武田信豊 (甲斐武田氏)

武田信豊（たけだ のぶとよ）

武田信豊は、戦国時代の武将であり、甲斐武田氏の一門である親族衆の武将です。父は武田信玄の弟である武田信繁で、信豊は信玄の甥、武田勝頼の従兄弟にあたります。

生涯

出生から家督相続

天文18年（1549年）、武田信繁の次男として生まれました。母は不詳ですが、養周院日藤尼という法名をもち、天正10年（1582年）に信豊とともに自害しています。信繁には他に二人の息子がいましたが、長男の信頼は望月氏を継ぎ、次男の信豊が嫡男として扱われました。

永禄元年（1558年）には、信繁から「武田信繁家訓」を授けられています。これは、九十九か条からなる家訓で、武田家の家臣としての心得を説いたものです。

永禄4年（1561年）の第四次川中島の戦いで父・信繁が戦死すると、信豊は家督を継ぎました。この時、信豊は200騎を指揮していたとされています。

信玄期の活動

永禄10年（1567年）には、武田義信が廃嫡された義信事件が起こります。この際、信豊は家臣団の動揺を鎮めるための起請文に署名しています。信豊は信濃諏訪衆を同心としていました。

永禄12年（1569年）には、武田氏の駿河侵攻に参加し、武田勝頼とともに蒲原城を攻略しました。この時、「左馬助」を称しています。元亀3年（1572年）の西上作戦では、高遠城の在番を務めました。この頃の信豊の軍装は、黒揃えであったと伝えられています。

天正元年（1573年）の三河長篠・作手侵攻にも参加しましたが、同年4月には信玄が死去しました。

勝頼の家督相続から長篠合戦期の活動

信豊は、東信濃の小諸城主であったという説が一般的でしたが、近年では小諸領を支配していた証拠となる文書は見つかっていません。長篠の戦いでは、武田軍の中央隊に配置され、織田・徳川勢と戦いました。

長篠の戦い後、春日虎綱（高坂昌信）は武田勝頼に五箇条の意見書を提出し、信豊と穴山信君の切腹を提言したとされています。

甲越同盟と武田信豊

天正4年（1576年）には、足利義昭が織田信長打倒のため、武田、北条、上杉の和睦を求め、信豊は武田側の取次を務めました。

天正6年（1578年）には、上杉謙信の死後に起こった御館の乱において、信豊は武田軍の先陣を務めました。上杉景虎と上杉景勝の和睦を調停しましたが、その間に徳川家康が駿河へ侵攻したため、武田勝頼は軍を撤退しました。

その後、甲相同盟が破綻し、武田氏は上杉氏との同盟を強化しました。信豊はこの同盟の締結にも尽力しました。甲越同盟により、上杉領であった東上野が武田方に割譲されると、信豊は上野国衆の服属に携わりました。また、佐竹氏との同盟にも関与しました。

天正8年（1580年）には、「相模守」を称しています。

天正9年（1581年）には、武田勝頼は穴山信君の嫡男との婚約を破棄し、信豊の子と婚約させました。

同年、徳川家康が高天神城を包囲しましたが、勝頼は援軍を送ることができませんでした。この際、信豊や跡部勝資らは、織田信長との和睦を優先すべきだと主張し、高天神城への援軍派遣に反対しました。

武田家の滅亡と信豊

天正10年（1582年）1月、木曽義昌が織田信長に内通して武田氏に反旗を翻すと、信豊は討伐軍を率いて木曽谷へ出陣しましたが、敗北しました。その後、勝頼の軍と合流し、新府城へ帰還しました。

甲州征伐が始まると、信豊は勝頼と別れて小諸城へ逃れ、再起を図りましたが、下曾根浄喜に裏切られ、自害しました。享年34歳。信豊の首は、勝頼、信勝、仁科盛信の首とともに信長のもとへ送られ、京都で獄門にかけられた後、妙心寺に葬られました。

人物

信豊は、勝頼と親しく、勝頼期の政権を補佐する立場にありました。父の信繁と同じく典厩の通称を持っていました。信豊に関する文書は、発給文書が19点、受給文書が10点、関係文書が12点確認されています。

信豊は武田家の中で重要な役割を担い、その政治手腕と武勇は、当時の人々から高く評価されていたと考えられます。

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