濡須口の戦い

濡須口の戦い

濡須口の戦いは、後漢末期の中国において、長江と淮河の間に位置する巣湖一帯を巡り、孫権率いる呉軍と曹操率いる魏軍の間で繰り広げられた一連の戦いです。濡須口は、現在の安徽省合肥市に位置し、巣湖から長江へと続く濡須水の河口にあります。孫権にとって、濡須は揚州方面における対曹操勢力の最前線であり、重要な国防拠点でした。一方、曹操にとっては、巣湖の北岸にある合肥攻略の足がかりとなる要衝でした。

第一次戦役（212年 - 213年）

212年10月、曹操は関中の軍閥を破った勢いに乗り、自ら大軍を率いて孫権征討を開始しました。曹操軍は長江西岸の孫権軍陣地を攻撃し、一部を打ち破るも決定的な打撃を与えるには至りませんでした。孫権自身も防衛を指揮し、曹操軍を迎え撃ちました。この戦いでは、董襲が乗る船が突風で転覆し、戦死するという悲劇も起こりました。呂蒙は事前に築いておいた濡須塢を活用し、曹操軍の進軍を阻止しました。膠着状態が続いた後、曹操軍は撤退を余儀なくされました。

第二次戦役（214年 - 215年）

214年、孫権は皖城を攻略。これに対し、曹操は荀攸を軍師に任命し、報復として再び濡須を侵攻しました。しかし、荀攸は出征途中で病死し、華歆が後任となりました。曹操軍は甘寧率いる呉軍の夜襲を受け、混乱に陥りました。その後も攻防は続きましたが、曹操軍は濡須塢を攻略できず、撤退しました。

第三次戦役（216年 - 217年）

216年10月、曹操は再び自ら孫権征討に赴きました。曹操軍は居巣に到着しましたが、疫病が蔓延し、多くの兵士が命を落としました。孫権は呂蒙と蔣欽を指揮官に任命し、濡須の防衛を強化しました。曹操軍は張遼や臧覇らを先鋒に立てて攻撃を仕掛けましたが、呉軍の抵抗に遭い、苦戦しました。また、山越族に反乱を起こさせるなど、政治工作も行いましたが、賀斉や陸遜によって鎮圧されました。徐盛は自軍の蒙衝が曹操軍の陣に漂着するというアクシデントに見舞われながらも、果敢に敵陣に突撃し、曹操軍を混乱に陥れました。呂蒙は強力な弩を配備し、曹操軍を迎え撃ちました。度重なる攻撃と損害の大きさから、曹操は撤退を決意しました。

第四次戦役・三方面攻撃（222年 - 223年）

222年9月、曹丕（曹操の子で魏の初代皇帝）は孫権が人質を差し出さないことを理由に呉討伐を開始しました。曹丕は自ら許昌から出撃し、曹休、張遼、臧覇、曹仁、曹真、夏侯尚、張郃、徐晃らを各方面に派遣しました。これに対し、呉は呂範、朱桓、朱然、孫盛らを各方面に派遣し、魏軍を迎え撃ちました。

洞口の戦い

呂範率いる呉軍は、曹休の攻撃により壊滅的な損害を受けましたが、全琮や徐盛らの活躍により、臧覇を破り、尹魯を討ち取るなど、一部で反撃に成功しました。

江陵の戦い

曹真、夏侯尚らは数万の兵を率いて江陵を攻撃しました。朱然は籠城戦を展開し、魏軍の攻撃を耐え忍びました。諸葛瑾と潘璋が救援に駆けつけましたが、夏侯尚に撃破され、朱然は孤立無援となりました。しかし、朱然は兵を鼓舞し、魏軍の陣地を打ち破るなど、奮戦しました。潘璋は長江の上流で刈り取った葦で筏を作り、火を放って魏軍の浮橋を焼き払おうとしました。董昭の進言により、夏侯尚は撤退し、諸葛瑾は浮橋を攻撃し、魏軍を撤退に追い込みました。朱然は半年以上にわたる籠城戦を耐え抜き、江陵を守り抜きました。

濡須口の戦い

曹仁は朱桓の守る濡須口を攻撃しました。朱桓は兵を分散させようとする曹仁の計略を見抜き、敢えて誘い込む作戦を取りました。曹仁は子の曹泰に濡須城を攻撃させ、常雕に中洲を攻撃させました。朱桓は駱統や厳圭らに命じて常雕軍を撃破し、自らは曹泰を退却させました。常雕は戦死し、王双は捕虜となりました。曹仁軍は大きな損害を出し、撤退しました。この戦いの後、曹仁は病死しました。

戦後

223年3月、疫病の流行もあり、魏軍は総退却しました。劉備は呉との同盟関係を回復させ、呉と蜀が手を結び魏に対抗するという三国時代の基本的な構図が再び成立しました。濡須口の戦いは、魏と呉の勢力争いにおいて、重要な転換点となりました。

もう一度検索