田疇

田疇（でん ちゅう）

田疇（169年 - 214年）は、後漢末期の人物。字は子泰（しすい）、または子春（ししゅん）。幽州右北平郡無終県（現在の天津市薊州区）の出身。

生涯

読書と剣術を好んだ田疇は、烏桓による郡の高官殺害に復讐心を抱いていた。劉虞が献帝への使者を送る際、その才能を見込まれて従事に任命される。公孫瓚の危険性を進言するも、受け入れられなかったという。

長安への使者として困難な道程を突破し、使命を果たす。朝廷から騎都尉に任じられるも、天下が乱れていることを理由に固辞。その道義心は高く評価された。

劉虞が公孫瓚に殺害された後、田疇は墓前で弔い、その行為が公孫瓚の怒りを買い、捕らえられる。しかし、毅然とした態度で反論し、釈放される。

故郷に戻った田疇は、一族郎党を率いて徐無山に隠棲する。その人徳を慕って人々が集まり、5000軒以上の集落を形成。指導者として推挙された田疇は、烏桓への復讐を誓い、法律や制度を整備し、教育に力を注ぐ。その結果、集落は北方一帯を従え、烏桓や鮮卑も使節を送るほどの勢力となった。袁紹や袁尚からの招聘も固辞し続けた。

207年、曹操が烏桓討伐を行う際、田豫を通じて招聘を受けると、田疇は即座に応じた。曹操は田疇を司空戸曹掾に任命するが、後に茂才に推挙し、蓨県令に任じた。白狼山の戦いでは道案内と計略で曹操軍を勝利に導き、その功績により亭侯の爵位を授けられるはずだったが、固辞した。

戦後、鄴に移り住んだ田疇は、袁尚の首が届けられると、禁を犯して遺骸を引き取り弔った。曹操はその礼節を重んじ、不問に付した。

曹操は田疇の功績を忘れられず、爵位を与えようとしたが、田疇の固辞の意思は固かった。夏侯惇が説得を試みるも、田疇は「世を避けて隠遁した身であり、現状に満足している。徐無山の民を売って爵位に替えるようなことはできない」と涙ながらに拒否。ついに曹操も侯位を諦め、議郎に任命することにした。

214年、46歳で死去。曹丕（文帝）は田疇の徳義を称え、田続を関内侯に封じた。

人物評

陳寿は「田疇の節義は世俗を矯正するに十分である」と評した。一方で、裴松之は田疇が袁尚を弔った行為について、烏桓討伐を手助けした結果、袁尚が捕らえられたため、偽善的であると批判している。

参考文献

* 正史三国志2　田疇伝　陳寿著・裴松之注　井波律子・今鷹真訳　ちくま学芸文庫1993年　ISBN 4-480-08042-2

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