正親町三条実音

正親町三条実音（おおぎまちさんじょう さねとし）は、南北朝時代に生きた公卿です。内大臣を務めた正親町三条公秀を父に持ち、母は従三位非参議藤原家相の娘という家柄でした。最終的な官位は従一位・准大臣にまで昇りました。

生涯

以下に、『公卿補任』と『尊卑分脈』に基づいた実音の経歴をまとめます。

正中2年（1325年）：叙爵。
嘉暦4年（1329年）：従五位上に昇叙。
元徳2年（1330年）：正五位下に昇叙。
建武4年（1337年）：侍従に任ぜられる。
暦応2年（1339年）：従四位下に昇叙。
暦応4年（1341年）：左少将に任ぜられる。
暦応5年（1342年）：従四位上に昇叙。遠江権介を兼任。右少将に転任。
康永2年（1343年）：右中将に昇進。
康永3年（1344年）：正四位下に昇叙。
貞和2年（1346年）：遠江権介を止める。
観応元年（1350年）：従三位に叙され、右兵衛督に任ぜられる。参議に任ぜられる。
文和3年（1354年）：備中権守を兼任。右兵衛督を辞任。右中将を兼任。
文和4年（1355年）：権中納言に昇進。
延文4年（1359年）：正三位に昇叙。
延文5年（1360年）：従二位に昇叙。母の喪に服す。
康安元年（1361年）：復任。
貞治2年（1363年）：権大納言に昇進。
貞治3年（1364年）：正二位に昇叙。
応安3年（1370年）：大宰権帥を兼任。
応安7年（1374年）：権大納言を辞任。大宰権帥は留任。
永和元年（1375年）：本座を許される。
永徳元年（1381年）：従一位に昇叙。
永徳2年（1382年）：准大臣宣旨。
至徳3年（1386年）：薨去。

実音は、足利幕府の成立という激動の時代に、持明院統に忠義を尽くしたことで知られています。特に、光厳院が河内東条へ移された際に供奉した公卿は実音のみであったという逸話は、彼の忠誠心を象徴するものとして語り継がれています。また、姉が女院となり、兄が内大臣に任ぜられたことも、彼の昇進に影響を与えたと考えられています。

昇叙の背景

鎌倉幕府が崩壊し、政権が不安定な時代において、実音は持明院統への忠義を貫きました。光厳院が河内東条へ移された際、これに付き従った公卿は実音ただ一人だったと伝えられています。姉の秀子が女院となり、兄の実継も父の公秀に続き内大臣に任ぜられたこと、そして実音が兄に次いで従一位に叙せられたことは、彼が持明院統の外戚として遇された結果であると考えられます。

系譜

父：正親町三条公秀（1285-1363）
母：従三位非参議藤原家相娘
妻：不詳
男子：正親町三条公敦（?-1409）、正親町三条公頼
女子：後円融天皇後宮

参考文献

『公卿補任』（新訂増補国史大系）吉川弘文館 黒板勝美、国史大系編集会（編）
『尊卑分脈』（新訂増補国史大系）吉川弘文館 黒板勝美、国史大系編集会（編）
深津睦夫『光厳天皇 をさまらぬ世のため身ぞうれはしき』、ミネルヴァ日本評伝選、ミネルヴァ書房
* 飯倉晴武『地獄を二度も見た天皇 光厳院』、吉川弘文館

正親町三条実音は、激動の時代を生き抜き、その忠誠心と家柄によって異例の昇進を遂げた公卿でした。彼の生涯は、南北朝時代の政治情勢と、公家社会の複雑な人間関係を映し出す鏡と言えるでしょう。

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