牧野忠辰

牧野忠辰：越後長岡藩の文治を推進した名君

牧野忠辰（まきの ただとき）は、江戸時代前期に越後長岡藩の第3代藩主を務めた人物です。彼は藩政において様々な改革を行い、文治政治を推進したことで知られています。長岡藩系牧野家の宗家4代目にあたります。

生涯

寛文5年（1665年）に、第2代藩主・牧野忠成の長男として江戸で生まれました。延宝2年（1674年）に父が死去したため、10歳で家督を継ぎましたが、幼少のため大叔父である牧野忠清が補佐役を務めました。同年には、藩士の統制を目的とした「諸士法制」十七条とその付則「覚」11条が発布されました。

延宝7年（1679年）には従五位下、駿河守に叙任されました。天和元年（1681年）には、高田騒動によって改易された越後高田藩主・松平光長の居城である高田城の受け取り役を務めています。

元禄7年（1694年）に諱を忠郷から忠辰に改めました。正徳元年（1711年）と享保4年（1719年）には、朝鮮通信使の接待役を務めています。

一時は大老・酒井忠清の娘と婚約しましたが破談となり、正室を持たずに4人の側室を迎え、1男2女をもうけました。しかし、長男の勝三郎をはじめ、全ての子が早世したため、宝永7年（1710年）に本多康慶の六男で母方の又従弟にあたる忠寿を養子に迎えました。享保6年（1721年）に家督を忠寿に譲り隠居し、成喜と号しました。翌年の享保7年8月6日に江戸で死去。享年58。墓所は東京都大田区の池上本門寺にあります。

死後、京都の神道家吉田家から蒼柴霊神の神号が贈られ、享保18年（1733年）には明神、50回忌にあたる明和8年（1771年）には大明神に昇格しました。忠辰自身を祭神とする蒼柴神社は、初め長岡城内に、後に悠久山に移転しています。

人物

忠辰は藩政において、「諸士法制」の修正・改正による風紀の徹底、殖産興業政策、消防制度の確立など、民政に尽力しました。そのため、長岡藩三名君（初代忠成・3代忠辰・9代忠精）の一人とされています。

学問にも深く関心を持ち、文治の発展に貢献しました。かつて婚約者であった酒井忠清の縁で、徳川綱吉の前で講義を行ったこともあります。また、江戸城で演能を行うなど、文化的な活動も積極的に行っていました。養子の忠寿と久我通名の娘との縁談は、金春流能の名手であった仙台藩主・伊達吉村との交流が関係しているという説もあります。

系譜

父：牧野忠成
母：牧野定成の養女、花輪宗親の娘
婚約者：酒井忠清の娘
子女：牧野勝三郎（長男）、娘2人
* 養子：牧野忠寿 - 本多康慶の六男

牧野忠辰は、長岡藩の発展に大きく貢献した名君として、後世に語り継がれています。

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