福田良三

福田 良三

福田 良三（ふくだ りょうぞう）は、日本の海軍軍人。1889年（明治22年）11月1日、熊本県玉名郡高瀬町（現在の玉名市）に生まれ、1980年（昭和55年）3月26日に90歳でその生涯を終えた。最終階級は海軍中将。

若年期から海軍兵学校まで

地元の熊本県立玉名中学校で学び、1907年（明治40年）に卒業。同年9月、海軍軍人の道を志し、海軍兵学校（第38期）に入校した。入校時の成績は150名中122位と振るわなかったが、努力を重ね、1910年（明治43年）7月の卒業時には149名中50位と順位を上げた。卒業後、海軍少尉候補生として2等巡洋艦「笠置」に乗組み、遠洋航海に出発した。

初級士官・術科学校・潜水艦勤務

練習艦隊での航海を終えた後、戦艦「肥前」や3等巡洋艦「須磨」に乗組んだ。1911年（明治44年）12月に海軍少尉に任官。砲術学校や水雷学校の普通科で基礎的な術科訓練を受けた後、1913年（大正2年）12月には海軍中尉に進級し、3等駆逐艦「白雲」の乗組となった。その後も装甲巡洋艦「吾妻」での勤務や、練習艦隊の指導官附を務めるなど艦船勤務を重ねた。1916年（大正5年）には海軍大学校乙種学生として学び、1917年（大正6年）4月に海軍大尉に進級。水雷学校高等科で専門的な知識を修得し、卒業後は第1潜水艇隊長や第12潜水艇隊長を務めるなど、潜水艦関連のキャリアをスタートさせた。横須賀鎮守府防備隊や工作船「関東」での勤務を経て、潜水艦長心得も経験している。

海軍大学校甲種課程と教官職

1920年（大正9年）12月、海軍の最高教育機関である海軍大学校甲種第20期学生となり、高度な戦略・戦術を学んだ。1922年（大正11年）11月に同課程を卒業。卒業時成績は26名中26位であった。卒業後、海軍少佐に任官し、海軍潜水学校教官に着任。その後、第23潜水艦長を務めつつ潜水学校教官を兼任するなど、教育者としての経験も積んだ。また、第二潜水戦隊参謀として司令部勤務も経験した。

駆逐艦長・重巡副長・艦長など

1925年（大正14年）12月には第4号駆逐艦長、翌年には2等駆逐艦「帆風」艦長を歴任し、艦艇指揮官としての経験を積んだ。横須賀鎮守府や第二潜水戦隊司令部附を経て、1927年（昭和2年）には再び海軍大学校教官に就任した。同年12月に海軍中佐に進級。1929年（昭和4年）からは中国方面での勤務が増え、第1遣外艦隊参謀を務めた。佐世保鎮守府附を経て、重巡洋艦「羽黒」副長に就任。1931年（昭和6年）からは第28潜水隊司令として、再び潜水部隊の指揮官を務めた。

大佐昇進後、武官、そして海南島へ

1932年（昭和7年）12月、海軍大佐に進級。再び海軍大学校教官を務めた後、海軍軍令部出仕となり、1935年（昭和10年）末からは欧米への出張を経験した。帰国後、1936年（昭和11年）11月には重巡洋艦「那智」艦長に就任。1937年（昭和12年）には横須賀鎮守府防備隊司令を務めた。その後、馬公要港司令部附を経て、台北在勤海軍駐在武官に就任するなど、台湾方面での勤務も経験した。1938年（昭和13年）11月には海軍少将に進級した。

海南島での指揮官先頭

1939年（昭和14年）11月、海南島根拠地隊司令官に着任した。当時の海南島は治安が極めて悪く、匪賊による襲撃が頻発し、高級士官が狙われるなど作戦遂行に深刻な影響を与えていた。福田はこのような状況に対し、現場の指揮官が率先して危険に立ち向かうべきだと考えた。周囲からは強い反対があったものの、福田は「指揮官先頭」の精神を自ら体現し、渡名喜守定参謀長らと共に陣頭指揮を執って匪賊討伐に当たった。この断固たる姿勢は、部隊の士気を高め、治安維持に大きく貢献した。

中将昇進と終戦

海南島での勤務後、呉鎮守府出仕、海軍軍令部出仕を経て、支那方面艦隊司令部附、興亜院厦門連絡部長官などを歴任した。1942年（昭和17年）5月、海軍中将に進級。その後、南西方面艦隊司令部附、第2南遣艦隊附第22特別根拠地隊司令官などを務めた。1943年（昭和18年）には勲一等瑞宝章を受章している。1943年11月からは高雄警備府司令長官を務め、台湾方面の防衛に携わった。終戦間際の1945年（昭和20年）5月には支那方面艦隊司令長官に就任。日本の敗戦に伴い、同年9月9日には南京で降伏文書に署名調印した。

戦後の苦難と晩年

終戦後、1946年（昭和21年）7月に予備役編入となった。しかし同年12月、中華民国（現在の中国）の上海で開かれた戦犯裁判において、いわゆるB級戦争犯罪人として指定され、身柄を拘束された。1947年（昭和22年）には公職追放仮指定も受けた。1948年（昭和23年）5月31日、上海の裁判で有期徒刑15年の判決を受けた。収容所での苦渋の日々を送ったが、1952年（昭和27年）3月1日に仮釈放された。その後は故郷などで静かに過ごし、1980年（昭和55年）3月26日に90歳で死去した。

福田良三の海軍生活は、中央での華やかな経歴よりも、第一線の部隊指揮官や艦船勤務を中心とし、特に中国方面での任務が多かったという特徴を持つ。海南島での危険を顧みない行動や、終戦時の南京での職責遂行、そして戦後の過酷な運命など、激動の時代を生きた一軍人の生涯であったと言えるだろう。

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