神保氏張

じんぼううじはる

戦国時代末期から安土桃山時代にかけて活動した武将。神保氏春、氏晴とも記される。官途名は安芸守。越中国の守山城や古国府城、能登国の勝山城などを居城とした。

出自については諸説あり、明確ではない。大永8年（1528年）の生まれとされる。『寛政重修諸家譜』には、畠山義隆の子で神保氏純の養子とする説や、神保氏重の子とする説が記されている。越中の国人領主である神保氏の一員と考えられるが、神保長職との系譜関係は不明であり、むしろ長職とは敵対関係にあった。氏張は能登畠山家の家臣である温井氏や越中一向一揆と連携し、越後上杉氏に味方する長職と対立し、所領を没収された時期もある。

本拠とした守山城を中心に活動し、一時は富山城を占拠するなど勢力を拡大した。また、上杉方の魚津城を攻めた記録もある。天正4年（1576年）には上杉謙信の攻撃を受けて守山へ退却するが、翌天正5年（1577年）には謙信に服属している。

天正6年（1578年）3月に上杉謙信が急死すると、状況は一変する。氏張は再び織田信長に接近し、誼を通じた。神保長住や能登の長連龍ら織田方勢力と協力し、越中・能登の織田氏による平定戦に加わるようになる。同年11月には、上杉方の攻撃を受けた長連龍の救援要請を受け、信長の命により佐々長秋らと共にこれを助けた。天正7年（1579年）には、長連龍は氏張の妹を妻に迎えている。さらに天正9年（1581年）、氏張自身も信長の妹（神保・稲葉夫人）を正室に迎えることで、織田氏との関係を一層強固にした。

天正7年（1579年）4月、上杉景勝が家中の争いを制し、9月には武田勝頼と同盟を結び、織田勢との対決姿勢を鮮明にした。これに対し、同年10月、信長は佐々成政を越中一国の領主として封じ、対上杉氏の最前線を任せた。氏張は成政から厚い信頼を得ており、成政の娘は氏張の子である清十郎に嫁いでいる。

天正11年（1583年）1月、羽柴秀吉が上杉景勝と同盟し、柴田勝家・佐々成政らに対抗する構えを見せた。氏張は成政の指揮のもと、同年2月には上杉方の魚津城を包囲し、3月には成政と共に同城を落とした。しかし、同年4月の賤ヶ岳の戦いで柴田勝家が敗死すると、秀吉勢は加賀へ進攻。成政は秀吉に降伏したが、引き続き越中の支配を認められた。

天正12年（1584年）、小牧・長久手の戦いが始まると、成政は徳川家康・織田信雄方に味方し、秀吉方となった前田利家と敵対した。同年8月、氏張は成政の命を受け、能登に侵攻して勝山を拠点とし、羽咋の一向一揆と結んで前田軍と戦った。9月には末森城の戦いにおいて、神保氏張・清十郎父子は前田軍の後詰部隊を阻止する任務に就いたが果たせず、敗退した。一向一揆勢を味方につけるため、成政は氏張の進言を取り入れ、同年11月に勝興寺の越中への還住を許し、氏張は古国府の土地を同寺に寄進した。天正13年（1585年）2月には、氏張は専福寺に対し、禁制を発し諸役を免除している。同年4月には前田勢が阿尾城を攻略し、6月には氏張がこの城を攻めるも敗れている。同年8月、成政は秀吉の攻撃を受け降伏し、富山の役が集結した。

天正15年（1587年）の九州征伐後、成政は肥後国に移封され、氏張もこれに随行した。しかし、赴任後間もなく肥後では国人一揆が発生。氏張は佐々軍の一員として、隈本城での籠城戦で指揮を執るなど奮戦し、城を守りきった。しかし、成政は一揆発生の責任を問われて切腹させられ、佐々氏は改易となったため、氏張は浪人となった。

天正17年（1589年）、徳川家康に仕えることとなり、後に下総国香取郡に2000石を与えられた。文禄元年（1592年）4月、家康が名護屋城へ出陣した際には、内藤信成の代わりに江戸城の留守を守る役目を担った。

同年8月5日、65歳で死去した。法名は玄的。墓所は下総国香取郡伊能村の宝応寺（現在の千葉県成田市伊能）にある。『千葉県香取郡誌』によれば、大須賀氏に縁があり、文禄元年8月某日に没し、法諡は華巌院端山玄的とされる。

氏張の子孫は、江戸時代に旗本として家系を存続させている。

出自

本姓は惟宗氏とされる。

子女

『寛政重修諸家譜』などによると、以下の子女がいたとされる。

女子：斎藤利基（伯耆守）の妻となった。
氏則：清十郎、主馬佐。天正2年（1574年）12月に能登国で戦死したとされる一方で、『末森記』には天正13年（1585年）6月にも「神保安芸守、子息清十郎」の記述がある。妻は佐々成政の娘。
* 氏長：五郎兵衛。母は織田信秀の娘とされる。文禄元年（1592年）に父の跡を継いだ。

『富山市史』には、神保氏張の子として「氏興」の名も記されている（『大日本史料』よりの引用とされる）。

もう一度検索