滑空爆弾

滑空爆弾

滑空爆弾とは、航空機から投下された後、推進機関を持たずに滑空しながら目標に命中する爆弾の一種です。一種の飛行爆弾に分類されます。

概要

滑空爆弾は、ロケットモーターやジェットエンジンなどの推進力を持たず、動翼によって方向を制御し、目標に接近します。誘導装置を備えない通常の爆弾も広義には滑空爆弾に含まれますが、通常は誘導装置を備えたものを指します。近年の精密誘導兵器には、レーザー誘導、衛星誘導、赤外線誘導、テレビジョン誘導など、様々な誘導方式を用いた滑空爆弾が存在します。

歴史

第二次世界大戦中には、ドイツ軍のフリッツXやヘンシェルHs 293などが実戦に投入されました。日本では、無線操縦式のイ号一型甲無線誘導弾やイ号一型乙無線誘導弾、赤外線誘導式のケ号爆弾、音響誘導式のイ号一型丙自動追尾誘導弾などの開発が進められましたが、実用化には至りませんでした。

現代においては、ミサイルよりも安価でありながら精密な誘導が可能な誘導爆弾として、空対地攻撃に広く利用されています。特に、2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻では、ロシア軍が開始後約3年間で5万発以上の滑空爆弾を使用したことが報告されています。

種類

滑空爆弾には、誘導方式によっていくつかの種類があります。

無線誘導: 無線操縦によって着弾まで指令を送り続ける方式です。命中精度は操作手の技量に大きく依存します。
赤外線誘導: 目標から放射される赤外線を検知して誘導する方式です。第二次世界大戦中にケ号爆弾として開発が進められましたが、当時の赤外線探知装置の性能が不十分で実用化には至りませんでした。その後、各国で開発が進められ、撃ち放しが可能で投射後の反転離脱が可能な点がメリットです。しかし、灼熱の砂漠地帯や火山地帯など、赤外線ノイズが多い環境では探知が困難になるというデメリットもあります。
テレビジョン誘導: 滑空爆弾の先端に設置されたテレビカメラから送信される映像を見ながら、操作手が目標へ誘導する方式です。着弾まで常時誘導を続ける必要があります。
レーザー誘導: レーザー光を目標に照射し、その反射を滑空爆弾の先端部のシーカーが捉えて誘導する方式です。霧などの悪天候下ではレーザー光が拡散しやすく、使用が困難になる場合があります。また、着弾まで常時照射を継続する必要があります。
衛星誘導: 予め入力された目標の座標へ、衛星航法によって誘導する方式です。撃ち放しが可能で投射後の反転離脱が可能、天候に左右されにくいなどの利点を持つ反面、目標が固定されたものに限られ、柔軟性に欠けます。

各国の滑空爆弾一覧

アメリカ: GBシリーズ (GB-1など)、AGM-62 ウォールアイ、AGM-154 JSOW、GBU-39、GBU-53/B ストームブレイカー|GBU-53_B ストームブレイカー (小直径爆弾)、JDAM-ER (JDAMに展開式滑空翼を装着)
ロシア: KAB-1500S-E (GLONASS誘導)、K029E (UPAB-1500B-E)、FAB-1500M-54、ドレーリ、UMPK (無誘導爆弾を滑空誘導爆弾にする改造キット)
ドイツ: トルペドグライダー、BV 246、フリッツX、HOPE/HOSBO
フランス: AASM (Hammer)
インド: DRDO Glide Bombs
パキスタン: Hシリーズ (H-2 SOW)、Takbir bomb
中国: 飛騰滑空誘導爆弾 (FT PGB)、雷石滑空誘導爆弾 (LS PGB)

関連項目

UCAV (Unmanned Combat Aerial Vehicle)
徘徊型兵器
誘導爆弾
空対地ミサイル
巡航ミサイル
航空魚雷

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