王裕之

王裕之（おう ゆうし）

王裕之（361年 - 448年）は、東晋末期から南朝宋にかけての時代を生きた官僚です。字は敬弘、琅邪郡臨沂県（現在の山東省臨沂市）の出身です。

生涯

東晋時代

王裕之は、晋陵郡太守を務めた王茂之の子として生まれました。琅邪国左常侍を最初の官職とし、その後、衛軍参軍に転じました。天門郡太守時代には、桓玄の姉を妻としましたが、迎え入れることなく、赴任先で悠々自適な生活を送りました。桓偉の下では、安西長史や南平郡太守を歴任しましたが、まもなく官を辞し、作唐県に隠棲しました。桓玄が政権を握ると、再三にわたり招聘を受けましたが、応じませんでした。

南朝宋時代

劉裕（後の宋の武帝）に仕え、車騎従事中郎、徐州治中従事史を歴任しました。劉道規の下で征西諮議参軍となった後、中書侍郎として朝廷に召還され、建康（現在の南京）に移り住みました。その後、黄門侍郎に任じられましたが、辞退しました。太尉従事中郎、呉興郡太守を経て、侍中として召還されました。415年、劉裕が司馬休之を討伐した際、安帝の命を受け慰労の使者を務めましたが、通事令史の病気による帰還措置を巡り、御史の弾劾を受け免官されました。しかし、すぐに赦免され復職しました。宋が建国されると、度支尚書、太常を歴任しました。

420年、劉裕が帝位につくと、宣訓衛尉に任じられ、散騎常侍を加えられました。422年には吏部尚書に転じましたが、廬陵王劉義真の師となることを固辞し、秘書監への任官も受けませんでした。文帝が即位すると、散騎常侍・金紫光禄大夫に任じられ、江夏王劉義恭の師を兼ねました。426年には尚書左僕射となりましたが、政務能力に欠け、文帝の不興を買いました。429年、尚書令に任じられましたが、固辞し、侍中・特進・左光禄大夫に任じられた際も、侍中と特進を辞退し、隠棲生活に入りました。その後、太子少傅として召されましたが、上京して辞退しました。439年、左光禄大夫・開府儀同三司の位を受けました。

448年、余杭県の舎亭山で亡くなりました。享年88。諡は文貞公。

人物

王裕之は、若い頃から名を知られていましたが、桓玄の招聘に応じないなど、権力に媚びない姿勢を示しました。一方で、官僚としては実務能力に欠ける面があり、文帝の不興を買うこともありました。しかし、その人格は高く評価され、文貞公という諡号が贈られました。

家族

父：王茂之（晋陵郡太守）
子：
王恢之（秘書郎、新安郡太守、中大夫）
王粲之
王瓚之（吏部尚書、金紫光禄大夫）
王昇之（都官尚書）
王謙之

伝記資料

『宋書』巻66 列伝第26
* 『南史』巻24 列伝第14

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