駱統

駱統（らくとう）

駱統（らく とう）は、中国の後漢末期から三国時代の呉にかけて活躍した武将です。字は公緒（こうしょ）。揚州会稽郡烏傷県（現在の浙江省義烏市付近）の出身。

生涯

父の駱俊（らく しゅん）は陳国の宰相を務めていましたが、建安2年（197年）に袁術（えん じゅつ）の侵攻によって、陳愍王（ちんびんおう）劉寵（りゅう ちょう）と共に討たれました。

駱統が8歳の時、生母は孫権に仕えていた華歆（か きん）の側室となりました。その後、華歆が曹操（そうそう）の元へ赴く際、駱統は生母と別れ、父の正室である嫡母と食客たちと共に故郷へ帰りました。生母が見送りましたが、駱統は一度も振り返らなかったといいます。

故郷では飢饉に見舞われましたが、駱統は自身の食事を減らして嫡母や寡婦となっていた姉に尽くしました。

20歳になると、曹操の上奏により会稽太守となっていた孫権（そん けん）に仕官しました。孫権は駱統の行政手腕を試すため、彼を烏程県（うていけん）の長官に任命しました。駱統はそこで優れた行政手腕を発揮し、孫権から功曹（こうそう）に任じられ、騎都尉（きと くい）を授けられました。さらに、孫権の従兄である孫輔（そん ほ）の娘を娶ることを許されるほど信頼されるようになりました。

駱統は数十回にも及ぶ上書を行い、孫権の政策を是正することに尽力し、孫権もその意見を受け入れました。建忠中郎将（けんちゅうちゅうろうしょう）となり、弓兵三千人を率いることになりました。凌統（りょう とう）が亡くなると、その軍勢の指揮を任されました。この頃に伝染病が流行すると、駱統は民衆の疲弊を憂い、上疏を行って孫権を感嘆させました。

黄武元年（222年）、蜀漢（しょくかん）の劉備（りゅう び）が侵攻してきた際には、陸遜（りく そん）に従ってこれを打ち破るという功績を挙げ、偏将軍（へんしょうぐん）に昇進しました。同年、魏（ぎ）の曹丕（そう ひ）が濡須（じゅしゅ）に攻め寄せてきた際には、曹仁（そう じん）が部将の常雕（じょう ちょう）に命じて川の中洲を攻撃しましたが、駱統は厳圭（げん けい）と共にこれを撃退しました。この功績により、新陽亭侯（しんようていこう）に封じられました。

その後、濡須督（じゅしゅとく）として防衛を任されるなど、軍事面でも孫権から厚い信任を受け、重用されました。なお、凌統が亡くなるとその軍勢を受け継ぎました。

黄武7年（228年）、36歳という若さで病死しました。子の駱秀（らく しゅう）は孫休（そん きゅう）に仕えて司塩校尉（しえんこうい）となりましたが、264年7月に海賊によって殺害されました。

三国志演義

小説『三国志演義』では、孫権が呉の国主になった際に配下となった人物の一人として名前が挙げられています。赤壁の戦い（せきへきのたたかい）に際して、建業（けんぎょう）を訪れた諸葛亮（しょかつりょう）と言い争う場面が描かれていますが、黄蓋（こうがい）に制止されています。

参考文献

* 陳寿、裴松之注『正史 三国志』、井波律子・今鷹真・小南一郎 訳・解説（ちくま学芸文庫全8巻、1992 - 93年）、※呉書は6・7・8巻、小南一郎訳。

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