浅原事件

浅原事件（あさはらじけん）

浅原事件は、正応3年3月9日（1290年4月19日）に発生した、伏見天皇暗殺未遂事件です。

事件の概要

正応3年3月9日夜、浅原為頼（浅原八郎為頼）ら武装した3名の武士が、騎馬で御所である二条富小路殿に乱入しました。浅原らは御所内にいた女嬬を捕らえ、天皇の寝所を尋ねました。危険を感じた女嬬は、咄嗟に別の場所を教え、その間に天皇に事の次第が伝えられました。天皇は女装し、三種の神器と皇室伝来の管弦2本（琵琶の玄象・和琴の鈴鹿）を持って春日殿へ、春宮（のちの後伏見天皇）は常盤井殿へと脱出しました。

浅原らは天皇と春宮を探して御所内を彷徨いましたが、御所内の人々は騒ぎに驚き逃げ去った後でした。天皇・春宮の居場所を見つけることができず、そのうちに篝屋の武士が駆け付けたため、浅原らは失敗を悟り自害しました。

事件の背景

首謀者である浅原為頼は、甲斐武田氏または小笠原氏の庶流奈古氏の一族（ともに甲斐源氏系）でした。霜月騒動に連座して所領を奪われたために悪党化し、追捕の対象として指名手配されていました。事件の折に御所内で射た矢には「太政大臣源為頼」と記すなど、事件当時常軌を逸した行動があったとされています。また、共に襲撃し自害した2名は彼の息子（光頼・為継）であったと伝えられています。

為頼が自害した時に用いた鯰尾（なまずお）という太刀は、実は三条家に伝わるものでした。事件当時の所有者が庶流の前参議三条実盛と判明したため、六波羅探題が実盛を拘束しました。伏見天皇と関東申次の西園寺公衡は、実盛が大覚寺統系の公卿であることから、亀山法皇が背後にいると主張しました。しかし、持明院統の治天の君である後深草法皇はこうした主張を退け、また亀山法皇も鎌倉幕府に対して事件には関与していない旨の起請文を送ったことで、幕府はそれ以上の捜査には深入りせず、三条実盛も釈放されました。

事件の記録

浅原為頼の天皇暗殺未遂騒動は、『増鏡』及び『中務内侍日記』に記述されています。

参考文献

細川重男「正応三年天皇暗殺未遂事件」（『日本中世史事典』朝倉書店、2008年） ISBN 978-4-254-53015-5
井上宗雄 全訳注『増鏡 中』講談社〈講談社学術文庫〉、1983年 ISBN 978-4-06-158449-5

関連項目

増鏡 - ウィキソース
浅原氏
両統迭立
押小路烏丸殿 - 二条富小路殿について説明
* 禁闕の変 - 室町時代に御所（土御門東洞院殿）が襲撃された事件。後花園天皇は難を逃れたが、三種の神器のうち2つを奪われた。

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