王朗 (曹魏)

王朗（おう ろう）

王朗は、後漢末から三国時代の魏にかけて活躍した政治家であり、その生涯は激動の時代を反映しています。

生涯

徐州東海郡郯県（現在の山東省臨沂市郯城県）に生まれた王朗は、字を景興と名乗りました。彼は若い頃から経書に通じ、その学識の高さから郎中、そして甾丘県長といった官職を歴任しました。特に、楊賜を師と仰ぎ、その死後には官を辞して喪に服すなど、道義を重んじる人物であったと伝えられています。

陶謙にその才能を見出され、治中として仕えることになった王朗は、別駕の趙昱と共に陶謙を補佐しました。当時、献帝は長安におり、世は乱れていましたが、王朗は朝廷への使者派遣を進言し、勤皇の姿勢を示しました。その功績により、王朗は揚州の会稽太守に任命されます。

会稽太守として赴任した王朗は、民を慈しみ、善政を敷きました。しかし、孫策が勢力を拡大し会稽に侵攻してくると、王朗は孫策軍を防ぐために抵抗しましたが、最終的には敗北し降伏しました。孫策は王朗の学識と謙虚さを認め、処刑せずに許したとされています。

その後、曹操に召し出された王朗は、諫議大夫・参司空軍事といった要職を歴任しました。曹操からの信任も厚く、政治や軍事において様々な助言を行いました。魏が建国されると、少府・奉常・大理といった重要な官職を歴任し、特に大理としては寛容な法の運用を心がけ、その公正さは鍾繇と並び称賛されました。

曹丕が即位すると、王朗は御史大夫に昇進し、後に司空に改称されました。彼は曹丕に対し、帝王としての心構えを説き、民を大切にする政治を行うよう諫言しました。また、呉との戦いにおいては、慎重な対応を促すなど、冷静な判断力も示しました。

晩年には司徒に転任し、曹叡（明帝）を補佐しました。王朗は儒学に通じ、『易経』・『春秋』・『孝経』・『周礼』の伝（注釈）を著しました。その学識の深さは、多くの人々に影響を与えました。

太和2年（228年）に亡くなった王朗は、その功績を称えられ、成侯と諡されました。彼の著書は官吏登用の試験科目にも採用され、後世にまでその名声が伝えられています。

評価

王朗は、その学識と才能、そして道義を重んじる姿勢から、多くの人々から尊敬されました。曹丕は彼を「一代の偉人」と称賛し、陳琳もその文章力を高く評価しました。陳寿は『三国志』において、王朗を一代の俊傑として称え、その学識と文才を賞賛しています。

三国志演義における王朗

小説『三国志演義』では、孫策に敗れた太守の一人として描かれています。諸葛亮との論戦で罵倒され憤死するという場面は、広く知られています。

王朗の生涯は、激動の時代を生き抜いた政治家の典型であり、その功績と人柄は、後世にまで語り継がれています。

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