沼川駅

沼川駅（ぬまかわえき）

北海道稚内市にかつて存在した、北海道旅客鉄道（JR北海道）天北線の鉄道駅（廃駅）です。宗谷総合振興局管内、当時の宗谷支庁管内の稚内市大字声問村字沼川に位置していました。電報略号はヌワ、事務管理コードは▲121916です。

駅名の由来は、周辺に沼や川が数多く存在することにちなんで命名されたと伝えられています。

歴史

沼川駅は、1922年（大正11年）11月1日、鉄道省（当時）の宗谷本線が鬼志別駅から稚内駅（現在の南稚内駅）まで延伸された際に、この路線の一般駅として開設されました。開業当初は、稚内方面への宗谷本線全通に伴うものでした。

その後、当駅を含む音威子府駅と稚内駅間の区間は、路線の改称を経験します。1930年（昭和5年）4月1日には、宗谷本線から分離される形で北見線の一部となり、さらに1961年（昭和36年）4月1日には、この区間が天北線と改称されたため、天北線の駅となりました。

1949年（昭和24年）6月1日には、公共企業体である日本国有鉄道（国鉄）へと移管されました。

駅の業務体制も変化していきます。1973年（昭和48年）9月17日には、出札業務や改札業務が外部に委託される業務委託駅となりましたが、列車運行に必要な閉塞扱いを行う運転要員は引き続き配置されていました。

しかし、鉄道貨物輸送や荷物輸送の縮小の流れの中で、当駅での取扱いは廃止されていきます。1982年（昭和57年）6月1日には貨物取扱いが、1984年（昭和59年）2月1日には荷物取扱いがそれぞれ廃止されました。

そして、1986年（昭和61年）11月1日には、列車交換設備が撤去されると共に、閉塞扱いも廃止され、駅としての運転扱いは終了しました。これに伴い業務委託も終了し、駅は完全な無人駅となりました。

国鉄分割民営化に伴い、1987年（昭和62年）4月1日からは北海道旅客鉄道（JR北海道）の駅として運営されました。

最終的に、天北線全体の廃線が決定したことに伴い、1989年（平成元年）5月1日、沼川駅もその歴史に幕を閉じ、廃駅となりました。開業から約66年半の出来事でした。

なお、当駅には1933年（昭和8年）から1964年（昭和39年）にかけて、後述する殖民軌道幌沼線（沼川線）が接続していました。

駅構造

沼川駅は廃止された時点では、単式ホーム1面1線を有する地上駅でした。ホームは線路の東側、南稚内方面に向かって右手に配置されていました。

かつては、相対式ホーム2面2線を持つ列車交換が可能な構造の駅でした。交換設備としての運用が廃止された後も、1983年（昭和58年）頃には使われなくなった外側の線路が側線として残存しており、分岐器も維持されていましたが、機能しないように車止めが設置されていました。また、本線から南稚内方面に分岐し、途中に車止めが置かれた行き止まりの側線も1線存在していました。

駅舎は、無人駅となった後も有人駅時代の木造建築が残されていました。駅舎は構内の東側にあり、ホームの中央部分に接していました。事務室の窓はアルミサッシに改修されていましたが、待合室など他の窓は厳しい冬の寒さをしのぐため、ビニールで覆われるなどの対策が取られていました。1983年頃には簡易委託駅として駅務員が配置されており、その駅務員は植木を好む元漁船長で、駅の敷地横に木を植えるなどしていたというエピソードも残されています。

駅の裏手には、1933年から1964年まで運行されていた殖民軌道幌沼線の停留場が設置され、当駅との乗り換えが可能でした。

駅周辺

駅の周辺には比較的小さな集落が形成されており、一帯は広大な酪農地帯となっています。駅前の道路沿いに民家が点在する一方、駅の裏手は湿地帯が広がっていました。

近隣には、地域の公共サービス拠点として稚内市役所の沼川支所、稚内警察署の沼川駐在所、沼川郵便局、そして北宗谷農業協同組合の沼川支所などがありました。また、教育機関として稚内市立天北小中学校が位置しています。

信仰に関わる施設としては、沼川神社や沼川法華寺、寿徳寺といった寺院が存在しました。駅の近くには声問川や宇流谷川が流れています。

公共交通としては、宗谷バスの曲渕線に「沼川」停留所があり、バスによるアクセスも可能でした。

駅跡

駅の廃止後、旧駅構内は長らく手つかずの状態が続いていました。2001年（平成13年）頃の状況としては、ホームや駅名標、そして解体された駅舎の土台などが、藪の中に朽ちるまま放置されている状態でしたが、これらは後に撤去されました。

その後、駅跡地は整備され、2010年（平成22年）頃には小公園が設けられました。この公園内には、かつて存在した駅の記憶をとどめるため、レプリカの駅名標や、旧駅舎の写真が転写された「旧JR天北線沼川駅舎」と記されたパネルが設置されています。また、公園の裏手には、かつてのホームの一部も現在まで残存しています。

隣の駅

北海道旅客鉄道 天北線（廃止）

曲淵駅 - 沼川駅 - 樺岡駅

簡易軌道幌沼線

沼川駅は、宗谷本線の幌延駅までを結んでいた簡易軌道幌沼線（全通時の路線名）の起点の一つでもありました。この軌道は、沼川停車場と幌延停車場間の34.9kmを結び、軌間は762mm、動力には馬が用いられることも多かった簡易な鉄道施設で、主に沿線地域の農業開発を目的として建設されました。

その歴史は、1920年代後半（大正末期）に下エベコロベツ殖民軌道として幌延側から計画が始まり、1928年（昭和3年）に幌延停車場から北沢停車場間（13.8km）の工事に着工しました。この区間は1929年（昭和4年）12月24日に開業しました。

一方、沼川側からの建設も進められ、1932年（昭和7年）10月には北沢停車場から沼川停車場間の工事が着工されました。そして、1933年（昭和8年）11月には殖民軌道沼川線として沼川停車場から上福永停車場間（14.9km）が開業しました。翌年の1934年（昭和9年）8月には、沼川線上福永停車場から北沢停車場間（6.2km）が延伸開業し、これにより幌延 - 沼川間の全線34.9kmが結ばれました。

1936年（昭和11年）には、それまで別々の名称だった幌延線と沼川線が統合され、線路名が「幌沼線」に改称されました。

しかし、戦後の社会情勢の変化や、沿線での離農による人口減少、施設の老朽化、さらに周辺の道路整備が進んだことにより、その役割は徐々に失われていきました。1948年（昭和23年）には、幌延方に存在する熊越峠付近で軌道が崩落するなどして一部区間が運行不能となり、幌延停車場から北沢停車場間が廃止され、線路名も再び「沼川線」となりました。その後も段階的な廃止が進み、1950年（昭和25年）には北沢停車場から有明停車場間が廃止されました。

そして、1964年（昭和39年）には最後まで残っていた有明停車場から沼川停車場間（13.4km）も廃止され、簡易軌道幌沼線はその全線が廃止となりました。

2011年（平成23年）時点では、この簡易軌道の廃線跡に目立った残存施設は確認されていません。

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