだい）：激動の時代を生きた儒学者

東条琴台（1795年 - 1878年）は、江戸時代後期から明治時代にかけての儒学者です。本名は信耕、字は子臧。文左衛門、源右衛門と名乗り、無得斎、呑海堂、掃葉山房などの別号を用いていました。多彩な学問的背景を持ち、越後高田藩に仕え、明治維新後は神官を務めるなど、激動の時代を多角的に生きた人物です。

生涯

江戸時代

琴台は寛政7年（1795年）に江戸で生まれました。幼少より父から四書五経を学び、伊東藍田、倉成竜渚、尾藤二洲、山本北山、大田錦城、亀田鵬斎といった当時の著名な学者に師事し、多様な学派に触れました。

文化14年（1817年）、23歳の時に大田錦城の紹介で美濃岩村藩士・平尾信従の婿養子となりますが、異学を禁じる風潮の中で、琴台の折衷学が平尾家の憂慮を招き、文政2年（1819年）に離縁しました。その後、朱子学を学ぶため昌平坂学問所に入門し、文政10年（1827年）には越後高田藩に登用され、幕府の賄方小吏も兼務しました。

天保3年（1832年）には、柳橋の酒楼で大規模な書画会を催したことが林家の反感を買い破門されるも、湯島の酒楼で除名会を開くなど、型破りな一面も持ち合わせていました。

高田時代

嘉永3年（1850年）、海防論を唱えた『伊豆七島図考』が幕府に咎められ、高田藩邸に幽閉されます。翌年解除後、榊原政愛の命で高田城下に移り住み、文久年間には松代や高岡へ旅に出ました。慶応2年（1866年）には、高田藩校・修道館の教官筆頭に就任し、慶応3年（1867年）には会津藩の情勢偵察を命じられるなど、藩政にも深く関わりました。

東京時代

明治元年（1868年）、新政府からの召命を受け東京へ移り、大学で書を講じました。明治2年（1869年）に再び上京し、明治3年（1870年）には宣教使に出仕、宣教少博士に任じられますが、攘夷論を唱える国学者らと対立しました。明治4年（1871年）には、前年に刊行した『聖世紹胤録』が不適切として発禁処分を受けました。

明治5年（1872年）、神祇省の廃止に伴い宣教使を辞し、亀戸天神社の祠官、権中講義を歴任しました。明治7年（1874年）には教部省に出仕しますが、眼病を患い、明治8年（1875年）に辞職、失明しました。明治11年（1878年）に浅草で亡くなり、谷中天眼寺に葬られました。昭和3年（1928年）には従五位が追贈されています。

人物像

琴台は6尺（約1.8m）の長身で赤ら顔、耳を引っ張る癖がありました。松ぼっくりや落ち葉を拾い集めて燃料とするなど、質素な生活を送り、酒は少量を嗜み、書物の手入れを自ら行うなど、几帳面な性格でした。高田では荷車の普及に貢献し、掛け声を教えるなど、地域社会にも貢献しました。

著書

『先哲叢談後編』
『先哲叢談続編』
『幼学詩韻』
『近代著述目録後編』
『新編幼学詩韻』
『新定詩語砕金』
『続聯珠詩格』
『伊豆七島図考』
『清二京十八省輿地全図』
『聖世紹胤録』
『尺牘新裁』
『小学必読 女三字経』
『頭書類語 作文訓蒙』
『補饑新書』

東条家について

東条家は清和源氏武田氏支流の甲斐一条氏を祖とし、一条時信の子・武川太郎義行が甲斐国東条に土着したのが始まりとされています。連なる系譜の中には、戦国時代の武将や江戸時代の学者などが名を連ねています。


東条琴台は、学問、教育、そして社会貢献を通じて、その生涯を豊かに彩りました。彼の業績は、今もなお、私たちに多くの示唆を与えてくれます。

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