王堕

王堕（おう だ）

王堕は、五胡十六国時代の前秦に仕えた人物です。字は安生といい、京兆郡覇城県の出身でした。彼は博学で才能にあふれ、天文学や讖緯にも精通していました。

生涯

349年、後趙で梁犢が反乱を起こすと、苻洪が討伐に当たりました。王堕は苻洪に投じ、司馬となります。この時、王堕は苻洪に「讖言によれば、苻氏が王となるとあります。公こそがまさにその人です」と進言し、苻洪はこれを喜びました。

351年、苻洪の子である苻健が天王・大単于の位に即くと、王堕は右僕射に任じられ、後に尚書令に昇進しました。355年には司空に昇進し、国に忠節を尽くしたため、苻健から深く敬重されました。苻健は「天下の群官が皆王令君のようであれば、どうして天地を和することができないだろうか」と嘆息したといわれています。

355年、苻健が病に倒れると、王堕は苻生を輔政するよう遺詔を託されました。苻健の死後、苻生が後を継ぎましたが、王堕は剛直で厳格な性格から、苻生に媚び諂って出世した董栄や強国といった奸臣を憎み、彼らとは口も利きませんでした。ある人が王堕に「董栄は位が高く、寵愛を受けています。少しは彼に意を合わせるべきです」と忠告しましたが、王堕は「董栄は鶏や犬のような輩だ。国士がどうして彼らに言葉をかける必要があるのか」と相手にしませんでした。

董栄はこれを聞いて恥じ入り、王堕を恨みました。356年、天変が起こると、董栄と強国は苻生に「天譴が起こっているのは、高官に責任があるからです」と讒言しました。苻生が「高官は大司馬の苻安と司空の王堕しかいないではないか」と問うと、董栄らは「大司馬は皇族ですから罪に問うことはできません」と答えました。これにより、苻生は王堕を捕らえて処刑しました。処刑の際、董栄は王堕に「このようになってもまだ董栄を鶏や犬と言うのか」と詰りましたが、王堕は怒って彼を叱りつけました。

王堕の死は、前秦の政治の腐敗を示す出来事として知られています。

参考文献

『晋書』巻112
『資治通鑑』巻98 - 巻100
* 『十六国春秋』巻42

もう一度検索