片岡仁左衛門 (15代目)

十五代目 片岡仁左衛門：歌舞伎界の至宝

十五代目片岡仁左衛門（1944年生まれ）は、日本の歌舞伎界を代表する名優です。屋号は松嶋屋、定紋は七つ割丸に二引、替紋は追っかけ五枚銀杏を使用します。本名は片岡孝夫で、長らくこの名前で活躍したため、襲名後も「孝夫」と呼ぶ人が多いほど親しまれています。京都西高中退という学歴を持ち、歌舞伎役者として半世紀以上に渡り第一線で活躍を続けています。日本芸術院会員であり、重要無形文化財「歌舞伎立役」保持者（人間国宝）の称号も授与されています。

華麗なる芸歴と多彩な役柄

仁左衛門は、現代歌舞伎を代表する人気俳優として知られています。端正な顔立ちと高い身長、そして色気のある立ち姿は、多くの観客を魅了する大きな魅力となっています。特に、『女殺油地獄』の与兵衛役は絶賛され、五代目坂東玉三郎との「孝玉コンビ」は人気を博しました。十三代目片岡仁左衛門の三男でありながら、その才能と人気から十五代目襲名を許されたことは、歌舞伎界において特筆すべき出来事です。

彼の芸域は非常に広く、義太夫狂言の立役から舞踊まで、幅広い役柄をこなします。『女殺油地獄』の与兵衛、『伊賀越道中双六』の十兵衛、『菅原伝授手習鑑』の菅丞相といった古典作品での名演は、歌舞伎ファンにとって忘れられないものです。さらに、『小袖曾我薊色縫』の鬼薊清吉、『恋飛脚大和往来』の忠兵衛、『助六曲輪花初櫻』の花川戸助六、『廓文章』の伊左衛門など、江戸や上方の作品にも対応できる演技力は、彼の大きな強みです。

南北物、新歌舞伎、舞踊など、ジャンルにとらわれない幅広いレパートリーを持ち、『櫻姫東文章』の権助、『桐一葉』の木村重成なども得意としています。また、兄たちや四代目坂田藤十郎らと共に、関西歌舞伎の復興にも尽力しています。

映画・テレビへの出演と多様な活動

歌舞伎の舞台以外でも、映画やテレビドラマに数多く出演し、時代劇から現代劇まで、幅広い役柄を演じています。その個性豊かな演技は、多くの視聴者の心を捉え、高い評価を得ています。

代表的なテレビドラマ出演作品には、『神州天馬侠』『旗本退屈男』『大河ドラマ』（『太閤記』『春の坂道』『新・平家物語』『元禄太平記』『太平記』など）、『絵島生島』『銀河テレビ小説 生きて愛して』『徳川三国志』『女の勲章』『木曜ゴールデンドラマ』『土曜ワイド劇場』『お命頂戴!』『文吾捕物帳』『眠狂四郎円月殺法』『眠狂狂四郎無頼控』『金曜女のドラマスペシャル』『からたちの花、永遠に』『お待たせ必殺ワイド』『大忠臣蔵』『必殺スペシャル』『橋田壽賀子スペシャル 源氏物語』『奇跡の動物園』『我はゴッホになる!』などがあります。映画出演作品には、『配達されない三通の手紙』『わるいやつら』『必殺! THE HISSATSU』『外科室』『歌舞伎役者 片岡仁左衛門』『Beauty うつくしいもの』『最後の忠臣蔵』などがあります。

舞台作品では、『ハムレット』『婦系図』『はいからさんが通る』などにも挑戦し、その演技力は高く評価されています。さらに、司会を務めた『逆転クイズジャック』や朗読番組『二本の木』など、バラエティ番組への出演もあります。CM出演も多数あり、ニコン、東京銀行（現・三菱UFJ銀行）、NTTグループなどのCMで活躍しました。

私生活と家族

仁左衛門は結婚しており、長男は歌舞伎役者の片岡孝太郎、長女は元宝塚歌劇団の男役スター汐風幸（片岡サチ）、次女は女優の片岡京子です。孫には歌舞伎役者の片岡千之助がいます。

受賞歴と著書

数々の賞を受賞しており、主なものには、芸術祭賞、日本芸術院賞、毎日芸術賞、大阪舞台芸術賞、朝日舞台芸術賞、紫綬褒章、坪内逍遥大賞、読売演劇大賞最優秀男優賞、文化功労者、菊池寛賞などがあります。

また、『とにかく芝居がすき』『あなたと京都へ』『十五代目片岡仁左衛門 片岡孝夫の軌跡』『十五代目片岡仁左衛門 芸談』『十五代目片岡仁左衛門』『仁左衛門恋し』など、多くの著書も出版しています。

健康状態と休養

2013年には右肩腱板断裂手術のため休養しましたが、翌年には舞台に復帰しました。2022年には帯状疱疹を発症し、歌舞伎座『六月大歌舞伎』を休演して治療に専念しました。

まとめ

十五代目片岡仁左衛門は、その卓越した演技力と幅広い活動で、歌舞伎界のみならず、日本の芸能界全体に大きな影響を与え続けている、まさに歌舞伎界の至宝と言える存在です。彼の今後の活躍にも期待が高まります。

もう一度検索