椙杜氏

椙杜氏（すぎもりし）

椙杜氏（すぎもりし、すぎもりうじ）は、日本の氏族です。周防国（現在の山口県）を本拠とする椙杜氏が特に著名です。古文書においては、「すぎ」の字を「椙」「杉」、「もり」の字を「杜」「森」と表記しており、「椙杜」以外にも「杉森」など、両方の字が使われていました。

各地の椙杜氏

周防椙杜氏: 周防国玖珂郡を本拠とする一族。
石見椙杜氏: 石見国（現在の島根県）を本拠とする一族。周防椙森氏と同族です。
* 豊前椙杜氏: 豊前国（現在の大分県北部と福岡県の一部）を本拠とする一族。周防椙森氏と同族です。

周防椙森氏の歴史

発祥

椙杜氏は、大江広元と同様に朝臣でしたが、鎌倉幕府に仕え、問注所の初代執事となった三善康信を祖としています。鎌倉時代中期、三善康連は備後国（現在の広島県東部）世羅郡太田庄を領して太田氏を称しました。建武の新政の後、太田時直は足利尊氏に従って活動し、祖父の太田貞連から周防国玖珂郡椙杜郷の地頭職を譲られました。

大内氏の被官として

太田時直の孫である太田正康は、南北朝時代に南朝勢力の強い九州を平定するため、筑後国（現在の福岡県の一部）に所領を得て西国に下向し、その後椙杜郷に移り、椙杜を名字としました。そして、周防の大名である大内氏の被官となりました。椙杜正康の子、椙杜弘康は、1467年（応仁元年）の応仁の乱では大内政弘に従って上洛しています。弘康は養子に椙杜房康を迎えました。その子である隆康の時代、1551年（天文20年）に大内義隆が家臣の陶隆房の謀反によって殺害されるという事態（大寧寺の変）が起こりました。

毛利氏の家臣へ

大寧寺の変後も大内氏に仕えましたが、1556年（弘治2年）から始まった毛利元就による防長経略の際、椙杜氏は毛利氏に帰順しました。そして居城である蓮華山城に隣接する、杉隆泰の鞍掛山城を毛利軍と共に攻撃し、隆泰を討ち取りました。

椙杜隆康には実子がなかったため、毛利元就の五男である毛利元秋を養子としましたが、元秋は月山富田城の城主となり、養子縁組は解消されました。代わりに元秋の弟である毛利元康（末次元康）を養子としましたが、1585年（天正13年）に元康が元秋の死後、月山富田城に入ったため、再び養子縁組は解消されるに至りました。その後、隆康は毛利氏の庶家である志道氏から志道元保の次男、志道元縁を養子に迎えました。

元縁は長門国（現在の山口県）勝山城の在番に任ぜられましたが、1600年（慶長5年）の関ヶ原の戦いの後、長府藩を興した毛利秀元の家臣となり、筆頭家老となりました。

江戸時代の椙杜氏と家名断絶

椙杜元縁の死後、杉杜元周、杉杜広中、杉杜広品、椙杜元世と続き、長府藩家老として権力の中枢にありましたが、1710年（宝永7年）の浮石義民事件によって処罰され、減封されました。1713年（正徳3年）には、筆頭家老の座を細川宮内に譲りました。

1718年（享保3年）に長府藩5代藩主である毛利元矩が15歳で夭折したため、長府藩は家名断絶となり、領地は萩藩に還付されることが検討されるという一大事となりました。しかし、毛利本家は清末藩主である毛利元平に家督を継がせ、長府藩の存続を幕府に願い出て、許されました。元平は毛利匡広と名乗り、長府藩の6代藩主となりました。

そのため清末藩出身者が長府藩でも幅をきかせるようになり、藩内では対立が激化しました。1720年（享保5年）春、椙杜元岑（元世より改名）と、同じく家老の時田元遠は、藩主・毛利匡広に願い出て、家禄を返上して長府を去りました。

椙杜元岑は妻の実家である豊前国宇佐郡に移り住み、その後分家のある長門国深川に住みました。嫡男の椙杜元位をそこに残し、自身は備後国三原に移り住んで、名を三原正白と変えました。1722年（享保7年）には備中国笠岡の智光寺に身を寄せ、1727年（享保12年）に死去しました。嫡子の椙杜元位も1730年（享保15年）に死去し、椙杜氏の本流は断絶しました。

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